27話 竜騎士とヒーラーが、正式にパーティ・メンバーとなる。
レイたちは、冒険者ギルド本部へと戻った。ジョンたちの訃報を伝えるためだ。
ギルド本部前で、レイはクルニアに、改めて言った。
「クルニアさん。助太刀には、感謝する。だが、ローラにはちゃんと謝罪しろよ」
「わかっている」
ワイバーンは外に待たせて、本部の中に入る。
クルニアは、ちゃんとローラに謝罪した。約束は守る性格のようだ。
ラプソディの親衛隊員である以上、魔族であることは確か。しかしクルニアも、容姿は人間と変わらない。よって王都を歩いていても、注目を浴びることはない。
ローラは、クルニアの謝罪を受け入れた。それから、ジョンたちのことに触れる。
「ジョンさんたちは、気の毒です。全ての冒険者が、クエストから生還できるわけではありません。ですが、やはり悲しいですね」
レイは改めて、クルニアのことをローラに紹介した。
「クルニアだ。ラプソディの友人」
クルニアはうなずく。
「訳あって、冒険者になりたいと思う」
ローラは「承知しました」と言って、精霊玉を出した。
精霊玉によって、クルニアの適正な職業が選ばれる。
今回、ハニに続いて2度目だからか、ローラはさほど動揺しなかった。
「……クルニアさん。第1職業は、SSSランクの竜騎士。第2職業は、SSランクの戦士ですか……ラプソディさんのご友人の方は、皆さん、凄いのですね」
レイは内心で呻いた。
(第2職業なのに、SSランクの戦士だって? 第1職業がEランク戦士である、おれの立つ瀬がない)
とはいえ、他者と比べても仕方ない。
レイは、クルニアに言った。
「冒険者をやるのなら、これから先も、会うこともあるだろう。そのときは、よろしく頼む」
クルニアは、レイを睨みつける。
「私の説明が不足していたか?」
「なんのことだ?」
「私は、貴様のパーティに入るのだ。よって、クエストのたびに、会うことになるだろう」
レイは唖然とした。
(おれのパーティに、またSSSランクが加わるのか……このパーティ、目立ちすぎだ)
話を聞いていたローラが、提案した。
「でしたら、レイさん。サラさんも、パーティに加えてあげてくれませんか? サラさん、良いですよね?」
ヒーラーは、ソロではクエストを行うことはできない。どこかのパーティに属する必要がある。
しかし、サラのパーティは全滅してしまった。
サラは、レイに向かって、頭を下げる。
「あの、どこまでお役に立てるか分かりませんが、お願いします!」
「サラ、こちらこそ頼む。おれ達のパーティに加わってくれ。回復魔法だけは、皆が苦手としているからな」
魔族のため、ラプソディもハニも、回復魔法だけは不得意なのだ。
クルニアは、サラを見てから、呟いた。
「レイ。勝手に決めて、姫殿下がお怒りになるかもしれん」
「なぜだ?」
「貴様と同年代の女子だからだ」
「……いや、その心配はないだろ。ラプソディも、ヒーラーは大歓迎するさ」
しかし、その楽観は間違いだった。
※※※
「却下」
翌朝。レイは、サラのパーティ参加を伝えた。
それに対するラプソディの返答が、これだ。
「……ラプソディ、よく考えてくれよ。サラは、ヒーラーだ。〈パーティ・ヒーリング〉を使うこともできる」
パーティ全体に〈ヒーリング〉をかける魔法のことだ。
敵からの全体攻撃を受けたときなどに、重宝する。
しかし、ラプソディは反論した。
「あたし、ハニちゃん、クルニアちゃんは、回復魔法が必要な事態にならないもの」
「うーむ」
反論できないレイだった。
2人は、朝食の席でこの会話をしていた。テーブルには、ラプソディの手料理が並んでいる。実に、美味い。
職業:料理人もSSSランクだけあって、レストランを開ける腕前のラプソディだ。
「とにかく、サラと会ってみてくれ。あと、今朝も美味しい朝食だね」
褒められると顔を赤らめるラプソディ。
「……まぁ、仕方ないわね。会うだけよ」
その後、冒険者ギルド本部の前で、パーティは集まった。
レイ、ラプソディ、ハニ、リガロン、サラの、5人。
「あれ、クルニアは?」
レイの問いかけに、ハニが答える。
「クルニアさんは、偽造の身分証を、まだ受け取っていないからね」
前日、ローラはクルニアの身分を確認するのを忘れて、精霊玉で職業適性を見てしまったのだ。
よってクルニアはまだ、正式には冒険者カードを発行してもらっていない。そのためクエストを受けることもできない。
「クルニアさんは、偽の身分証を受け取って初めて、冒険者に登録できるからね。ボクたちのクエストが長引くようだったら、後から追いかけて来るってさ」
「まって。このままクエストに突入するの?」
と、ラプソディ。
普段はクエストをやりたがるラプソディだが、いまは違うらしい。
レイはうなずいた。
「だから集まったわけだろ」
「サラというヒーラーを入れるのか、まだ話し合いが終わってないわよ」
ハニがハッとした様子で、サラを見やる。
「この新入り、まだラプソディ様のお許しを得ていなかったのですか」
サラが恐縮した様子で、頭を下げる。
「あの、ごめんなさい。わたし、帰ります」
レイが慌てて引き止めた。
「まて。ヒーラーは必要だ。先日、おれは死にかけただろ」
ラプソディが呻く。
「あの時のことを言われると、弱いけれど」
待ち伏せを受け、レイは致命傷を受けたのだ。
そのときは、ラプソディとハニの2人がかりの〈ヒーリング〉で、何とか事なきを得たが。
「……わかったわ。ヒーラーの加入を、許しましょう」
こうして、サラが正式に仲間に加わった。
サラは改めて、頭を下げる。
「よ、よろしく、お願いします!」
リガロンがまとめた。
「新たなメンバーが加わったところで、クエストを受注するとしようぜ」
レイがうなずく。
「そうだな。パーティもこの人数になると、かなり大がかりなクエストも受けられるぞ」
ヒーラーの加入は、パーティ・ランクのUPにも、かなり貢献する。
やはり回復魔法というのは、それだけ有難いものなのだ。
冒険者ギルド本部に入り、受付まで向かう。
ローラは、さっそく記録媒体の水晶玉で検索をかけた。
「皆さん、どのようなクエストが、お望みですか?」
「そうだな。なにか、大きなクエストが欲しいな」
ラプソディのために、レイはそう言った。
「あ、ちょうど良いのがありました。タイミングもバッチリです。さっそく、城郭都市ベルグに向かってくれますか?」
「ベルグ? けっこう遠いよな。なにが、あるんだ?」
「闘技大会です」




