表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

24/186

24話 新米ヒーラーの少女、サラ。


 ヒーラーの少女サラは、初々しい。もしや、とレイは思った。


「おれは、レイ。こっちのリザードマンは、リガロン。ところで、君は、クエストに慣れていないようだが?」


「はい。先日、ジョンさんにスカウトしていただきました。実戦は、これが初めてでして」


「やっぱり」


 実戦が初めての者がパーティにいるのだから、ジョンはもう少し、面倒を見るべきだろう。しかし、ゲスト参加であるレイは、その点を追及するのは止めておいた。


「気楽にやるといい。今回のクエストは、危険はないから」


「そうですか……ですけど、わたし、簡単なクエストなら、ソロかデュオのクエストと思っていましたが」


「パーティで臨んでいるのは、念のためだろう」


 レイはそこで言葉を切り、両手剣を抜いた。

 墓石の陰から、影が跳び出して来たのだ。

 生気のない目に、腐敗した身体。ゾンビだ。


 剣を一閃させると、ゾンビの頭部が切り落とされた。

 ゾンビを倒すには、頭部を破壊するか、切り離すのが手っ取り早い。

 もちろん、〈ファイヤ・ブラスト〉などで灰にしてもいいわけだが。


 ジョンと魔導士の2人が、走って来た。


「おお、レイ殿。手柄を持っていかれてしまったなぁ」


 クエストを終えた気でいるジョンに、レイは首を横に振った。


「待ってくれ。目撃にあったゾンビは、男のゾンビだった。しかし、これは」


 レイは両手剣の切っ先で、倒したばかりのゾンビを示した。赤いドレスを着た、女だ。


「これを男のゾンビと見間違えるとは、思えない。おそらく、ゾンビは2体いる。だとすると、厄介なことになる」


 ゾンビは、自然発生することがある。まして、ここは墓地だ。しかし、自然発生するといっても、そうそう死体がゾンビ化するわけではない。

 この墓地の規模では、自然発生するならば、1体がせいぜいだろう。


 それが2体もいる。


 ならば、自然発生ではなく、人工的に造られたのだ。

 だとするなら、裏にネクロマンサーが潜んでいる可能性が、ぐんと高まった。


 リガロンが舌打ちした。


「まさか、の事態というわけか。どうするんだ、レイ?」


「落ち着け、リガロン。まだ、そうと決まったわけではない」


 ネクロマンサーでなくとも、ゾンビを造る存在はある。

 レイには、そちらが正解のような気がした。もちろん、ネクロマンサーほどではないが、厄介な敵ではある。


「とにかく、撤退したほうがいいな。ジョン?」


 しかし、ジョンは首を横に振った。


「撤退? 冗談じゃない。こんなクエストも完遂できないようでは、パーティ・ランクが下がってしまうだろ」


 レイは、ジョンの肩をつかんだ。


「気持ちは分かるが、パーティを危険に晒すのは、リーダー失格だ。ここは撤退するべきときだ」


 ジョンはレイの手を振り払い、


「ならば、君たちにはパーティから出て行ってもらおうか。君たちには期待していたが、ただの腰抜けだったようだからな」


 そう言うなり、ジョンは魔導士2人を連れ、先へと進んで行ってしまった。

 リガロンが、笑った。


「ラプソディがいたら、ジョンの奴は、ボコられているな。レイを腰抜け呼ばわりしちまったんだから」


「リガロン、笑いごとではない。おれの読みが正しければ、ゾンビ・マスターがいるぞ」


「なに、ゾンビ・マスターが?」


「ああ。ネクロマンサーが造ったにしては、このゾンビは出来が悪いからな」


 元は人間だったとはいえ、ゾンビはモンスターの枠に入る。

 ゾンビ・マスターとは、ゾンビの上位種モンスターだ。


 かつては、こう言われた。ゾンビに噛まれることで、生きている人もゾンビ化する、と。

 だが、これはデマだった。ゾンビに噛まれても、人がゾンビ化することはない。


 しかし、ゾンビ・マスターは別だ。

 ゾンビ・マスターに噛まれれば、耐毒性のない者は、一発でゾンビと化してしまう。

 

 ただし、もとが生者ならば、ゾンビ化してしまっても、回復魔法で戻すことが可能だ。

 死人がゾンビ化した場合も、回復魔法で戻せる。もちろん、その場合は死人に戻るわけだが。


「ゾンビ・マスターは、ただのゾンビと違って、いくらか知性がある。ゾンビ・マスターの中には、ゾンビどもを指揮するタイプもいるらしい」


「ジョンのパーティじゃ、最悪、全滅もあるってことか?」


「ゾンビ・マスターが、何体のゾンビを操っているかにもよるが」


 ゾンビ・マスターは、生者をゾンビにできるように、死体もゾンビにできる。ここは、墓地。ゾンビにする材料には、事欠くまい。


「で、どうするよ、レイ?」


「撤退するように、ジョンを説得するしかないだろ。君は、どうする?」


 そう尋ねたのは、リガロンではなく、サラに対してだ。

 ジョンと魔導士2人は先へと進んだが、サラは残っていた。

 ジョンのパーティ・メンバーとはいえ、サラはこれが初めての実戦。ジョンのパーティに馴染んでいるわけでもないのだろう。


 サラは顔を青くしていた。


「あの、わたしは、どうすれば……?」


 Eランクでも、ヒーラーだ。

 すなわち、ゾンビの天敵といえる。


「もう墓地に入ってしまっているから、単独で脱出するのは危険だ。おれたちに付いて来てくれ。先行したジョンたちと合流し、撤退しよう」


「は、はい! わかりました!」


 こういうわけで、小さなパーティが生まれた。リーダーはレイで、メンバーがリガロンとサラだ。

 何十人もの大所帯のパーティでなら、分裂することはある。

 しかし、たかが6人のパーティで、分断してしまうとは。


(おれが、ジョンの指示に従わなかったせいか? しかし、この流れで撤退しないというのは、愚策だ)


 ゾンビ・マスターを舐めてはいけない。

 確かにネクロマンサーや吸血鬼ほど、強力な敵ではないかもしれない。それでも、厄介な敵であることに変わりはない。脆弱なパーティを全滅させるほどに。


(間に合ってくれよ)


 3人は、墓地の中を走った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ