これに関してはよくある事なので気にしないでください。
久し振りにタイトルに迷ったら何故か一番どうでもいい所がタイトルになりました。
まぁ、想像って大切だよね。
ギルドハウスから駆け足で戻れば既にサロンではみんなが集まっていて、どうやら俺が最後のようだった。
肉の塊と言う荷物を抱えた俺を見てぎょっとする先輩方がいたが
「早く荷物置いてこーい」
「すぐ戻るから」
「先個室行ってるよー!
一番大きな大部屋ね」
「りょーかい」
バタバタと走ればロビーの受付の人に名前を呼ばれて怒られてしまったがそこは気づかないづりをして階段を上って行って保冷庫に肉を入れてまたバタバタと階段を下りる。
そしてまたロビーの人に怒られるも飛び切りの笑顔で挨拶してスルー。
よくレイの下僕達がやってるのを真似してみればもう起る声は追いかけてこない。
これは使える手だなと感心しながら息を整えて一番大きな個室へと入れば既に夕食は並べられていた。
「悪いけど注文させてもらったわよ?
何がいいか判らないから取り皿にとって食べてね」
「と言うか、なぜにパーティー仕様……」
「この人数だと料理のお皿が机からはみ出ちゃうじゃない」
「なるほどね」
髪をくるくると撒いている先輩が仕切る夕食に俺はヒューイの隣に席を用意してくれていた。
「で、ミストの妹の話しはどんな話だったんだ?」
一口大に切った鳥肉のソテーを口へと運びながら言えば
「ファロード・アズリルでしたね。
食べ物を食べながら話をしない」
この学院では珍しく髪の短い先輩の一人がぴしゃりと言う。
思わず肩をすくめて見せるも
「悪いな。こっちはワイルドボアを一頭捌いてきて腹減ってるんだよ」
捌き方を教えながら、そしてあの重さを捌くのはそれなりに体力がいる。
べったりとした脂にナイフが滑らないようにするのも集中する。
そしてシエルと言う問題児に要らない体力も散々使った。
もっともその後知り合った三年と二年のどこか問題を抱えていても真剣な様子に最初のめんどくさいと言う嫌悪はない。
寧ろ途中で退席するのを気持ちよく送り出してくれたのだ。
学園に来て何かといがみ合ったりどこかマウント取りたがる空気ばかりだったから辟易して山に帰りたいと思っていたが、まあ、悪くないなと思っている自分に気が付いて苦笑。
そして一々口うるさく喚く女が目の前に今いるのだが、それは山でも良く言われていた言葉なので少しだけあの何もない不便な暮らしを懐かしく思ってしまう。
「ちょっと何よ、いきなり笑い出して……」
「ん?まぁ、先輩に似た人を思い出してね」
思わずニヤニヤして笑ってしまえば身の危険を察知したかのように隣の小柄な先輩にしがみついていた。
「ファロ、話が進まないから結果だけから報告行くよ」
エクルがピシリとこの場を取り仕切る。
俺以外はみんな気楽な仲のようだったが、誰もがテーブルから手を離すのを何か嫌な予感として同じように手を離せば
「まずモリエールの事からだけど、モリエールは神殿でミストに向かって攻撃魔法を使ったの。
時と場合もあるから別に使う事は咎められてないんだけど、話した通り、神殿でなくても攻撃魔法を人に向けるという……使い方を誤ったの。
ミストに向かって殺すつもりで魔法を使った。
よりにもよって一番神聖とされる祈りの場で……
既にミストは水精の巫女が決定されているって言っても間違いないわ。
それどころか私達の巫女の長にもなる事がほぼ決まっている。
そのミストに対して攻撃魔法をあの場で使うのだから、王家の威光で守られている巫女達は……言い方は悪いけど王家の私物と言ってもいい位なの。
それに攻撃するのだから反逆罪とみられても仕方がない事だから、反逆の意志がない事を示す為にシャトルーズ家はモリエールを切り捨てた。
二度とシャトルーズの名前を使えないように結婚と言う名の監視下に置いて……」
「はい。そこはミスト様の想像の通りになってシャトルーズ領のセラファザード国側の街から村に降格された地の村長の下へと嫁がれました」
続いて語るのはハイネだった。
「昨夜から馬車で向かわれたと聞きましたが、シャトルーズの馬車の使用人が使う馬車が一台戻ってない所を考えると長距離にはあまり向かない馬車で行かれたようです。
支度金などは用意する時間がなかったはずなので、屋敷に在ったドレスや宝石などを持っていかれたと思われております。
ただその時居たという侍女が言うには、長く伸ばされた髪も旦那様に短く切られ、花嫁道具もなく、ただ身の回りの私物だけを屋敷内専属の侍女が詰めた鞄一つだけそれが総てだと聞きました」
あまりに花嫁の嫁入りとしては身軽すぎて誰もが耳を疑っていた。
もちろん華々しく、祝福されてとは思ってはいなかったが、蝶よ、花よとそれは大切に育てられた彼女に対して耳を疑うような内容だった。
「でしたらミストローゼ様にとってはモリエール様の境遇に心を痛めておいででしょう」
小柄な先輩がぽつりと言うように零した言葉にミストは首を横に振る。
「不思議な事にモリーがそんな境遇にあっても可哀想とは思えなかったの。
もちろんいきなりこんな事になったのは驚いたけど……
私とモリーはシャトルーズ家の姉妹として生まれ育ったけど、知っての通り魔盲だった私に対するモリーの言動は姉妹でもなければ家族でもなかったの。
外聞が悪いからと表立った所では家族のふりをしていたけど血のつながった赤の他人、それが私たち姉妹の関係だった。
だからモリーがあんな目になってみんなが思ってるように可哀想とは思っても、母のように泣き崩れて倒れてしまう位の感情はわかなかったわ。
酷い姉かと思うけど、それが私達の関係なの」
どこか苦しそうに言葉を紡ぐ様子に先輩たちは黙ってしまったが
「まぁ、殺そうとした相手に同情する余地もないし、それだけの関係しか築こうしなかったのは妹の方だからな。
俺達が勝手にミストを可哀想と思うのは……まぁ、違うな」
「ですが!」
「そうね。昔は私も一つ年下のモリーが可愛くて仕方がなかった時があったけど、私が魔盲でモリーがシャトルーズ家期待の巫女候補に名前を連ねてから……」
先輩の言葉をさえぎってまで口にした言葉は最後まで言えずに、何かを誤魔化すように大きく切られた蒸かしたイモの塊りを一口で食べだした。
もう話をさせないでくれと言う無言の訴えに誰と無くカトラリーを手にして食事を始める。
どこか苦い物を呑み込むように食べる食事は味気なかった。
どうした物かと思っていれば
「そういやファロはさっきまでどこ行ってたんだ?
なんか大きな荷物まで持って、あれ肉の包みだろ?」
思い出したというようにヒューイから出た疑問に
「ああ、廊下でヒューイと別れてからシエルの奴に掴まって実践上級魔導クラブってやつに行ってきた」
「ああ、前に行ってた奴だな?」
「拉致られて学校とギルド唯一公認シエルが代表ってとこでもう終わっている『水底の庭園』ってギルドに入る事になった。
ちなみに副ギルド長と補佐兼任がフレイと言う、なんかフレイが可愛そうになって来た……」
「うわー、羨ましいですわ!
シエル先生のギルドに入れるなんて夢のようなお話じゃないですか!」
何故か短髪の先輩が飛び付いてきた。
「っていうか、あんた誰……」
「今頃それ聞くとかないわー」
エクルの呆れた声に自己紹介がまだだった事を改めて思い出す。
と言うか、全員普通に仲良く話をしてたから俺もそう言うもんだと思っていたが……
「私はオディール・プリドールと申します。
ミスト様と同じ水精の巫女候補として覚えてもらってください」
「同じくアリア・ハーグ。昨年はミストローゼ様と同じクラスに在籍していた」
「同様にクリスティアーネ・ネルンストです」
「あー、髪がくるくるしてるのがオデットで髪の短い方がアリアで、身長がシエルぐらいの方がクリスね」
ふむふむと言うように特徴と名前を関連付けるように覚えれば頭にエクルのげんこつの直撃が来た……
「いってー……」
「ファロが悪い」
何故かヒューイにも白い目で見られる。
何がいけないんだと思うも
「あまり知らないようですが、あだ名で呼ぶのは親しい間柄でなおかつ相手に許しを得ないといけない事です。
いきなりあだ名で呼ぶのは失礼と言う物に当ります」
と言う割にはくるくる先輩は楽しそうな顔で教えてくれた。
意味が解らずミストに視線で訴えれば既にイモを攻略したミストは紅茶を一口飲んで
「異性であだ名で呼び合うのは親しい友人、もしくは家族か恋人となるから……」
ちらりと小柄なクリスを見ればいきなりあだ名で呼ばれて顔を真っ赤にしていた。
「なるほど……」
涙を溜めて顔を真っ赤にする様子にいきなりなれなれしくし過ぎたかと納得してしまう。
だけどだ。
「実はさっきギルドの方で俺が名前を覚えるのが苦手だって相談したんだ」
「まぁ?何か意外ですわ」
「ほら、住んでた所は人がいないから人の名前を覚えること自体が無くってな?」
「さすがディヴィール村だ……」
ヒューイの謎の関心を無視して
「おかげで顔と名前が一致しなくて困ってたらジビーって言う三年の先輩がその人の特徴と関連付けて覚えて行くといい。長い名前なら少しでも短い方が覚えやすいってアドバイス貰って実践してみたんだが……」
「ジビーって言うとジブリル先輩かな?髪がものすごく長い方よね?
だったら私は許すわ」
髪の短いアリアがきっぱりと言い切る言動はその姿が既に体現しているようでもあった。
「あら?アリアはジブリル先輩とお知り合いに?
あの方はあまり身だしなみに気を使わない方ですよね」
とオデットは評価するが
「一年の時に私いくつか教科落としそうになってずっと図書館で勉強して時があったんだが、もともと苦手な勉強を一人で勉強してもはかどるわけがなくって困っている所をジブリル先輩に助けてもらった。
何とか二年にもなれたし、テスト前に図書館に行くと先輩に勉強を教えてもらえてずいぶん助けられた。
そんな親切な先輩のアドバイスが間違ってるはずがないだろ?」
「ああ、判りました!
確か生徒会長たちを押しのけて毎回テストで一位を取る方ですね!」
「そうなんだよクリス!」
何故かアリアはクリスの手を握りしめて嬉しそうに笑みを浮かべ
「才女と言うのはあの方の為にある言葉だと私は思う。
テスト前だからではなく、常日頃から勉学に励み、ギルドにいるのも本の世界だけではなく実際に現物を目にする機会を得る為にと励んでらっしゃる私の憧れの方だ」
「あんな地味な人をねぇ……」
オデットは少し呆れているが
「先輩の良さはオデットは理解しなくていい。
私が知っていれば十分なんだ」
うっとりと胸に手を当てて誇らしげに語るアリアを見ながらヒューイは力強く頷く。
「憧れの先輩を影ながら慕い、そしてその素晴らしさは騎士のように見守る私だけが知っていればいいとは……
なんてすばらしい女の子同士の……」
何故か机の下から思いっきり床を踏む音が聞こえてきて、当たり前だがヒューイが絶叫したかと思えばそのままテーブルの下へと吸い込まれるようにして姿が消えて行った。
何が起きたかと先輩方は目を点にしていたが、誰もどこか顔を青ざめさせるもテーブルの下を覗く事なく
「飲み物が足りないわね!私注文してくるけどみんな適当でいいかな?」
「ああ、エクルの好きな物をピッチャーでいくつか頼んでもいいか?」
会えて何もなかったかのように頼んでしまう。
「だったらエクルだけじゃ思いから私も手伝うよ」
「ミストありがとう!」
言いながら何故か机の下からヒューイを引っ張り出してずるずると引きずりながらジュースを取りに部屋を出て行くのを誰と無く黙って見送る中
「まぁ、よくある事なんでいちいち気にしないでください」
ピクルスをポリポリと食べながら他の料理に手を伸ばす俺に先輩方は難しそうな顔を浮かべていた。




