ドカンと一発やってみよう!
今年最後の更新となります。
来年も週一更新目指しますのでよろしくお願いします!
学生生活の大半はほとんどが勉強と宿題に費やされた。
どうやら一年目は座学は主体となっているらしい。
実技ももちろんあるが生徒主体のクラブ活動もあるという。
監督となる教師が一人以上在任し、三名以上の部員を集める事と言う最低限の規約がある。
他にも五日授業受けて二日の休息日というサイクルの間に三回は最低限活動をする事、年に一度の発表の場でクラブ活動の内容を発表する事。
活動内容を記録して認め、監督の教師に渡す事など細かい取決めもある。
当然活動内容は学校の授業に準ずる内容となり、それで成績の優劣にはなる事はない。
ただ魔法自主練クラブなんていうクラブ活動の内容は学年を越えて授業では練習しきれない訓練を教え合い学んでいくと言う学園一番の部員を抱える授業の延長のような活動をしているのもある。
同様に武術クラブや馬術クラブと言った授業の補修を兼ねた活動も活気があり、学園に通う生徒達はほぼどれかに所属しているという。
こう言った縁を繋いで将来働いた時の繋がりを築くのが目的なのだから、既に将来何になりたいか決めている奴らは真っ先に入部して行くと言う。
エクルは武術クラブに、そしてヒューイは剣術クラブに。
ミストは刺繍クラブと言うなんでも淑女の嗜みとして学ぶクラブに在籍しているという。
ここでも魔盲の事で居づらくて最初は刺繍クラブの部員確保の為の名前貸しで入部して以来活動の日は一応厄介になってると言う。
魔盲のせいで友達も出来ずにいたミストは他のクラブ活動に馴染めなくて毎学年どこにでもいるあぶれた女の子達で結成された刺繍クラブに年に一度の活動発表会の為にクラブ活動の場に足を運んだという。
最も、外から中が見えない教室内の活動の場ではミストは人気者だった。
母親の理不尽なまでの教育のおかげでミストの刺繍技術は昨年の発表会の折りにハンカチやレース編みを用意したのだが一瞬で売り切れてしまったのだ。
学園の友人に買ってもらったりとかいう友情販売ではなく、この発表会を楽しみに来るとは言っても学園に入れるのは在校生の父兄だったり卒業生だったりと制限があるとはいえそう言った面識もない人達に買ってもらえたのだ。
暫くして家から派遣された『さくら』が到着する頃にはすでに完売しており、刺繍クラブの折りに話をする仲間から後でこっそりとリボンに刺繍をお願いされたりハンカチに刺繍を頼まれたりする事になったのは大変だったとミストの苦笑。
ただし表立った所でこう言った事するとせっかくの仲間が酷い目に合うのでそこはお互いぼっち族。隔離された時間の隔離された場所での秘密の時間はぼっち族の貴重な集会の場でもあった。
そんなミストの作品にガッツリと心を奪われた彼女達はミストに指導を受けながら今年の分は昨年の発表会が終わって直ぐに製作を始めていたので既に数箱分の作品を用意してあると言う。
「クレーブス先生が刺繍クラブの監督を務めてくれてるの。
教師としてはきっちりした身だしなみをしているけど、ああ見えて刺繍のいっぱい入れたハンカチとか、レースの手袋とか、そう言えば誕生日にレースで作ったテーブルクロスをプレゼントしてほしいって事があったくらい乙女チックな先生なの。
勿論モチーフの指定と材料代は先生が支払ってくれたよ?」
「悪い、森で出会ったイメージとかけ離れて人物像が一致しないんだけど」
あの人だよな?でも……あれー?な感じで頭を捻る。
「発表会前に一度先生のお屋敷で製作合宿をしたんだけど、当時最近手に入れたって言うドレスがすごくかわいくってすごくもりあがって今度はドレスも作ってみようねってなったんだよ。
ちなみに今は先生が入手してきたガーランド産のストールに刺繍を入れてる所なの」
「ますます人物像が判らなくなっていく……」
「趣味と実益を兼ねてるからマイナスにはならないはずだからファロもどれか入る事を勧めるぞ」
「面白い出会いがあるかも?」
「いやいや、普通の出会いで充分だろ。
ってか、ハイネはどこに所属してるんだ?」
「俺ですか?
俺はモリエール様にならって魔導自主練クラブです。
ですが、このような事になったので変えようかと思ってます」
「まぁ、顔を合わせると気まずいだろうしな」
「かといってミストと一緒に刺繍クラブってのはちょっと気まずいよね?」
「はい。なのでミスト様の護衛として剣術クラブにでも在籍しようかと思います」
「剣術ねぇ」
「折角なので今日は帰りに体験してこようかと思ってます」
「ふーん……」
「って、ファロは全く興味なしか」
「いや、剣術は最高の剣士知ってるし、魔術は最高の魔法使いを知ってるだろ?
馬なんて家に馬小屋のない家には無用の長物だし、それより自分で移動した方が早いし……」
「ああ、うん。
お前の家の事情が特殊すぎて学園生活の意味がわかんねー……」
「いろんな人間に関る事が大切って言われたんだけど……」
「確かにそれは重要だね!」
何故か全員で納得されてしまった。
「お前は一般常識がずれてるからな……」
「既に一般的な知識はあるけどそれが一人歩きしてる感じだしね」
「知識の無駄遣いよね」
「何だよ、俺が悪いみたいじゃんか」
「多分それを含めての矯正が学園生活なんでしょうね」
ハイネが溜息を零しながら話を纏めてくれた。
さすが護衛の鑑であると褒め称えられていた。解せん。
「とりあえず今日は活動しているクラブ活動を見て回るって言うのはどうだろうか?」
「って言うか、お前らいつの間にそんなのやってたんだよ?」
「この学園に入学決まってからだから……」
「あー……すまん。
いきなり決まったんだっけな、ファロの入学は……」
「まあいいさ、そんなこと……」
入りたい物が今の所ないと言うか知らないとは言えどもふてくされてしまうのは仕方がない。
「って言うか、お前ら俺の授業中だって言うのを覚えているか?」
「いや、だって攻撃魔法で的を壊したら後は自由だって言ったの先生じゃん」
だから自由に運動場の片隅で語らっていますと言うも先生は頭が痛そうな顔で睨んでいる。
「あのな、いくら魔力値が高くても実際の魔法での攻撃はそん数値は全く役に立たないと言う事を学ぶ場なのだ。
魔力値総てが攻撃に回る事はない、それを体験する貴重な時間だと言うのにだな!」
「いや、だって、教科書通りにすると魔力を無駄ばかり垂れ流す事になるんだから、ちょっとしたコツさえつかめば得意属性との相乗効果で魔力値以上の力が出せるのに回りくどいやり方するからあそこで倒れている奴らみたいに魔力切れを起こすんだろ?」
「そうかもしれんが、お前の言ってる事も確かに間違いじゃない!
だけどそれは上級実技魔法の時間で習うレベルなんだ!
シエルの授業レベルの内容なんだ!
それなのに何でお前らあっさりとクリアするんだよ!!!」
「魔力値50万ほどの攻撃を当てれば破壊されるって設定が判ってたら効率よく破壊するに決まってるじゃないか?」
なぁ?とヒューイに聞けば
「それでもファロの助言で二回の攻撃回数で終わる事が出来たのは奇跡だと思ってるよ」
「私もまさか一回でクリアできるとは思ってなかったかも……」
「ミストは失敗しても力押しで破壊する事が出来るとは思ってたけど、私まで一回でクリアできるとは正直思ってなかったよ」
「みなさんに置いて行かれないように頑張りましたが、それでも三回でクリアできたのは自信につながりますね」
なんせ、今現在も攻撃して攻撃された力を蓄積してる途中の的はまだずらりと並んでいる。
「この距離だとお前達みたいな一年生には10回って言う目安の回数があるんだ。
それを無視して一回だなんて、寧ろシエルの所に放り込んでやろうか……」
「あのさフレイ君。
さっきからシエルシエルって、私は君の女になったつもりはないよ?
寧ろ後輩指導している私に対しての暴言だよね、尊敬の言葉がないのは教員として物すごーく問題発言だよ」
「うっひゃう!!!」
突然俺達の間に生えてきたシエル先生の出現にフレイ先生は変な叫び声でのけぞっていた。
「君達も暇でくっちゃべってるだけならこっちも的当てしてるから一緒にやろうか」
運動場のすぐ隣ではシエルの授業が同時に進行している。
後輩指導として同時間、同じ場所での授業は5日の間に何度かあり、シエルが担当している三年目の学生はどこかおかしそうにくすくすと笑っている。
主に一年生が三年生の的を壊せるわけないだろうと。
そんな生暖かい視線の中シエル先生は俺の首根っこを摑まえて新しい的を用意させて
「さあファロード君一発でドカンと決めたらシエル先生監督一年生はお断りの実践上級魔導クラブに入れてあげるよ~
活動内容は実際にギルドの任務を受けて山や森や岩場に出かけて魔物を狩ったり、それに伴う準備から狩った魔物の解体作業、そして食べたりギルドに売って査定してもらったり一連の流れを勉強するんだよ」
「売るんだ、って言うか俺達の話聞いてたんだ」
少しだけ呆れたように聞くも
「それは先生がこの場の監督者だから当然だよ。
ちなみにシエル先生のクラブでは学校からの補助金なんてギルドの登録分しかもらえないからね。
だから売ったそのお金で次回の準備をするんだよ。
山に入る為の装備を買ったり、怪我の治療薬を買ったり、学校のキャンプセットが使えないからそれの用意もしなくちゃいけないしね」
「まんま実践だな」
「実は部員数が少なくてもうちょっと難易度の高い討伐任務を受けたいんだけど、その為にもファロード君の戦力はぜひとも入ってもらいたいんだよね」
「まぁ、話を聞く限りじゃ面白そうだしな」
「ではでは、ならばあの的に向かって力の限りドカンと一発どうぞ!」
「おし、気合一発入れるとしますか!」
言いながら初日に練成した学校専用の相棒を構えて魔力を刀身に乗せる。
良き風の祝福を
刀身に落書きされた言葉の通りこの魔武器には風魔法ととても相性がいい。
風の回復魔法ももちろん通常よりパワーアップした感触に俺は詠唱破棄してあの日姿勢バランスの悪さに上手くコントロールできなかった魔法に再度挑戦する。
両足を踏ん張り、剣を弓矢の矢として的を狙う。
つむじ風のように魔力が集まり
キュオン……
風の唸る音と共に風が圧縮され
『シュトルムカイザー!』
魔力の矢を解き放つ!
キイイイイイイイイイッッッ!!!
聞いた事もないような甲高い音と共に「あれ?」と思った時には的は爆破されていた。
うわああああっっっ!!!
ぎゃああああー!!!
「ファロード君何やってるのよっっっ!!!」
思わず涙目のシエル先生が俺を睨み上げているものの、シエル先生の背後では分厚い魔法防壁が何重と張られていて目の前で次々に破壊されていくもぎりぎり俺達の所まで砂礫などは飛んでこなかった。
「いや、先日ちょっとしくじった魔法の再検査を兼ねてドカンと一発?」
「あのね、先生が知る限りさっきの魔法は学校を卒業して実戦配備された一部のエリートって呼ばれる人達のみ学ぶ魔法なのよ!
先生は当然使えるけどね!」
「っていうかあれくらい普通に使えないと生活できない場所だから」
「くあっっ!!!
さすがディヴィール村出身!シエル先生を連れてって!」
魔法防壁の向こうのもうもうとした土煙が風に乗って去って行った。
そこには隣近所の的は欠片さえなく、巨大なクレーターの穴がぽこんとあいていただけ。
ぽかんとしたフレイ先生が立ち尽くしているのを筆頭に周囲は俺達の会話に誰もが口を閉ざしていた。
何この一年生。
何でこんなのが一年生なの。
何でこんな一年生が学園に通ってるの。
とっとと騎士団に入れよ。
騎士団で訓練しろよ。
かなり引き気味の視線で俺とシエル先生を眺めていた。
「多分後から学園長の呼び出しと騎士団からの呼び出しがあるだろうからちゃんと素直に呼び出されてよ!」
「おお、騎士団!」
「おやおや?ファロード君は騎士団に興味があったのかな?
無事卒業出来たら騎士団入団したいって学園長に口添えしておくと今回の話しも早く終わる予感がするよ?」
「いやいや、そうじゃなくてだな。
俺のこの学園の推薦者が騎士団の何とかって言う騎士団長さんらしいんだ。
未だにお礼言えてないから会えたらお礼を遅ればせながら言えるかなって?」
「ふおおおおお!!!
ファロード君の推薦者はひょっとしてヴァイナス団長でしたか?!」
「お、そんな感じの名前」
「どういう理由でお知り合いに?」
「なんかレイのコネと昔取った杵柄をフルに生かした結果だそうで」
「シエル先生も是非ともお近づきになりたい!」
「リマと同じ趣味か?」
「そーなのですよ!
リマちゃんとは一緒によく騎士団の公開訓練の観戦に行く間柄なのです!」
「へー……」
「よし、今から学園長の所に行って自ら騎士団に説明行くの方向で話を進めるよ!
フレイ先生さっきのちゃらにしてあげるから後始末お願いねー☆」
ささ、善は急げだぞと俺の手を引っ張って生徒とクレーターの出来た訓練所を後にして職場放棄したシエル先生に引きづられる形で学園長の所へと向かえば案の定というか何と言うか……
「シエル!おまえはどんだけ訓練所を破壊すれば気が済むのだ!!!」
「今回はシエル先生は無実ですー!」
学園長の部屋でおもいっきし拳骨を喰らって涙を流すと言うシエル先生と言う所までがお約束と言う様に良くなれた流れの作業のような二人のコントを見る事になった。
だけどすぐにコンコンと部屋をノックする音が響けばリマが二人を席に座らせて部屋の扉を開ける。
部屋の片隅に立たされた俺は室内に入ってくる男性達に目を瞠るのだった。
みなさん良いお年を~




