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幸せの中の不安

 下校時刻が過ぎ、生徒たちがいなくなったのを見計らって第一図書館で本を探す。

 探しているのはこの国の貴族名鑑。

 借りてゆっくり目を通せればいいのだけれど、貸出禁止なのでここで読むしかない。

 メイローズ先生から聞いた噂が少し気になっていた。

 リシアの噂話なんてしても大した意味がない。

 にも関わらずリシアの話をしたのが不可解だった。

 伯爵家に連なる人間は勝手にリシアの話をすることはないはずだ。

 父親はリシアの話なんてしたくもないだろう。

 親戚や派閥に入っている人は父親の不興を買うのを何より恐れているはずだし、他家の人間の前で口を滑らせるとは考えづらい。

 気兼ねなくリシアの文句を言えるのは父親とその夫人、姉くらいのものだった。

 貴族名鑑を捲りながら予測を立てる。

 父親と一緒に参加していたならリシアの話は止められたはずなので一人で参加するようなお茶会かもしれない。

 可能性としては夫人が一番高いのだけれど、そんな噂を流して何の得があるんだろうか。

 リシアの愚痴や文句なら姉や近しい親戚と話せばすむことなのに。

 そもそも夫人はリシアがグランヴェル伯爵家から出されたことを知らない?

 考えれば考えるほどわからなくなる。

「リシアさん?」

 自分以外の声が聞こえて、開いていた本を閉じる。

「リジル君? どうしてここに?」

 下校時間はもう過ぎているし、門には鍵がかけられているはずだ。

 図書館にもリシアが入る時に鍵を閉めている。

「すみません、気がついたら下校時間が過ぎていたみたいで」

 放課後から図書館にいたけれど、本に夢中になって下校時刻に気が付かなかったと言う。

「そうなんですか、では図書館も閉めるので一緒に出ましょうか」

 とりあえずそう促す。

 下校時刻を過ぎたら見回りがあるので、リジル君が気づかなくても先生方が声を掛けるはずなんだけど。

 うっかり見逃したのかもしれない。

 閉じ込められることにならなくて良かったと思う。

 図書館の鍵を掛け、教員室に向かう。

 下校時刻を過ぎて残っていたリジル君も一緒だ。

 一応どうして残っていたのかを書いてもらわないといけない。

 第一図書館から教員室はすぐなので、教員室の明かりを目指して歩いて行く。

「遅くまで残っていたことは反省してますけれど、リシアさんと偶然会えてうれしいです」

 嬉しそうに微笑まれて曖昧に微笑み返す。

 リシアの戸惑いを余所にリジル君は楽しそうに言葉を続ける。

「学園に来るのは少し不安だったんですけれど、授業も楽しいですし、友達もたくさん出来たので来て良かったと思います」

「そうですか、良いことですね」

 嬉しそうに語るリジル君は学園生活が楽しくてしかたないと言った様子だ。

 微笑ましくてリシアも表情を緩める。

「これからも一杯楽しいことがあると思いますよ」

 中等部と高等部合わせて6年あるのだから、まだ始まったばかりだ。

 学園生活が楽しい言うリジル君の6年が実りあるものになるように頑張ってほしい。

 生徒たちがみんなそう思えるようにリシアも頑張ろうと決意を新たにする。

 もっともっと学園でみんなと笑い合えるように。

 今の生活が幸せだと心から言えるように、精一杯頑張ろう。

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