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水底呼声  作者: 宣芳まゆり
番外編
226/227

裏話 弟からの手紙

自治区にいる弟から,手紙が届いた.

自室のいすに深く腰かけて,バウスは目を通す.

セイキ族長が和平に協力してくれること,その見返りとして交易権の独占を求めていること,セイキ族長の義妹であるメイシーと結婚するつもりであることなどが書かれている.

バウスは,まゆをひそめた.

セイキ族長の要求は,いささか過大に思われた.

しかしこれに関しては,神聖公国は立場が弱い.

なんせずっと鎖国をしていたようなものだ.

外交の実績がほとんどない.

そんな神聖公国が和平交渉をしてきても,スンダン王国は信用しない.

よってスンダン王国が信頼する第三者に,間に入ってもらうしかない.

だからバウスたちは,のどから手が出るほどに自治区の協力がほしい.

セイキ族長はそれを分かっているので,強気に出られるのだ.

だが交易権の独占はまだしも,結婚は…….

バウスは弟に,和平の犠牲になってほしくない.

自分のように幸せな結婚をしてほしい.

バウスはゆううつな気分で,手紙を読み進めた.

結婚式は神聖公国の城で行い,ライクシードとメイシーはそのまま城で暮らすらしい.

なのでメイシーを,この上なく歓迎してほしい.

食事に関する好き嫌いはないと,彼女の周囲の者たちから聞いた.

寒いのは苦手だろうから,彼女の部屋は暖かくして,なおかつ自分の部屋のそばにしてほしい.

外国暮らしの苦労を自分はよく分かっているので,彼女を上手に守れるはずだ.

メイシーは音楽が好きで,とんでもなく歌も楽器もうまい.

彼女の大切な楽器を預かったが,どう保管すればいいのか分からなくて困っている.

親の形見でもあるので,傷ひとつ付けたくない.

彼女には,みゆやカズリとの一件は知られたくない.

メイシーが故郷に帰りたいと感じないように,できるだけ彼女をもてなしてほしい.

……などなどが,えんえんと書かれていた.

バウスは,さきほどとはちがった意味で,頭を抱える.

駄目だ,ライクシードの方は完全にほれている.

セイキ族長に紹介されて,一目ぼれしたのか?

嫌な予感がする.

ライクシードの片思いかもしれない.

彼は女性にもてるが,なぜか不運にも愛する女性からは愛されない.

けれどメイシーの気持ちは関係なく,政略結婚である以上離婚はできない.

さらにバウスは,弟に幸せになってほしい.

だからメイシーには,ライクシードを好いてもらわなくては困る.

だがみゆのときみたいに,すでに恋人がいたら,どうすればいいのか?

そしてなぜ,楽器なんて面倒なものを預かっているのか?

バウスは多少悲愴な気持ちで,いすから立ち上がった.

マリエに相談しよう.

聡明な彼女ならば,何かいい案を出してくれるだろう.

また案外,セシリアが力になるかもしれない.

メイシーとセシリアの年は近いから,うまくいけば友人どうしになるだろう.

バウスはふらふらとしながら,部屋から出ていった.

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