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第28話:解体作業、開始。――思い出の詰まった王宮を、重機で三秒で更地にします

王都ハイランドの再開発計画が、僕の一存で決定した。

 広場に集まった貴族や騎士たちは、僕が提示した「全域解体」という言葉に、まるで世界の終わりでも見るかのような絶望の表情を浮かべている。


「……正気か、カイ! この第一王宮は、建国以来五百年、一度も不渡りを出さずに守り抜かれてきた、我が国の魂だぞ!」


レオンが、泥にまみれたマントを翻して食ってかかる。彼の背後にある王宮は、確かに外見こそ豪華だが、僕の測量眼スキャンを通せば、腐蝕魔圧によって基礎がボロボロになり、自重で崩壊を待つだけの「巨大な粗大ゴミ」に過ぎなかった。


「魂ね。……その魂のせいで、地下に毒が溜まって、民が病気になっている事実は無視かい?」


僕は、カイポリスから転送させた最新鋭の解体用重機――【魔導破砕機:ガイア・クラッシャー】のコクピットに飛び乗った。

 四本の巨大なアームを持ち、先端には超高周波振動を発生させるドリルが装備されている。ドワーフの技術と、僕の「構造解析」が融合した、解体のための芸術品だ。


「……レオン、危ないから下がってて。……バルガスさん、周辺一キロメートルの『防音・防塵結界』、展開完了した?」


「おうよ、親方! 埃ひとつ外に逃がさねえ完璧な養生ようじょうだ。いつでもいけるぜ!」


「よし。――【構造的急所・特定】。……施工開始」


僕はレバーを押し込んだ。


ズゥゥゥゥゥゥゥン……!!


ガイア・クラッシャーのアームが、王宮の主柱に軽く触れた。

 次の瞬間、高周波振動が建物全体の「結合」を瞬時に解除する。


「な……っ!? 消えた……王宮の東塔が、一瞬で砂になった……!?」


レオンが絶叫する。

 魔法で爆破したのではない。物質を繋ぎ止めている魔力をピンポイントで中和し、石材を最小単位の「砂」へと還元したのだ。

 爆音も、飛び散る破片もない。ただ、五百年続いた歴史が、静かに、そして無慈悲にさらさらと崩れ落ち、更地へと変わっていく。


「……はい、次。中央ホール。……ここは地脈の捻れが酷いな。――【空間破砕:一括撤去】」


アームを横になぎ払う。

 豪華なシャンデリアも、歴代王の肖像画も、金箔で飾られた玉座も。

 僕にとっては「撤去すべき障害物」に過ぎない。

 わずか三秒。王宮の中枢が消失し、そこにはただの、平らな、まっさらな地面が露出した。


「……バカな。……俺たちが守ってきたものは……こんなに、脆かったのか……」


レオンが膝をつき、更地になったかつての王宮跡を呆然と見つめる。


「脆いよ。……中身が空っぽだったからね」


僕はコクピットから降り、砂の上に立った。

 だが、その瞬間。

 建物が消えたことで、地中に隠されていた「あるもの」が、剥き出しになった。


王宮の地下、ちょうど玉座の真下だった場所。

 そこには、地上の砂とは明らかに異なる、不気味に脈打つ「鉄のハッチ」が埋まっていた。

 ハッチには、ハイランド家の家紋と、見たこともない複雑な封印式が刻まれている。


(……伏線:王宮は、この『ハッチ』を隠すための重石おもしとして建てられていたのか?)


「親方……これ、ただの地下室じゃねえぞ」

 バルガスが、慎重にそのハッチを覗き込む。


「ああ。……どうやら、ハイランドの王族は、自分たちが何を『踏みつけて』いたのか、本当に分かっていなかったみたいだ」


僕はハッチに手を触れた。

 僕の血が紋章に反応し、重厚な金属音が地下深くから響いてくる。


「……レオン。君たちが『魂』と呼んでいた建物の下には、世界を終わらせるための『非常用スイッチ』が埋まっていたよ。……そして今、それが起動しようとしている」


更地になった王都。

 解体工事が終わったはずのその場所で、本当の「世界の修理」が幕を開けようとしていた。

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