表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/33

第12話:天才児たちの暴走。――先生、核融合ってなんですか?

北門の補修と防衛システムの構築を終えた僕を待っていたのは、学校の校庭から立ち昇る、不自然なほど「白く、静かな光」だった。


「カイ様、急いでください! あの子たち、先生から教わった『構造分解』の応用だと言って、とんでもないものを組み上げているんです!」


リリスに急かされ、新設されたばかりの石畳を駆ける。

 学校の敷地に入った瞬間、肌を焼くような熱気と、大気が震えるような重低音が僕を襲った。


校庭の中央。

 そこには、十人ほどの子供たちが、僕の配った学習用タブレットを円陣になって掲げていた。

 彼らの中央――地上数メートルの位置に、直径五メートルほどの『光り輝く球体』が浮遊している。

 

「……っ、これは」


僕の測量眼スキャンが、即座に異常な数値を弾き出した。

 球体内部の魔素マナ密度が、通常の空間の数万倍に圧縮されている。本来なら反発し合うはずの魔力が、無理やり一箇所に押し込められ、臨界点を超えて「熱」と「光」へと変換され続けている。


「あ、カイ先生! 見て見て!」


中心にいた少年、トト君が満面の笑みで振り返った。

 彼の持っているタブレットの画面には、僕が教えた覚えのない、しかし論理的に完璧な「魔力収束数式」が並んでいた。


「先生が言ってたでしょ?『物は細かく分ければ分けるほど、大きなエネルギーを秘めている』って。だから、空気中の魔素を限界まで細かく分解して、逆にギューッてくっつけてみたんだ。これがあれば、夜でも街が明るいでしょ?」


「……トト君。君たちがやったのは、この世界の物理法則における『魔力の核融合』だよ。……素晴らしい、論理的には満点だ」


僕は歩み寄り、トト君の頭を撫でた。

 だが、その手はわずかに震えていた。……感銘と、現場監督としての冷や汗のせいだ。


「でもね。……このままじゃあと三十二秒で、この球体は『爆発』して、この街ごと消滅する」


「「「えぇぇぇぇ!?」」」


子供たちが一斉に青ざめる。

 リリスとセレナに至っては、もはや声も出ない。


「先生、止めて! 僕たち、街を壊したくない!」


「大丈夫。……ここが『現場』である限り、僕が事故は起こさせない」


僕は腰の道具袋から、建築用の『黒い杭』を四本抜き放った。

 これは王都の宝物庫に眠っていた、魔力伝導率が極めて低い「黒曜鋼」を僕が加工したものだ。


「【四方結界・施工管理サイト・アウト】!」


シュバッ、と四本の杭が球体を取り囲むように地面に突き刺さる。

 同時に、透明な防壁が立ち上がり、猛烈な熱量を内部に閉じ込めた。

 だが、防壁が内側から膨らみ始める。エネルギーの行き場がない。


「リリスさん、セレナさん、子供たちを後ろへ! ……次は、この『余剰エネルギー』の活用だ」


僕はタブレットを取り出し、街全体の地下配管図を空中にホログラムで投影した。

 ペンを走らせ、核融合球体から一本の「太い導線」を地下の貯水槽へと繋ぐ。


【構造再構築:エネルギー循環回路ヒート・エクスチェンジャー


ゴオォォォォォ……ッ!


凄まじい吸引音が響き、暴走寸前だった光の球体が、みるみるうちに小さくなっていく。

 吸い出された熱量は、地下に張り巡らされた銅のパイプを通り、街中の蛇口から出る「お湯」の熱源へと変換されていった。


「……ふぅ。これでよし」


光の球体は、今や穏やかな『照明』程度の明るさになり、校庭を優しく照らしている。


「カイ様……。今、あなたは『世界を滅ぼす規模の暴走』を、ただの『給湯設備』に変えたのですか?」


リリスが震える声で尋ねる。


「効率がいいからね。これでもう、街の人たちは薪を使わなくても、二十四時間お風呂に入れるよ」


僕はトト君に視線を戻した。


「トト君。新しい発見をするのはいいことだ。でも、次は必ず『安全係数』を三倍にして計算してごらん。それが、良い職人まどうしになるための第一歩だ」


「……うん! わかった、先生!」


子供たちは再び、目を輝かせてタブレットを覗き込み始めた。

 

 その光景を見ながら、僕は確信していた。

 この街から生まれるのは、建物だけじゃない。世界を変える「技術」そのものが、ここで育ち始めている。


だが、この『第二の太陽』の出現は、遠く離れた隣国……商業都市国家「自由貿易都市ゼノス」の観測所にも捉えられていた。


「報告します! 最果ての荒野に、太陽に匹敵する魔力反応を確認! ……信じられません、反応はわずか数分で消失し、現在は『安定した熱源』として固定されています!」


その報告を受けたゼノスの第一王女、ミラ・ゼノスは不敵な笑みを浮かべた。


「王都が捨てた『無能』が、太陽を飼い慣らしたというの? ……面白いわ。その街の『トイレ』でも借りに行こうかしら」


新たな波乱が、すぐそこまで迫っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ