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パレット  作者: 青原朔
129/129

ep98.最悪の道は

氷の道が、裏世界の深部へと続いている。


零は、迷わない。


足音は静か。


でも、心は騒がしい。


歪んだ空間の中央。


片桐りりが、くるりと振り向く。


「おかえり」


笑う。


「来ると思ったよ」


零は、睨む。


「歓迎はしないで」


りりは肩をすくめる。


「強欲と暴食、どっちも扱いづらくてさ」


「嫉妬が欲しかった」


零の目が細くなる。


「利用する気?」


「ううん」


りりは首を振る。


「選ばれなかった側の気持ち、私は好きだよ」


その言葉が、刺さる。


零は笑う。


冷たい。


「春は選んだ」


「迷わなかった」


「それだけ」


りりは一歩近づく。


「それだけで十分壊れる」


静寂。


その横。


瓦礫に腰掛けている少女がいる。


火野火憐。


憤怒を纏ったまま。


目は、赤い。


「……葵、来たんだ」


火憐が言う。


零は少しだけ視線を逸らす。


「今は零」


「そう」


火憐は笑わない。


「私さ、思ったんだ」


空気が、重くなる。


「りりは確かにムカつく」


「でも」


拳を握る。


「結局、私が弟を殺さなきゃいけなかった理由は」


目が、氷とぶつかる。


「ハルが弱いからでしょ?」


零の呼吸が止まる。


火憐は続ける。


「守れなかった」


「止められなかった」


「選ばなかった」


「全部、あいつが中途半端だったから」


憤怒が、揺らぐ。


零の胸の奥で、嫉妬が蠢く。


違う。


でも。


否定できない。


りりが、楽しそうに言う。


「いいね」


「最高だ」


零が、火憐を見る。


「……それで?」


火憐は、立ち上がる。


「弱い王なんて、いらない」


零の瞳が、氷より冷たくなる。


「だったら」


「作り直す?」


火憐は、かすかに笑う。


「壊してからね」


りりが、拍手する。


「完璧」


「これで三王」


零は、静かに呟く。


「私は春を殺す気はない」


りりが首を傾げる。


「まだ、ね」


零は否定しない。


氷が、足元で広がる。


嫉妬と憤怒が、混ざる。


遠くで。


暴食が、ゆっくりと目を開く。


戦争が、形を持ち始める。

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