表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パレット  作者: 青原朔
107/120

ep76.侵入者

コーヒーの湯気が、横に流れた。


風じゃない。


空間そのものが、押された。


久我が顔を上げる。


「……来るぞ」


裏世界の空に、黒い亀裂。


細い線。


それが、縦に裂ける。


音はない。


でも、世界が悲鳴をあげている。


バキ、と。


境界が破れた。


咲の管理下。


その膜を、力任せに。


次の瞬間。


黒が落ちてくる。


霧じゃない。


影でもない。


質量。


塊。


都市の怨嗟。


数百万の“飢え”。


暴食。


完全体。


一切削れていない。


未分割。


未侵食。


圧だけで膝が折れそうになる。


美波が呼吸を失う。


「……でかすぎる」


零の瞳が凍る。


「……本物」


魅魅の笑みが消える。


「冗談でしょ」


春の腹が、鳴る。


空腹じゃない。


本能の警報。


“喰われる側だ”


そう理解する。


今の春は王じゃない。


捕食対象だ。


暴食が、ゆっくりとこちらを見る。


目はない。


でも確実に見ている。


その中心で、


巨大な口が、開く。


都市の残骸が吸い込まれる。


裏世界の黒が、悲鳴もなく飲み込まれる。


咲の声が鏡の奥から響く。


「……あーあ」


少し楽しそうに。


「管理、崩れちゃった」


暴食が、一歩踏み出す。


地面が消える。


存在が削れる。


空間が欠ける。


これは戦いじゃない。


災害。


春は立っている。


だが、理解する。


今ぶつかれば、死ぬ。


零も。


魅魅も。


全員。


暴食が、息を吸う。


それだけで、


世界が引き寄せられる。


甘い朝は、


完全に終わった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ