第3話 未確認飛行物体
促されるままに学ラン野郎に続いて通路を進んでいくと、突き当りに少しだけ広い空間が広がっていた。
部屋に入ってまず見えたのは、ちょうど部屋の真ん中にあった、腰より少し高いくらいの円柱状の物体だった。
それ以外の物がこの部屋に置かれている様子はなく、青白い灯りが部屋を照らしているのが寂しい雰囲気を感じさせる。
周囲を探ってみても今しがた通った入り口以外は人が出入りできそうなところはなく、一見したところ、この部屋が行き止まりのようだった。
ただ、先ほどと同様にあの電柱に仕掛けがあったように、そこにある円柱にも何かしらの機能が施されているのだろう。
そして、その予想の通りに学ラン野郎が円柱の天辺に右手を乗せた。
一体今度は何が起こるのだろうか。
そう内心で身構えていると、目の前の床が隆起して、次の瞬間にはその場に浮かんだ2枚の円盤が現れた。
「これに乗れ」
学ラン野郎はそう言って円盤に飛び乗って見せた。
どうやら、この謎の円盤は乗り物らしかった。
俺もそれに続いて、おそるおそる円盤に飛び乗った。
飛び乗った瞬間に円盤がふらふらと揺れるのではないかと思ったが、意外なことにそんなことはなく、円盤は微動だにもしなかった。
そして、そのまま動き出すのかと思いきや、円盤の円周から半透明の膜のようなものが出てくると、そのまま周囲に覆いかぶさるように、ちょうど試験管を逆にしたような形の被膜を形成した。
触ると若干ぷにぷにしていて、手で押してみても穴は空かず、押せば押しただけ張り付くようにして伸びた。
非常に伸縮性に優れた素材のようで、浮かんだまま安定して水平を保っている円盤と合わせれば、なかなか安全な乗り物として機能しそうだと思った。
被膜を張り終えた円盤は、一体どこへ向かうのかと思っていると、そのまま床に向かって降下した。
ゆったりとした速さでの移動だったため、そこまでの衝撃はないだろうと思ったが、俺は反射的に膝を曲げて着地の態勢をとった。
しかし、床に衝突する衝撃を感じることもなく、俺は別の衝撃を受けた。
なんと、円盤が床を貫通したのである。
しかも、その貫通した場所は先ほど歩いた場所であるのだから、そこを貫通しようというものならその場所に穴が空くか、あるいはこの円盤が衝突して止まるかのどちらかであるべきだ。
だが、そんなきわめて常識的な思考を無視して円盤は部屋の床面をするすると通り抜けてしまった。
見る見るうちに体が床面に向けて吸い込まれていくのを見ていると、まるで自分が幽霊にでもなったかのような気分になった。
幽霊と言えば暗闇に現れるものだろうが、床面を超えた先にあったのもまた暗闇であった。




