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第2話 学ラン野郎と道案内

地図アプリの案内に従って交通機関を経由しながら30分ほど移動すると、狭い路地の真ん中に100年か200年前ほどに学生が来ていたとされる制服をきた大男が壁に寄りかかりながら佇んでいた。


その男、コスプレ野郎でも、大男でも、呼び方はなんでもいいのだが、仮に学ランの男としようか。


俺が路地に立ち入ったことにすぐに気が付いた学ランの男は、こちらを一瞥するとため息を吐いた。


「佐倉から話は聞いている。ここからは俺が案内する」


俺が返事を返す間もなく、学ランの男は狭い路地の先を歩き始めた。


人目を避けて歩こうが、目撃されれば間違いなく記憶に残るような格好をした男の後についていくことに、俺は若干の躊躇いを覚えた。


「何をしている。早くついてこい」


お前に戸惑ってんだよと、内心で愚痴りながらも、俺は足早に学ランを追いかけた。


___________

_______

_



「なぁ、まだつかないのか?」


かれこれ一時間ほど無言で歩き続けていたが、一体いつになったら到着するんだと、俺はとうとう口を出すことにした。


「企業秘密だ」


「もう一時間歩きっぱなしだ。少しくらい休憩させてくれないか?」


「この街の監視網は刻一刻と変化している。ここで休めば到着までさらに時間を要することになるが、それでも良ければ休憩をとろう」


「ああ、そう。ご説明ありがとう」


断りの返事を聞くこともなく学ラン野郎は先導を続けた。


「だが、この道さっきも通っただろう?」


「必要だからだ」


男はそう言うばかりで、何も説明する気はないようだった。


そこから更に歩き続けること3時間。途中で何度か学ランの男に何度か話しかけてみたが、彼は必要な会話を除けば何も話そうとせず、声をかけたうちの殆どは無言で返された。


時刻を確認すれば、既に6時を回っていて、あたりは暗くなり始めていた。


昼にラーメンを食べてから、腹が空くまでには十分な時間が経っており、俺は腹が減り始めていた。


一体いつまで歩かなければならないのだろうか。


そんなことを考えて、俺は憂鬱な気分になった。


学ラン野郎があまりにも無言を貫こうとするため、まだかという一言ですらも発しようとすることが躊躇われた。


そして、歩くこと5時間。どういうわけか先ほど学ランの男と遭遇した狭い路地に戻ってきていた。


見覚えのある建物が見えてくるにつれ、学ランがどこへ向かおうとしているのかは薄々と分かっていた。


しかし、実際にこうして同じ場所に戻ってきてしまうと、一体何のつもりなのか問うにしても、困惑する気持ちがより強かった。


ふわっと浮かび上がるように胸に去来した徒労感は、実は、同じ場所に戻ってきたようでそうではないのだろうかという現実逃避的な考えを導こうとしていた。


ただまぁ、しかしだ。一つの都市に建造物の外観や配置が一致する場所があるというのは完全にあり得ない話ではない。そうした場所が存在する可能性は小指の先くらいはあってもいいだろう。都市が形成されるのが自然現象ではなく、人の何かを生み出そうとする意思に基づいているからだ。そういう変なことを考える変わり者が一人くらい生きてたって何もおかしくない。


しかし、たとえそうだとしても、そんな場所がこの街にあったのであればこれまでに噂くらい耳にする機会があっただろう。


ただ、そんな馬鹿馬鹿しい仮定などしなくとも、ここがさっきと同じ場所であることは分りきっていた。


それはゴーグルに表示された座標が先ほどの地点と同じだったからである。


それでも、別の可能性を考えてしまうのは、ここまで歩いた数時間がほとんど無駄な時間だったことを認めたくないからか。


いずれにしろ、聞くべきことは聞かなければならない。


先ほどから企業秘密だのなんだの、学ランは俺の言葉にまともに取り合う気が内容だったが、それでも俺は意を決して口を開いた。


「おい、どういうことだ」


と。


だが、やはりと言うべきか。学ランの男は俺の方に振り返りながらも、しかし全ての説明を躱すようにして次のように言った。


「説明は後だ」


そう言って学ラン男は路地に不自然に建てられたコンクリートの柱に触れたとき、その傍にあった建物の壁に変化が起きた。


静かに壁の一部分が下に向けて沈下し、人が一人分くらい通れそうな通路に変わったのである。


そして、壁が通路へと変態を遂げると、通路内を照らすライトが通路の入り口から順番に一斉に灯っていった。


学ランは俺に少しだけ振りむいて一瞥すると、行くぞと一言だけ発して通路へと進んでいった。












あけましておめでとうございます。

ここまでお読みくださり、本当にありがとうございます!

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