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匙さん、命を懸けた最後の奥義!

一階~匙老人対狩人軍団


「シャアアアアアアアッ!」


一体、また一体と匙の素早い動きについていくことができず、狩人たちは倒されていく。彼は狩人が鉄の爪を振るった瞬間にさっと避け、伸びきった腕を捕まえ投げ飛ばしたり、頭を左右に動かすだけで躱して、その背後にいる狩人に攻撃を当てたりという戦法をしていた。

そのため、結果として匙を仕留めようと攻撃した者は悉く彼の策にはまり、同士討ちとなる。そして残り二十名を切ったところで、匙老人は一体に急接近すると、その腹に強烈なボディブローを打ちこんだ。狩人は腹を抑え、緑色の血を吐き出すと、白目を剥いて失神。

追撃として相手の喉を踏み潰し完全に息の根を止める。


「さて、残り一九人だがどうするかね。このまま降伏するのなら見逃してやってもいい」


髭を撫でながら優しい声で語る匙だったが、狩人たちは彼の言葉に耳を貸さない。逃げて恥をかいて生きるくらいなら、特攻をしたほうが誇りを守ることができるというのが彼らの考え方だった。


「仕方あるまい」


匙は嘆息しすると鋭い手刀で一体の首をはね、背後から襲ってきた相手にはローリングソパットで腹に風穴を開ける。今の彼の肢体は研鑽された刃と同じ硬度を持っていた。量産型の狩人なので、一号と比較すると惰弱であり、動きも遅いので武術を嗜んだことのある人間が相手をしても簡単に倒せるほどだった。一体一体は弱くとも、数の力で敵を圧倒する。それが量産型の強みであったが、その長所は最後の一体となったところで完全に潰えた。


「キエエエエエエエエエエッ」


仲間を倒された恐怖と憎しみから目の焦点が定まらないと言った様子で最後の狩人は滅茶苦茶にカギ爪で打撃を見舞い、尻尾を振り回す。匙は冷静にそれらの攻撃を受け流すと、細い腕とは思えぬほどの力で狩人を持ち上げ、相手の体を弓なりに反らしつつ、太腿と首をガッチリとロックする。半狂乱で暴れる狩人だが、いかに暴れようとも匙の腕から逃れることはできない。


「そろそろ決めるとするか」


彼は地面を蹴ってロケットのように急上昇すると、狩人の体を天井に激突させた。背骨は匙の頭で串刺し状態のために粉砕され、前面は岩造りの天井に当たり、皮膚が裂け、全身の骨が内蔵に突き刺さり、狩人は即死した。口から雨のように緑色の血を流す屍に技を解除すると、狩人は地面に落下しグシャリと潰れてしまう。

一階に残されたのは屍と緑色の血の池だけだった。

彼は丁寧に屍の山に手を合わせ、掌を上に掲げる。

噴出した炎によって狩人たちの遺体は焼き尽くされ、あとには広大な一階の部屋が残るだけとなった。


「さてと、エミリーたちの加勢にでも行くとするか」


腰の後ろに手をあて、二階へと続く出口に一歩進んだ途端、匙は強烈な殺気と気配を感じ、振り返った。すると、右の部屋の扉を破壊し、部屋一面を覆いつくさんばかりの大蛇が現れた。


「なるほど。お前さんがこの部屋のラスボスというわけじゃな」


これまでの相手とは比較にならない超ビックサイズを前にしても、匙は動じることはなかった。長年の経験により裏打ちされた自信がそうしているのだ。


「シュオオオオオオオオオオオオオオッ」


奇声を発し緑色の体液を固めた弾丸を吐き出す大蛇。

匙がすんでのところで回避すると、当たった場所は白煙をあげて解ける。


「お前さんの武器はその唾か。下品な蛇だ」


大蛇は大木ほどの太さの尻尾を見舞うが、身軽さで優る匙に宙に逃れられてしまう。目標を失った尾は壁にあたり、易々と半壊させてしまう。一撃、いや、掠りでもしたら匙の老体では即死は免れない。


「どうやら、少しばかり本気を出さねばならぬようだ」


跳躍したまま蛇の頭頂部を踏みつけるが、威力が低かったのか蛇は怯むことさえしない。ならばと弾丸のように打ちこまれる唾を避けながら接近し、その腹に正拳を穿つ。だが、蛇の腹は弾力があり、あっさりと跳ね返されてしまう。あれほどの巨体では投げ技の使用は不可能である。ここにきて、形勢はあっという間に逆転されてしまった。


「戦局は不利か。だが、前進あるのみ!」


匙は魔法で巨大スプーンを出現させ、それを棒術のように巧みに操り、大蛇の頬や頭部などを叩いていく。

しかし、すぐに尻尾が襲い掛かり、スプーンは損傷を受け消滅。

二号を吹き飛ばした盾も使用したが、敵の圧倒的な攻撃力に耐えかね、砕け散ってしまった。

度重なる魔法と格闘の乱用により、匙の老体は体力の限界にきていた。手足を床につけ、呼吸を荒くする。立っているのも辛いのだ。

だが、彼の皺だらけの顔には敗北感は漂ってなどいなかった。

薄ら笑いを浮かべ、大蛇を睨む。


「シャアアアアアアアアアアアアアッ」


迫りくる大蛇に匙老人はフラつく足で起き上がると、全身から紫色の気を発する。気は球体となり老人の枯れた体を包み込む。


「エミリー、お前さんと短い間でも過ごせて楽しかった。まるで孫ができたみたいだったよ。トリニティ、ディック、ナツ。お前さんたちで、あの娘を守ってやってくれ。すまぬが、わしは先に逝く!」


武道家のようなポーズで大地を踏みしめ、握りしめた両拳を一旦後ろに引いたかと思うと、それを一気に前へと突き出した。


「魔導砲!」


匙の全生命エネルギーが込められた紫の光線は解き放たれ、一直線に蛇に突っ込んでくる。


「シュアアアアアアアアアアアアッ……」


絶叫と共に大蛇の肉は蒸発し、残るは巨大な骨だけだった。

巨大な蛇の骨は支えを失いぐらりと傾く。

匙は逃げる力もなく、己の運命を受け入れ、目を閉じた。

黄金のカードに最新情報の通知が来たのは、その十秒後のことだった。


残り 5人

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