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4.眼から隠すという露出(13)

「で、浅沼さん、推理というのはどういうことです?」


「日記が切られていたことが問題なのです。

 そこには日記を切り取った人間にとって秘密にしておきたいことが書かれているのでしょう。

 だから切り取ってしまった。

 それをやったのは十三貝本人ではあり得ません。

 彼女の日記なのですからわざわざ切り取るまでもないのです。


 日記はおそらくあの部屋から持ち出されたことがありません。

 日記を切り取った人間もあの部屋で読んだはずです。

 十三貝があの部屋に入れた人間だということでしょうか。

 日記の内容から判断する限り、彼女はここしばらく人を部屋にあげていません。

 切り取られた二十五日以降にだれかを招いた?

 そうかもしれません。

 日記を切り取った人間があの部屋に侵入して日記を読んだ可能性もあります。


 日記が読まれたことを十三貝は知っていたかというと、それが十三貝が消えた以後だとすれば当然彼女の知るはずがありません。

 彼女の留守中に忍び込んで読んだのだとしても彼女はきっと気づいていなかったのでしょう。

 以前――二年ほど前になりますが、十三貝はストーカーにつきまとわれたことがありました。

 外出中にストーカーに部屋へ入られるという経験をしています。

 そのとき彼女は室内のちょっとした異同にすぐに気づき早急に転居しましたし、そういう経験があったことを私たちに話しています。

 今回はそうした反応を示していません。

 うちのサークルの田代洋子が先日――七月一日になりますが、電話で彼女と話しています。

 かなり親しい関係にある彼女にもそういう話はなかったということです。


 ですからページを切り取るのは盗み読みの事実を彼女に教えてしまうことになります。

 にもかかわらず切り取っているのですからその人間にはもう十三貝の眼を気にする必要がなかったのでしょう。

 むしろ十三貝以外の読者を意識してページを切り取ったのです。


 十三貝以外の読者とは、もちろん私たちではありません。

 日記を切り取った人間にとって私たちは例外的読者にすぎません。

 想定されていた読者とは警察です。

 日記を切り取った人間には警察が介入してくるのがわかっていたんです。


 日記を切ろうが燃やそうが、十三貝本人が語れば、秘密は明らかになってしまいます。

 その心配がないからこそ日記は切り取られたんです。

 ……残念ですが十三貝はすでに殺されているでしょう。

 日記の最後の数ページには犯人を示唆するような内容が書かれていたにちがいありません」


 ミロクさんは語り終えた。

 すっごいね、とちさとが僕の耳に囁いた。


 すごくなんかない、しょせん詭弁だ。


「君は美奈子が殺されたと言うんだね?」

「考えた結果です」


 村上刑事の昂りを抑えたような声に浅沼さんはやけに冷静な声で答えた。

 このとき、村上刑事が十三貝さんを呼び捨てにしたことに気づいたのは僕だけだったろうか。


「殺されたと決めつけるのは時期尚早ではありませんか」

 縹刑事は眼を擦った。

「彼女は就職が決まったのでしょう?

 案外、お祝いの小旅行にでも出かけているのかもしれませんよ。

 その、日記にあった村田ですか、その男とでも一緒にね。

 明日あたりひょっこり帰ってこないともかぎりません」


「でも、それじゃ日記が切られてたのはどういうことなんですか」

 ちさとが震えた声で反論する。


 僕は黙っている。

 ミロクさんはまちがっていないようだ。

 しかし十三貝さんが殺されているとは納得できない僕がいる。


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