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次元都市アクシス  作者: 七夜
01 終わりと始まりの世界
24/104

Chapter04-5

話の展開の都合上、チャプター4のサブタイトルを変更しました。

四次元情報→変異体

意味は……まあ、すぐにわかるかな。

 防衛戦と迎撃戦の違いとは何か。

 防衛戦とは読んで字の如く、変異体から都市を守る際の戦闘である。

 より具体的に言うならば、都市を囲っている外壁の内側に出現した変異体を即時殲滅し、その後に外壁付近の個体も一掃する。月に一度程度と類推されている出現周期に合わせて、突発的に発生する戦闘だ。

 

 対する迎撃戦もまた、読んで字の如く。

 都市が存在する無人島は外壁より外側にも土地が広がっていて、そこに出現した変異体は各々が好き勝手なタイミングで都市の外壁へと接近してくる。

 それを索敵を主な任とする外回りのガーディアンが発見し次第フューリーへと報告し、戦闘を専門とする都市常駐のガーディアンへと討伐指令が下るという流れだ。

 基本的に都市外部には守るべき市民がいないため、敵の数にもよるが迎撃戦は防衛戦よりも難易度が低いと言われている。

 つまり、新人である俺が実戦経験を積むには持って来いと言う訳だ。


「敵の数は二〇。対象は殆ど一塊となってここ、外壁の南部へと接近してきている。お前たちの任務はその迎撃だ」

 鋼鉄の外壁の外側。

 過去に行われた実験の爪痕だとか何だで一面荒れ地のような景色が広がっているのをバックにして、俺たちは久道さんの前に並ばされていた。

 今回の出撃メンバーは、俺とフィーダと瑞葉さんの三人。残りのメンバーは基本的に見学のようだが、万が一の時に備えて待機しているようだ。

 ノインの姿だけが見えないのは、迎撃戦において狙撃手である彼女は一人外壁の上部からスコープと≪サードアイ≫を用いた索敵と戦況の把握を役割を担っているかららしい。

「友柄は初の実戦だ。敵を倒すことよりも、まずは死なない立ち回りを覚えろ。レティエは既に何度か経験しているだろうが、油断はしないように。ベイカーは二人のフォローを積極的に行え。現場の指揮は任せる」

 久道さんは一人一人の顔を見て指示を与えていく。

 本来ならフューリーの仕事らしいのだが、直接戦闘に関わる事柄に関しては全て彼に丸投げしているらしい。

 まああの人が戦闘の指揮を執っている姿は想像できないし、久道さんも文句は言いつつ采配自体に不満は無さそうだった。

『こちらノイン・クラッツァ。約五キロ前方に敵の一団を発見。密集して外壁へ接近中』

 短い通信の後、中継映像が映し出される。

 自動車と殆ど変わりない速度で荒野を進む異形の集団。映像越しとは言え実際に動いているのを見るのは初日以来だが、相変わらずの外見だ。一体として同じ姿の個体は存在しないが、精神衛生上問題のある見た目であるのは共通していた。

「あの数に集られるのは面倒だな。フィーダ」

「……やっちゃっていいんですか?」

「いいぞ、ぶっ放せ。適当に散らしてくれれば、私たちで各個撃破する。そっちに抜けて来た分は好きにしろ」

 瑞葉さんからそう告げられ、当初戸惑う素振りを見せていたフィーダは、


「了――解ですッ!!」

 嬉々とした表情を顔に張り付け、ポケットに手を突っ込んだ。

 じゃらりと金属の擦れ合う音を立てて取り出されたのは、本来なら鍵をまとめて管理するのに使うキーリング。

 ただしそこにぶら下がっているのは、一〇を軽く超える数の≪タグストレージ≫だ。

 フィーダはそこから一つを固定用のクリップごと取り外し、

連結開始(リンク・オン)!」

 展開する。

 入れ替わるようにして彼女の右手に現れたのは、文明レベルの違う世界から来た俺でも一目で兵器とわかる代物だった。

 四角い角柱にグリップを取り付けたような武骨なフォルム。個人的なこだわりらしい迷彩のペイントが施されたそれを、フィーダは重量を感じさせない動きで軽々と担ぐ。

 ゲームにでも出てきそうな、四連装ミサイルランチャー。

 都市で開発された次元兵器ではない実弾兵器が、西に傾きかけた陽光を鈍く反射した。

「目標、敵集団の中心――発射(ファイア)!!」

 高らかな発声と共に引き金が引かれ、先端に開いた四つの穴から漆黒の弾頭が噴煙を伴って射出される。

 ゆったりとした速度で数メートル程飛行したミサイルは突如として急加速。点火されたブースターが唸りを上げながら、一秒と経たず目視が困難な距離まで飛翔し。


 着弾。

 地平線付近で光が瞬き、遅れて爆音が轟いた。

 これだけ距離が離れているにもかかわらず、遠方から吹いた爆風が周囲の砂塵を巻き上げ、衝撃が体を震わせた。

 たった四発。それも人間がギリギリ携行可能なサイズのミサイルからは到底想像しえないサイズの爆炎が柱となって吹き上がっている。

 まるで火山が噴火したかのようなその有様に、フィーダを除いた誰もが一瞬言葉を失った。

「うーんこの大威力! 奮発して四発使った甲斐があったもんです」

「……何だ、あれは」

 最速で再起動した久道さんが、感極まったような声を上げるフィーダに問う。

「合衆国で開発された、最新の準指向性反応弾頭です! 防衛戦じゃ威力が高すぎて使用許可が下りませんけど、外なら打ち放題ですからね!」

「敵側の残存戦力は?」

『映像に乱れ有り……復旧。半数は消滅。残り十体の内、六体は行動不可能。四体は爆風により分散』

 ノインのいつもは淡々としている声も、どこか引きつっているようだった。

 そりゃそうだろう。

 フィーダが挨拶代わりとばかりにぶっ放した最初の一撃で、敵集団がほぼ壊滅してしまったのだ。

 もう全部この子だけでいいんじゃないか?

 相手は人殺しの化け物だが、これには流石に同情を禁じえなかった。

「……何にせよ、敵を散らすという目的は達成できたな。残りは私たちが引き受けよう」

「行く必要あります?」

「想定とは少し違うが、前向きに見ればより安全に実戦経験を積めるな。少々ぬる過ぎる感も否めないが」

「俺としては、ありがたいんですけどね」

 笑っては見せるが、内心は不安だらけだった。

 久道さんに五日間みっちり絞られたとは言え、実戦で通じるかと聞かれれば微妙な所だ。

 実際に相手取るのは人間とは大きく体格が異なるし、急所の位置も見た目通りとはいかない可能性だってある。

 だからこそ、戦ってみなければ何もわからない。

 少なくともここで足踏みをしているだけでは、何も。

 ……腹を決めるか。

 俺は出撃の前にフューリーから受け取った、完成したばかりの専用装備が収納された≪タグ≫を握りしめる。

 すると冷たい金属が余分な熱を吸いだすかのように、心が落ち着いていくのを感じた。

「覚悟は良いか?」

「はいっ」

「では、行くぞ――」


「「連結開始(リンク・オン)!」」


 ≪リンカー≫の起動と同時に、俺と瑞葉さんは駆け出した。

「ぐっ――!」

 一歩目の踏み込みで音速に到達。

 加速器という名前に反し、加速という過程は存在しない。

 ≪アクセラレータ―≫は運動速度の情報へ数値を直接加算し、対象を設定した最高速度まで瞬時に引き上げる。

 当然、肉体へかかる負荷も相当な物だ。

 同時起動した≪アブゾーバー≫によって軽減しきれなかったGに身体と意識を持っていかれそうになるのを、歯を食いしばって耐えた。

 並走する瑞葉さんが涼しい顔をしているのは、経験の差なのだろう。こちとら三日前から本格的な加速訓練を初めて、直線移動だけなら気絶しないようになったのが昨日という体たらく。

 恐らく……いや、ほぼ確実に本格的な戦闘では加速を使いこなせない。

 だが、他に手立てはある。

 勝算がゼロじゃないからこそ、今回の迎撃戦に参加したのだ。

 風景が高速で流れていくさ中、態勢を立て直した一部の変異体が俺たちの接近に気づいた。

 比較的近い場所にいた二体が、耳障りな鳴き声を発しながらこちらへ向かってくる。

 知性の欠片も感じない突進だが、五メートル近い巨体が生み出す破壊力は相対速度も鑑みて計り知れない。

「あの大きさはまだ荷が重いか……私が先行して片づける。春近は周囲の警戒を頼んだ」

「了解です!」

 大型相手はまだ早いと判断され、俺は更に加速度を上げて弾丸のように飛び出していく瑞葉さんを見送った。

 若干速度を落としつつ、BCの視覚補正を使って周囲の索敵を行った。

 戦闘継続が可能とされている残りの二体はそれぞれ反対側に一キロほど離れて落着しており、まだこちらへ向かってくる素振りはない。他には肉体の半分以上を吹き飛ばされてなお生存している個体がまばらに存在しているが、復活して襲い掛かってくることもなさそうだ。

 一見して瑞葉さんの戦闘に横やりが入る心配はなさそうだが、それでも警戒はしておく。過去に現れた変異体には、時間経過で損傷を再生するタイプがいたという話をルナリアから聞いていた。

 油断した所を死角からパクリ――なんて間抜けな最期は勘弁したい。

 もっとも、ノインが≪サードアイ≫で俯瞰的な索敵を行っている時点で死角なんか無いようなもんなのだが。

『気を抜くなトモノエ・ハルチカ。小官が居眠りをしないとも限らない』

「わ、わかってるって」

 心を読んだかのようなゾッとしない冗談に、自然と背筋が伸びた。

 改めて周囲の安全を確認しつつ、俺は瑞葉さんの様子を伺う。


 最初の突進を軽々とやり過した瑞葉さんは、二体の敵に張り付くような動きで相手を翻弄していた。

 右の変異体が繰り出した丸太のような腕による一撃を跳躍で回避。空中に躍り出た彼女を更に左の変異体が禍々しい爪を振るって迎撃する。

 しかし、瑞葉さんは空中で再び跳ねた。

 アクションゲームではお馴染みの空中ジャンプじみた動き。それは一回だけに留まらず、見えない壁を連続で蹴るようにして、稲妻のような軌道を描きながら宙を疾走する。

 巨体故に動きが鈍重な変異体たちに対応できるはずもなく、がむしゃらに振り回される凶器は彼女に掠る気配もない。

 一方で、瑞葉さんから攻撃を仕掛けている様子も見られなかった。序盤は回避に専念して、敵が疲労するのを待っているのだろうか。

 相手の様子を見るが、あれだけ滅茶苦茶な動きをしていながらその動きは一切衰えていない。

 あの人の持久力がどれだけあるかは未知数だが、このままではじり貧なんじゃ……ん?

 気のせいだろうか。

 俺は強化された視力で辛うじて捉えたそれに目を凝らした。

 瑞葉さんが通過した後に、限りなく細い何かが漂っているように見える。

 あれは……糸?

 朧気ながらその正体に気づいた、次の瞬間――

「ギッ!?」

「ゴガ!?」

 地上に降り立った瑞葉さんが腕を一振りした途端、あれだけ好き放題暴れまわっていた二体が突然動きを止めた。

 引き付けをを起こしたかのような挙動は止めたと言うより、強引に止められたと言った方が正しいのだろう。

 現に変異体たちは必死に瑞葉さんに襲い掛かろうとしているが、もがけばもがくほど全身に細い線が刻まれ血を流し出す始末。

 俺が見たあれは、恐らくワイヤーだ。

 肉眼では目視すら怪しい細さの鋼線が、二体の変異体を縛り付けているのだ。

 一体どれだけの丈夫さがあれば、あの巨体を完全に束縛可能なのか。

 そもそも、設置物の一切ない平地でどうやって空中にワイヤーを張り巡らせているのか。


 疑問は尽きないが、ハッキリしていることは一つ。

 もう、勝負は決まっていた。


「――沈め」

 囁くような声が聞こえた直後。

 極限まで張り詰めた糸が切れたような音が響き渡り、二体の変異体は全く同時に全身を切り刻まれて地に伏した。

 拘束対象を失ったワイヤーは、血の雫を払いながら瑞葉さんの手元へと回収されていく。

 銀の輝きが幾重にたなびくその光景は残酷でありながら幻想的で、戦場でありながら俺は一瞬心を奪われた。

『ボーっとするなトモノエ・ハルチカ』

「す、すんません」

 また怒られてしまった。

 でも仕方ないじゃないか。

 瑞葉さんの戦闘にはそれだけ人の目を惹きつける美しさがあったのだから。

 ノインからすれば知ったことではないようで、呆れた様子を隠しもせずため息交じりに戦況の変化を告げる。

『残る中型二体の内、一体がそちらへ接近中。もう一体に動きはなし』

「奇妙だな。後者はこちらに気づいていないのか?」

 ワイヤーの回収を終えた瑞葉さんが、俺の側まで戻りながら問いかける。

『爆風に吹き飛ばされて以降、棒立ちしている。索敵をする素振りも見せない』

「被害状況は?」

『爆心地から最も離れた位置にいたためか、極めて軽微。あと、これは小官の主観でしかないが、何と表現したものか……』

 珍しいことがあるものだ。

 普段から物事をキッパリハッキリ言うノインが言葉を選びかねている。

 無線越しにも伝わってくる戸惑いを瑞葉さんも感じたのか、怪訝そうに眉根を寄せていた。

 

 たっぷり一秒。

 彼女にしては長すぎる逡巡を経て。 


『あの変異体には、他の変異体に見られる狂気を感じない。何か、明確な意思を持ってそこに立っているような……気がした』


 報告までともいかないノインの所感を聞いた瑞葉さんは暫し黙した後、小さく笑い。

「ノインからそんな曖昧な言葉を聞けるとはな。春も半ばだが、明日は雪が降るかもしれん」

『……気の迷いだった。忘れて欲しい』

「そう不貞腐れるな。お前がそこまで気にするとなれば、充分に留意すべき事柄だ。あのまま放置しておくのも危険だろう」

 あからさまにムッとした様子のノインへ取りなすように言ってから、瑞葉さんは表情をスッと引き締めた。

「その個体は私が叩く。春近には向かってくる奴の相手を任せた。不測の事態に備えてミハイルと、念のため秀一殿は私の方へフォローに来てくれ。残るメンバーは死に損ないを狩りつつ春近のバックアップを」

『承知した。各員、ベイカーの指示通りに行動を開始せよ』

『『了解!』』

 久道さんの鶴の一声により、こちらの状況も一気に動き始めた。

「エンゲージまで残り三〇秒といった所か。今の内に武器を出して体勢を整えておけ」

「はい!」

「私は行く。無茶だけはするなよ!」

 返事を聞いてすぐ、瑞葉さんは≪アクセラレータ―≫を起動して棒立ちしている変異体の方へと向かっていった。

 俺も指示された通り、ずっと握りしめたままだった≪タグ≫を展開する。

 三次元から排除されていた質量と体積が復元され、存在情報に基づく構造へと再構築。手のひらに収まるサイズだったそれは手全体に馴染む形状の持ち手に変化し、そこから緩やかな反りを持った刀身が伸びている。

 外観や基本性能は久道さんの持つ刀型の次元兵器と似ているが、抜刀術を扱う彼と違って俺の刀には鞘がない。代わりに刃は長く厚めに造られていて、フューリーが開発したばかりという最新の機能が組み込まれている。

 どうやら初日から行っていた実験はその機能に関するものだったようだ。鍔元に銃のようなトリガーが存在し、これを引くことで起動するらしい。簡単な説明しか受けていないので詳しい原理とかはわからないが、とにかく威力が凄いらしい。

 その分消耗も激しいらしいので、使うとすれば本当にやばい時になるだろう。

 ちなみに、この武器には『正宗』と名付けた。刀と言えばこれだろう。今日手に入れたばかりなのに、名前を付けた途端愛着が湧くんだから不思議だよな。

『こちらルナリア。今ラッドと一緒にそっち向かってるから、先走って仕掛けないでね!』

「わかってる! フィーダはどうした?」

『残念ながら定員オーバーだ。あいつ重量過多な上に加速下手くそだから、だいぶ遅れてるぜ』

『お、重いのは装備ですから! わたしは重くないですから!!』

『敵は典型的な中型。危険と判断した場合は小官らで即時排除する。油断はせずとも気負いすぎないように』

「了解!」

 仲間たちからの忠告やらなにやらを受けて、俺は手にした正宗を正眼に構える。実際の戦闘ではどうなるかは別として、姿勢や型通りの動きなら久道さんのスパルタ――もとい熱心な指導と自主練のお陰である程度様にはなっている。

 既に変異体は、補正を使わなくても姿形が確認できる距離まで近づいてきていた。

 例に漏れず醜悪で、見ているだけで不安を駆り立てる外見。しかしそれが迫ってきている事実に対し焦りと恐怖は皆無で、心は凪いでいる。

 ついこの間までなら違和感があったが、今はそうでもない。

 訓練は短かったが、実のある物だった。終ぞ久道さんから一本取ることは出来なかったが、自分が成長したという実感はあった。

 先の瑞葉さんの戦闘で見た変異体と今接近してきているそれとに、大きさ以外の差異はないと思える。ただ本能に任せて、獲物に飛び掛かるだけの獣。

「やれないことは、無いはずだ」

 自分へ言い聞かせるようにして、敵を真っすぐに睨む。

 接敵まで残り二〇メートル。

 まずはこちらからは仕掛けず、回避に専念する。≪アクセラレータ―≫を使えば難しいことではない。最悪の場合は時間操作もあるし、数秒程度の意識加速なら大した頭痛にもならないとわかっている。

 接敵まで残り一〇メートル。

 本格的に攻め込むのは、ルナリアたちがここに到着してからだ。無茶をするつもりはサラサラないが、万が一に備えて待つべきだろう。ゆくゆくは一人で戦う力もつけなければならないだろうが、それは今日でなくてもいい。

 接敵まで残り五メートル。

 こちらの存在を認めた変異体が、殺意をむき出しにして俺目がけ突進を敢行してきた。直線的な動作は能力を使うまでもなく見抜け、余裕で回避が間に合う。ギリギリまで引き付けて、一太刀くらいなら浴びせられるか。

 

 接敵まで残り――

 残り――

 残――




 ――――――何だ、これは。


『消えた、だと!? 奴はどこだ!』

『瞬間移動……ですがそのような素振りはなにも!?』

『総員警戒態勢! 敵の反応をロストした!!』

『馬鹿な……その場から即時離脱せよトモノエ・ハルチカ! ハルチカ!!』

『ちょっとノイン、何が起きてるの!? 春近、聞こえてる? ねぇったら!?』


 何もかもが遠い。

 脳内で響く無線の騒乱も。

 目の前で解体された変異体の亡骸も。

 ただ俺の目の前には。

 闇よりも深い絶望と、『黒』が立っていた。

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