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第二五八話 アクドルクの真の目的は?

会話と考察メインの回となっております。

「……隠しアビリティ、所詮は噂レベルの話だと思っていた」


 形の良い顎のライン上に細く靭やかな指を添え、ビッチェが語る。どうやら彼女でも隠された能力を知るすべはないようだ。ただ、話としては耳にしたことがあったらしい。


「え? ビッチェは知っているの?」

「……ある程度冒険者の多い街だと、本人以外には知ることの出来ない隠された能力がある、そんな噂もまことしやかに囁かれたりする」

 

 そしてピーチは眼を丸くさせ、驚いたようにビッチェに尋ねる。ピーチはその存在すら知らなかったようだ。

 そしてビッチェの回答に、なるほどね、と納得を示す。確かに冒険者の数が多い街であれは、変わった情報も集まりやすいのだろう。


「なんだよ、それなら特級なんて特殊な冒険者なら調べたりしなかったのか?」


 するとフレムが横から口を挟む。ビッチェがSランクの特級冒険者であることは彼らのは中では周知の事実だ。故に気になったのだと思われる。


「……勿論噂とは言え、情報があれば調べることもある。でも、結局真実は掴めずじまいだった」


 何だその程度かよ、とフレムが毒づく。それに若干ムッとした表情をビッチェが見せた。


「でも、判る気がします。鑑定にも引っかからず、本人にしか知ることが出来ないなら、表に出てくることは先ずありませんものね」


 しかしローザに関してはビッチェの言っていることに理解を示す。フレムに比べると冷静に物事を判断できていると言えるだろう。


「でも、それならどうしてナガレは判ったの?」


 そんな中、ピーチがナガレに目を向け、そして不思議そうに小首を傾げた。なにせ本人にしか判らないのが隠しアビリティやスキルなのであり、ならば何故ナガレにそれが看破出来たのか、彼女でなくても気になるところだ。


「私は、なんとなくそういうことが判りますので」


 しかし言葉を鈍らせることなく、快活にそれでいてどっしりと落ち着いた雰囲気を醸し出しながら、当然のようにナガレが答える。


「……他の人間なら滑稽で信じられないような事でも、ナガレが言うと凄い説得力」

「確かにそうね。なんかナガレだと、すっと胸に落ちてくる気がするわ」

「当然だ! 先生に解けない謎はないんだぜ!」

「う~ん、でも確かにナガレっちが嘘をつくとは思えないものね」

「このような嘘、ついてもナガレ様には何の得にもなりませんものね」


 そして、それを疑うような真似をしない面々である。これまでのナガレの活躍ぶりを考慮すれば、確かにそれぐらいあっさりと看破できても不思議ではないのである。


「……でも、それなら確かにイストフェンスでの商人や貴族の往来が婚姻を機会に急激に増えたのも理解できる」

「え? そうなの?」


 ピーチの問いかけにビッチェはコクコクと頷いてみせる。


「……かなりの増加。でも、それは西の辺境伯令嬢である、リリースとの婚姻による影響という見方が強かった。だけど、それにしては伸び方が早すぎたのも事実」

「う~ん、けれど、縁結びという能力が備わっていたなら、それも納得できるってことだね~」

「でもよ、そんな怪しい点があったのに調査しなかったのかよ」

 

 カイルは、なるほど、といった様相で口にするが、相変わらずフレムは不満顔だ。


「……ただ商人や貴族の往来が増えたと言うだけでは、流石に連盟も動けない」


 それに対し両瞼を一旦閉じ、ビッチェが答える。


「確かにナガレ様の話があったからこそ、能力が関係していたと繋がりますが、そうでなければ中々そこまでは結びつきませんよね」

 

 ローザが何かを考えるような素振りを見せつつ、思ったままを話す。彼女の言うことは尤もであろう。縁結びという能力があると知らなければ、往来が増えた要因など他にも色々と可能性を示すことは可能だ。


「でも、その増えた貴族や商人が全員奴隷の売り買いに関与していたってことなの?」


 ここでピーチが別の方向での疑問を投げかけてくる。この話で重要なのはアクドルクが縁結びの力で何をしようとしていたかだ。それが良いことに繋がっているのであれば特に問題はないのだが、これまでの話を聞くにそれはありえない。

 

 そうなるとやはり奴隷関係に先ず目を向けるべきであり、それを考慮してのピーチの発言であろう。


「……それはありえない。ただ、そういった往来が激しくなることで、怪しまれることなく取引の話が出来たのだと思う」


 ピーチの問いかけにビッチェが答える。流石に全員が全員奴隷商人などという話はありえないが、やはり何らかの関係があったと見るべきなのだろう。


「木を隠すなら森の中といったところかな~」


 そしてカイルの発言にはフレムも頷き納得を示す。確かに多くの商人が出入りしていればそれに紛れてというのも手としてありえそうにも思えるが。


「でも、そうなるとあの野郎は街なかで堂々と奴隷取引を行っていたということか? とんでもない奴だな」

 

 フレムが憤慨してみせた。既に彼の中でアクドルクが忌むべき敵なのであることは言動からよく判る。


「いえフレム、流石にそれはないでしょう」

 

 しかし妙に頭に血が昇っているフレムを諭すように先ずナガレが声を上げ、そして更に言葉を続けていった。


「――それに関しては、あくまでイストブレイスではアクドルクの話に乗った相手との顔合わせと商談のみ。その商談にしてもハラグライが名代として立っていた可能性が高いですね」

「え? アクドルク自身は動いていないってこと?」


 ピーチが尋ねると、はい、とナガレが答え。


「帝国との交渉に関しては流石にアクドルクが主となって話を進めたでしょうが、それ以外の案件に関してはハラグライの方に任せていたでしょうね。彼は変装のスキルも持っていましたからそういった行動には最適です。それに商談そのものも隠語を多用し証拠を残していないでしょう」

「か、かなりの用心深さねそれ」


 目を白黒させながらピーチが言う。


「それにしてもナガレっち、相手が変装のスキルを持っているなんてことまで判るんだね~」

「今更何を言っているんだよ。それぐらい先生なら当然だぜ!」


 確かに隠しアビリティまで見破ることが出来たナガレであれば、それぐらいわけないだろう。


「……もはや何があっても驚かない。とにかく、アクドルクは自分の手に入れた能力を十二分に活用し、奴隷の販売ルートを構築し、更に拡大していった」


 ビッチェはここで自分なりのまとめた考えを提示した。それにナガレも、そんなところでしょうね、と同意する。


「でも先生、どうしても判らないんですが、そこまでやっておいてなぜあの野郎は、わざわざ先生をあの森へ? あの時やられてた奴隷商人は、アクドルクの依頼で動いていたってことですよね? アクドルクにとっては不利なだけじゃ?」

「それは、あの時ナガレが奴隷の危機を察していたし、アクドルクだって止めるわけにはいかなかったんじゃない?」

「いえピーチ、そういった考えも出来ますが、むしろあれは最初から私が向かうことを前提に話を進めていたようですので」

「え? そうなのですか?」


 ナガレの話を聞きローザが驚きを示す。


「はい。現に既に街門が閉じているような時間だったにも関わらず随分とあっさりと許可が出され、門も開きましたからね。あれはつまり最初からああいった事態になることを想定していたと考えられます」

「え? ちょっと待ってナガレ、想定ってそれってもしかして、あの奴隷商人が魔獣に襲われることが判っていたってこと?」

「そうなりますね」

「ほえ~でもナガレっち、どうしてアクドルクは奴隷商人が魔獣に襲われることが判ったの?」


 話を聞いていたカイルが不思議そうに述べた。


「それは特に難しい話ではありません。そもそもあの森は魔獣の森、魔獣が多く潜んでいる場所ですからね。そして以前あの奴隷商人が乗っていた馬車で見つけた魔導具。煙が出る仕組みでしたが、あれであの商人は魔獣に襲われないと思いこんでいた可能性が高い」

「……つまり、あの魔導具を渡したのがアクドルク?」

「そうですね。直接渡したわけではないにしても、それに関係しているのは間違いないでしょう」

「でもそれも不思議よね。これまでの話でいくと奴隷商人はずっとその魔導具の力であの森を抜けていたのでしょう? それなのに何で急に効かなく?」

「それは、全く効果のないものを渡されていたからではないでしょうか?」

「うん? あ、そっか……」

「……よく考えればわかりそうなもの」

「俺でもわかったぜ先輩」

「う、うぅ、フレムにまでそんなこと言われるなんて」


 ピーチはフレムでも気づけそうな事を理解できなかった自分にショックを受けている様子だ。


「……でも不可解。そもそも魔物を避ける魔導具というのはある、でも、魔獣に効くような魔導具や煙があるなんて聞いたことない」

「そういえば、聖魔法にも魔物を退けたり出来る魔法はありますが、魔獣クラスになると厳しいですね」


 怪訝そうに語るビッチェ。ローザも顎に指を添えつつ、思い出したように語る。


「そうだな、そんなのは先生ぐらいじゃないと無理だぜ!」


 そしてフレムのこの発言。ただ、確かにナガレであれば可能なのは、獣人に纏わせた合気の事を考えれば確かだろう。


「でも、実際魔導具で魔獣は避けてきたんだよね~」

「いえ、それは実は種があるようですね。なにせあの魔導具の煙はそもそもただの匂いつきの煙。あれでは魔物も退けることは出来ないでしょうから」

「へ? で、でもそれならどうして?」


 ピーチの頭に疑問符が浮かぶ。


「つまり、煙の効果で魔獣が寄ってこなかったわけではなく、あの煙をみたらその馬車は襲わないよう魔獣が躾けられていたということです。そして私達が救出に向かったあの日に関しては、煙を見たら襲うよう躾けられた魔獣も放たれていた――」

「な、なんか衝撃の事実が次々明かされていくわね」


 目を細めながらピーチがいった。確かにナガレの手によりかなり色々なことが見えてきている。


「……つまり、ナガレはあの森に魔獣使いの類がいたと?」


 そしてビッチェの問いかけ。この世界には確かに数は少ないまでも魔獣使いと称される者が存在する。


「ふむ、確かに魔獣使いであれば魔獣を操ることも可能です。ですがビッチェ、あの時森には相当数のヘルハウンド、そしてオルトロスにマンティコアとかなりのレベルの魔獣が溢れていました。それだけの数を魔獣使いでどうにか出来るものでしょうか?」

「……難しい。特にマンティコアクラスは一体飼いならしただけでも魔獣使いのなかでは尊敬されるレベル。その上ヘルハウンドやオルトロスも纏めてとなると、今現在存在している魔獣使いには覚えがない」


 ナガレの問いかけにビッチェ答える。森での魔獣の数は相当なものであった。それは皆の記憶にも新しいことであり、確かにあれだけの数を操るのは厳しいだろうといった様相を見せている。


「そうなると、も、もしかしてインキの時みたいに、特殊な力を持った魔獣使いが現れたとか?」

「いえ、今回に関してはそれは違います。重要なのは魔獣を操っていたのは、これまで私達が出会った人物の中にいたということ。そして、イストブレイズの冒険者ギルドで聞いた古代迷宮の情報です」

「古代迷宮って確か――アニマルパニック?」


 ピーチが思い出したように言う。なんとも緊張感のない名称だが、確かにそれについて一行は以前冒険者ギルドで話を聞いている。


「はい、そうですね。そしてあの時ギルドの受付職員よりヒントになり得る話を何個か頂いていました」


 ナガレが答えると、その時冒険者ギルドに一緒に赴いた面々が頭を悩まし始める。


「う~ん、ヒント、ヒント?」

「確かあの時聞いたのは依頼の内容について……」

「うん、そして攻略するのは難しい迷宮だったんだよね~名前からは想像できないけど」

「ああ、そういえばそうだったな。確か一番最近の攻略者でも一〇年前に一人いたぐらいって話だったよな」

「あんた、そういうことはしっかり覚えているわね」


 意外な記憶力を発揮したフレムにピーチが驚く。それは他の皆も一緒なようで、目を丸くさせてフレムを見ている。


「皆様、素晴らしい記憶力ですよ。ではその攻略者の名前は覚えてますか?」

「え~と、確かく、く……」

「クライだ! そうだクライです先生!」

「はい、そうですねフレム」


 そしてここでも真っ先に思い出したのはフレムだ。この男ただの馬鹿というわけでもなさそうである。


「……待って、クライ――クライ……もしかして」

「はい、ビッチェの思い描いた方で間違いないでしょう。偽名というのは意外と単純に決めてしまうものですからね」


 そして話を聞いていたビッチェが一考を示す。彼女はあの場にはいなかったが、フレムが思い出した名前で何か気になることがあったようだ。そしてその背中を押すようにナガレが答える。


「え? ということは、クライが偽名で、私達の知っている人物が攻略者だとしたら――あ!?」

「ハラグライですねナガレ様!」


 そしてふたりの話を聞いたことで、ピーチとローザもその解答に行き着いたようだ。


「そうですね。一〇年前といえば話しによれば既に彼は先代に仕えていた頃。密かに迷宮攻略をしていたとしても不思議ではありません」

「でも、なんで偽名?」

「そりゃやましいことがあったからだろ?」

「いえ、その頃は今回のような話もなかったでしょうから、そうですね、目的としては腕試し、といったところでしょうか」

「……腕試し、気になるところだけど、でも、そんな一〇年も前の迷宮攻略が今回に関係してる?」


 怪訝そうにビッチェが尋ねる。


「はい、古代迷宮は希少なオーパーツ(迷宮遺物)があることでも知られていますからね。しかも最深部まで攻略したとあれば、それ相応のアイテムを見つけていてもおかしくありません。攻略されたのは一〇年前かもしれませんが、その時手に入れたアイテム次第では今回のことに利用していてもおかしくないでしょう」

「あ、もしかしてナガレ、つまり、そのオーパーツが魔獣を操るのに関係しているってこと?」

「はい、察しがいいですねピーチ」


 ナガレの言葉に、えへへぇ、と照れてみせるピーチである。


「……でもナガレ、それは確信出来る理由がある?」

「そうですね、私が気になったのはハラグライが普段身につけていた着衣の内側です」

「……内側?」

「はい、彼はそこに隠すようにして鞭を仕込んでおりました、腰にも巻きつける形でね。勿論護衛用の装備品と考えられなくもないですが、ハラグライはそれとは別に片手で扱える程度の短槍も携帯しておりましたので」

「……鞭に短槍、確かに妙な組み合わせ」

「でも、なんで短槍なんだろうね~」

「セワスール様によると、ハラグライは片腕を負傷してから以前のように長槍は扱えなくなったようです。なので片手でも扱える短槍を武器として選んだのでしょう。それに護衛目的であればこれぐらいの武器の方が取り回しは良いでしょうからね」


 ナガレの考えにビッチェは顎を引き。


「……それは理解出来た。でも、それならなおさら鞭は理解が出来ない」


 不可解そうにそう述べる。だが、フレムはそんなことはないんじゃないか? といった様相でビッチェをみやり口を開く。


「なんでだよ、鞭は鞭で使い分けてるかもしれないだろ?」

「ですが、服の内側に隠していてはいざという時にすぐには取り出せませんからね。つまりメインで扱ってるのはあくまで短槍、鞭はそれ以外の用途で携帯していると考えられます」


 フレムの疑問に答えたのはナガレだ。そして確かに護衛目的とするならすぐに取り出せないようなものは意味がない。そしてそうなると別の用途というのは――


「あ! そっか! つまりその鞭こそが迷宮で見つけたオーパーツで――」

「魔獣を操る力が備わっているわけですね……」


 ピーチとローザが同時に声を上げる。魔獣を操るのに鞭というのもなんともしっくり来る話でもあるだろう。


「ふぇ~でも魔獣を操れる鞭なんて凄い物があるもんなんだね~」

「……オーパーツにはまだまだ未知の力が秘められた物も多いと聞く」

「でも先生! これで大分見えてきましたね! つまり黒幕はアクドルクで森で魔獣を操っていたのはハラグライと!」

「そうですね。更に言えば魔獣の森に魔獣がまた増え始めたというのも彼らの所為によるものかもしれません」


 ナガレの考えにやはり驚きを示す一同である。


「う~ん、でもなんでわざわざ?」

「元々の目的は奴隷商人の販路として利用させる為だったからでしょう。魔獣がいるような森は冒険者だって忌避いたしますからね」


 確かにナガレの発言は、あの時冒険者ギルドの受付が語っていたことからも納得がいくものだ。

 魔獣の森に魔獣が増え始めたことで魔獣討伐の依頼書は上がっていたが、誰もそれを請けようとはしていなかったのだから。


「う~ん、でもだったらなおさら、どうしてわざわざあの時アクドルクは自分が手配した商人を殺させるような真似をしたんだろね?」

「それは、これまでの出来事と今の話を合わせて考えてみると読めてきますね」

「これまでの話? え、え~と」


 ナガレの発言にピーチが頭を搾り始めた。必死に唸っている。


「先ず、奴隷商人が死に、その結果何が起きたかというところですが」

「アンや他の獣人の奴隷が助かった?」

「……それもある、でも同時にオパールの領地でしか採れない宝石が奴隷商人の馬車から見つかった」

「あ、そうか、それでオパールに疑いが掛けられたんだものね」

「はい、それに、あの時魔獣の森に私達が行くことを許可してもらった結果、アクドルクは私達を助けるという名目で騎士団を動かす事となりました」

「……その結果、宝石は一時的に騎士団の手に渡った。それに魔獣の森に向かったことで奴隷商人の馬車に宝石があったという証人にナガレや私達がなってしまった」

「え? ということは私達はまんまと利用されてたわけ?」

「……そういうことになる。尤もナガレは、その利用されていたことすらも逆に利用しているようだけど」

「え! そうなのナガレ?」

「いえいえ、それは買い被りすぎですよ」


 ナガレは謙遜してみせるが、ビッチェは確信をもっているようだ。尤もそのことに関して徹底して否定するような真似もナガレはしないが。


「……でもナガレは縁結びの事も看破した。私の予想では、オパールやエルガについてもアクドルクの縁結びは関係していると思う、だけどナガレにはそんなものが通用するわけがない。でも、きっとナガレは判ってて敢えて乗ってきている。そう、思う」

「そうですね、何か妙な力が働いていることは判りましたが、ですがすぐに害があるようなものではなかったので、最初の段階では気にしてなかっただけですよ。こうみえて結構不精なもので」


 ははっ、と軽く笑いながらナガレが答えた。その会話に驚きを隠せない他の面々である。


「な、何かとんでもない会話をしている気がするわね……」

「う~ん、ナガレっちには、どんなに希少で強力な能力でも全く関係ないみたいだね~」

「当然だ。先生に縁結びなんて小賢しい力が通じるわけ無いだろ」

「なんであんたがそんなに得意顔なのよ」


 何故かドヤ顔を見せるフレムにすぐさま突っ込むピーチである。


「ですが、その話でいくと、アクドルクの目的はエルガ様とオパール様を貶める事、しかも奴隷商人の命を犠牲にしてまで――一体なぜそこまでするのでしょう?」

 

 話を聞いていたローザが怪訝な顔つきで気になっていたであろうことを口にした。確かにアクドルクの真の狙いが掴めなければここまでする理由が判らないだろう。


「アクドルクの最終目的がもっと大きなところにあるからでしょう」


 だが、どうやらナガレは既にその答えが見えているようだ。


「……つまり、その目的の為にオパールとエルガを利用している? 一体あいつは何を狙っている?」


 そしてビッチェもやはり気になっているようであり、ナガレの解答を待ち望んでいるようだ。


アクドルク側(・・・・・・)の目的は、帝国から非合法に奴隷を手に入れていたことと、そして王国側が調査に乗り出し始めたと知り証拠を消すために帝国の一つの町を壊滅に追いやったこと、これらの責任をエルガとオパールに全て被せ、領主の座から引き摺り下ろし爵位も剥奪させること――これが第一の目的ですね」


 そして導き出されたナガレの答えに、一行は驚きを隠せない様子だ――

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