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レベル0で最強の合気道家、いざ、異世界へ参る!  作者: 空地 大乃
第四章 ナガレ激闘編

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第一一九話 それぞれの想い

「ガッハッハ! この俺があのデススパイダーを倒したワキヤークだぜ! この鉱山を救ったのも俺の力があったからこそ! これからは俺のことを蜘蛛倒しのワキヤークと呼んでくれよ? ガッハッハ!」


 鉱山の魔物が変異種を含め全て殲滅され、見事アロンへと凱旋を遂げた冒険者一行。

 そんな中でも尤も燥いでいたのはまさかの活躍(?)を見せたワキヤークなのであった。


「おいおいマジかよ。まさか先遣隊が解決しちまうなんてな」

「でも素材や核も持ち帰ってるしマジみたいだぞ」

「大量の魔物に変異種もいたってのにな」

「そこは流石は鋼の狼牙団ってとこだろ。ハンマ最強との呼び声も高いわけだしな」

「いや、それがなんでも変異種を倒すのに一役買ったのはそいつらじゃないらしいぜ」

「は? え、じゃあだれだってんだよ?」

「え~と、確かピーチっていう魔術師と、後はあれだな最近は随分丸くなったっていう暴れ火のフレム」

「それと――」

「あのワキヤークか……」

「いや、そもそもあいつ誰だよ?」

「俺が知るかよ! あんなのいたっけか?」

「し、知らん――でも変異種を倒したぐらいなんだから」

『きっとすげえ冒険者なんだろうな』


 そんな声の中、いまいち納得のいかない顔をしているのはモーホであり、カイルとローザは苦笑。


 そんな彼らの姿を見ながらニューハは。


「ま、まあ間違ってはいないですしね。それにあの方のおかげで助かったのも事実です」

 

 そんな事を口にした。感情的にはモーホを納得させる意味合いが強かったようでもある。


「チッ、調子に乗ってんじゃねぇぞ。話を聞いたらそんなの運みたいなもんじゃねぇか」

 

 そんな中、やたらと嬉しそうなワキヤークを眺めつつ、バットウが悪態をつく。

 すると、おや? とわざとらしくワキヤークが声を上げ、バットウに近づき。


「なにか聞こえたかと思えば、これはこれはAランク冒険者のバットウじゃないか! いや~今回の任務中々大変だったよな。うんうん、あ、そういえば――」


 え~と、と、これまたわざとらしく大げさな素振りで腕を組み首を捻り。


「はて? そういえばバットウは今回変異種を何体倒したんだったかな?」

「……クッ! 〇だよ……」

「え? え? よく聞こえなかったな~もう一度?」


 片手を耳に当て、バットウの顔に耳を近づけ、小馬鹿にするように聞き返すワキヤーク。

 バットウの額には青筋が浮かび上がりピクピクと波打ち、肩もプルプルと震えていた。


「……〇だって言ってんだろ――」


 えぇええぇええぇえぇええ! と背筋をピンっと伸ばし、踵立ちで器用に身体を斜めに傾けながら、やはりわざとらしく驚いてみせるワキヤーク。

 そのやりとりに周囲からくすくすという笑い声が漏れ始めていた。

 

「う、嘘だろ、まさかあの! Aランク冒険者が集うハンマ最強の呼び声も高い鋼の狼牙団のバットウが! あれだけ俺達の前で威勢よく啖呵を切り! 他の冒険者を邪魔だといいのけ、俺達だけで鉱山の魔物なんてすぐにでもぶっ倒してきてやる! と明言していたお前が、変異種を一体も倒せず、なんなら他の冒険者にピンチを救って貰ったなんて!」


 ワキヤークの言い方は普通であれば顰蹙を買いそうなものだが、鋼の狼牙団の(主にバットウだが)の傲慢さに嫌気がさしていた冒険者が多いこの場ではむしろ、いいぞもっとやれ! という気持ちで見ているものが殆どだ。


「あれれ~? もしかしてお腹でもこわちてたんでちゅか?」


 そして指を咥えてのこの言い方が止めとなった。

 バットウの顔が真っ赤に染まり、プチンっと何かが切れたようなそんな空気を滲ませ。


「テメェ――いい加減にしろよゴルァ!」

「ちょっとやめなさいよ!」


 柄に手を掛けるバットウと、思わず、ヒッ、と声を上げるワキヤーク。

 しかし二人の間にピーチが割り込んだ。ちなみに庇ったのはワキヤークである。


「全く、無事事件も解決したのに何やってるのよ。本当あんたもこりないわね!」

「グッ、こ、ここまで馬鹿にされて黙ってられるかよ!」

「そんな事言ったって、あんたが変異種を倒せなかったのなんて事実じゃない。だいたい私達に向けて自分が何言ったか忘れたの? それなのにちょっと言われたぐらいでキレるなんて、ほんっと! 穴のの小さな男ね!」

「んぐお!?」


 身を仰け反らせ固まるバットウ。どうやら地味に傷ついているようだ。

 すると、ぽんっ、とワキヤークがピーチの肩を叩き。


「いやあ流石、俺と同じく(・・・)変異種を倒しただけあるぜ。しかし嬢ちゃん、俺に惚れちゃいけないぜ?」

「……え? いや、なんでそうなるの?」

「皆まで言うな! 皆まで言うな! 俺をここまで庇ってくれたのは嬉しい。もちろん俺を好いてくれている気持ちもわかる。だがいけねえ、何せ俺には愛する妻も娘もいるんだ!」

『えぇえええぇええぇええぇえええぇえええ!』


 その発言に周囲の冒険者が一様に驚いた。


「……え? ナニコレ? 私なんで振られたみたいになってんの?」

「いやあそれがよ、うちの女房も出来た女でな。娘も今年四歳になったばかりでこれがもう可愛いのなんの!」


 怪訝そうに眉を顰めるピーチだが、ワキヤークは全く話を聞かず、なぜかそのまま延々と彼の惚気話に付き合わされてしあうピーチなのであった。





「ちょ、ちょっと……」

「あん? なんだ巻き貝アナル?」


 何やってんだあいつら? という顔をしながらピーチ達のやり取りを眺めていたフレムにクリスティーナが近づき声を掛けた。

 しかし相変わらずなフレムの発言に、顔を真っ赤にさせ。


「だから! 私はクリスティーナですわ! 何度言わせればわかるのですか!」

「うん? ああ、でもそれ言いづれえんだよな」

 

 クッ! と歯噛みするクリスティーナ。だがこほんっと咳払いし、気を取り直してから改めてフレムに顔を向ける。


「……あ、ありがとうですわ」


 しかし、お礼を述べた直後にはまた頬を染め視線を逸らしてしまった。

 そんな様子をフレムはまじまじと眺めるが。


「ん~? 俺なんかお礼を言われることしたっけ?」

「わ、私の危ないところを助けて頂きましたわ!」


 その言葉に、視線を上げ一考するフレムだが、ああ、あれか、と思いだしたように呟いた。


「……それに他にも、私の事も信じて貰えて、その、ごにょごにょ」


 最後の方がかなり聞き取りづらく、思わず眉を顰めるフレムではあったが。


「ま、でもお前もそういう事が素直に言えるんだな。見なおしたぜ巻き貝アナル」

「な!? だから私はクリスティーナですわ! いい加減失礼ですわよ!」


 目を瞑り、拳を握りしめ、叫びあげるクリスティーナ。

 フレムは一度目を眇め彼女をみやるが、ふっ、と優しい笑みを浮かべ。


「わ~ったよ。クリスティーナだな。でもまあ、お前も今みたいに少しは素直になれば可愛いとこあんじゃん」


 ポンポンっと軽く頭を叩きながらフレムが言う。

 するとクリスティーナの顔は、更に真っ赤に染め上がった。


 そして話はこれで終わったと判断したのか、それじゃあな、と言い残しフレムが踵を返した。


「ま、待ちなさい!」

  

 だが、その背中に向かってクリスティーナが叫びあげ、うん? とフレムが振り返る。


「あ、貴方! 鋼の狼牙団に入るのを許可しますわ! だ、だから私達と一緒にきなさい!」

「……は?」

「だから! 貴方の実力を認めてあげると言ってますの! Aランクのパーティーですわよ! だから――」

「ああ、悪いけどパスだわ」

 

 クリスティーナの中々強引な勧誘を受けたフレムだったが、手を振りながらあっさりと断った。

 それに絶句し、

「な!? どうしてですの! 私達のパーティーに入れるなんてそんな簡単な事ではないのに! 私達のパーティーに入ればもっとやりがいのある仕事に――」

「理由はお前たちと一緒だよ」


 重なる言葉に、クリスティーナが、え? と怪訝そうに口にし。


「今の俺には大切な仲間がいる。カイルとローザというふたりがな。先生と約束したし気づかせてくれたんだ。今の俺にはあいつらが必要だしあいつらにも俺が必要だと信じてる。だからその話は受けられねえし、お前たちだって仲間が大切なのは一緒だろ?」


 そこまで言った後、ニカッ、と少年のような笑みを浮かべ、

「ま、でも同じ冒険者だ。何か困ったことがあれば協力ぐらいはするぜ。そんなわけだから、お互いがんばろうや」


 そう言い残してフレムはローザとカイルの下へ戻っていった。


「……馬鹿――」


 後に取り残されたクリスティーナは俯きながらそう述べる。

 するとその肩に手が乗り、クリスティーナが振り返ると――にやけ顔のゴーリキが立っていた。


「な、なんですのその顔は!」

「え? ああ、いやいやなんでもないさ。ふ~ん、それにしても、クリスティーナがなあ。くくっ、いやいや、まああれだ。落ち込むなって。正式に振られたわけじゃないんだからな」

「な!? 何言ってますの! 勘違いなさらないでよね! あんなデリカシーのない男! き、嫌いですわ! 大っ嫌いですわ~~~~!」


――こうしてクリスティーナの叫び声が夕闇に響き渡る中、アロンでは簡単な宴が開かれ、互いが互いの健闘を讃え合い、その日の夜は更けていく。


 そしてその頃――


「……ナガレ、どうかしたか?」

「え? ああ、いえ。どうやら鉱山の件も無事解決したようだなと思いまして」

「……判るのか?」

「ええ、なんとなくですがね」

「……ナガレ、相変わらず凄い。でも、とりあえず街で宴始まる」

「ああ、そうでしたね。では私も参加させて頂きますか」


 ハンマの街でもやはり同じように危機を救ったという事もあって、勝利の宴が開かれた。

 そして、ナガレは鉱山の方へ顔を向けつつ。


(よく頑張りましたねフレム、それにカイルやローザ、聖なる男姫の皆さんもお疲れ様です。そして、ピーチもしっかり聞こえてましたよ、ふふっ――)


 そんな想いを抱きながら街へと戻るナガレなのであった――

 


鉱山の件もハンマの街の件もこれで解決!

さて、実は割烹にも書きましたが書籍版のイラストが届き拝見しました。

まだ公開は出来ませんが、どれも素晴らしくイメージ通りな仕上がりに。

ナガレのかっこよさも当然ながら女性陣がもう!感動です!

素敵なイラストに負けないよう執筆を頑張らねば!

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