第三十九話 リクエストにお答えして!
バイトが決まりました。
週5です。
働きます、金貯めます、そして使います。
私は今学校にいる。
勿論私はその学校の生徒なのだから、当たり前と言えば当たり前なのだが。
しかし私は、この学校にいる時の時間があまり好きではない。
友達はいるし、勉強もそこそこ出来ている(と自負してる)
しかしそれでも私はやはり好きになれない。
そんな私に近づいてくる女子が一人。
「おやおや、花蓮ッチ?いつにも増して不機嫌そうじゃありませんか!」
「繭」
この無駄にテンションが高い女子は私の友達の櫻田 繭この子とは高校に入ってからの友達だが、毎日いつもこんな感じ。
なんでも、ポジティブシンキングが彼女のポリシーらしい。
髪はショート茶髪、目もクリッとなっていて、歯からはチラッと八重歯が覗いている。
確かこういう女子を可愛い系と言うのだったと思う。
そしてこのクラスのマスコット。
「もしかして花蓮ッチ今日あの日?」
「ち、違う!!!それにそんな事公の場で軽々しく言わないの!」
「そうだよねぇ~、違うよねぇ~、愛しの王子様がこの場にいないから拗ねてんだよねぇ~」
「!!!!!」
私は、その可愛らしい八重歯を覗かせている繭の口を急いで手で押さえた。
私の顔は見なくても分かる、きっと真っ赤になっている事だろう。
私は繭にキッと睨むように目を向けた。
すると繭はニコッとした目を私に向け、それにより私はため息を吐きながら繭から手を放した。
「可愛い反応ですな」
「やめてよ本当に」
「もう、何でその反応がお兄ちゃんの前では出来ないんだろうね」
「だってしょうがないでしょ!お兄ちゃんを前にすると無意識にああなっちゃうんだから!」
私は若干涙目になりつつも必死に弁明した。
「ふむふむ。お兄ちゃんを前にすると、ツンデレ花蓮ちゃんになってしまうと……………」
「うぅ…………」
すると繭は私の机に座り込んだ。
自然に私は上を見て繭は私を見下ろす形になった。
「お兄ちゃんの事、気にし過ぎなんじゃないの?」
「そうなのかなぁ?」
私は視線を、繭から机に乗っけている手に向けた。
私の事お兄ちゃんはどう思ってるんだろう。
きっと私の事すっごく嫌な奴だって思ってるだろうなぁ。
ああ、愛しのお兄ちゃん。
いつになったら私の事も愛してくれるの?
「まるで私が発言したかの様に言わないで」
「ひひ、あながち間違いじゃないでしょ?」
繭はさも私がそう思ったかのようにデタラメを言う。
しかしその顔はまるでイタズラが楽しくて仕方がないといった顔だ、ムカつく。
私はせめてもの復讐に机に乗っているそのお尻にお得意のパンチをお見舞いしようとした。
「せいっ!」
「よっ!」
しかしまるでその行動が読まれていたかのようにスルリと繭は私の机から降りる。
しかもドヤ顔付きで。
「甘い甘い!花蓮ッチの考えなんてお見通しだよ!」
「くぅぅ!」
私は握りこぶしを作って、繭の事を憎々しげに睨みつけた。
しかし、そんな行為も彼女は喜びの対象らしく、対照的に繭の顔には笑顔が広がっていく。
本当に何を考えているのかが分からない。
「こらこら繭、あんまり花蓮をいじめてやるな。あまりからかうとまた口をきいてくれなくなるぞ。それより花蓮、今度家に来ない?」
この少し男っぽい(まあ私もお兄ちゃんを前にすると男っぽくなるんだけど)喋り方をする女の子は、私のもう一人の小学校の頃からの友達。
雨宮 時雨。
時雨は代々武道の御家柄で、現当主の娘。
その体つきからは考えられないほどの力を持っていて、それでいて実はかなりの乙女。
実は昔、一回だけ本気で喧嘩した事があるが、その時は結果引き分けに終わった。
それがあり、私と時雨はお互いを称えあい、そこから友達になっている。
そして、こうして繭が私をからかう役なら、時雨はそれを止める役だ。
繭が私をからかうと、毎回時雨がそれを止めてくれる。
「も~~時雨ッチ!私は別に花蓮っちをからかってなんかいないよぉ!たんなるスキンシップだよ!愛だよ!」
「スキンシップならスキンシップの限度を覚えなよ。知らない人が見たら繭がやってる事はいじめと勘違いされるぞ?現に何回かそういう事あったろうが」
「うぐ!そこを突かれると……………イジメ!ダメ!絶対!それゆえ少し自重致します」
「うむ、よろしい」
そうなのだ、繭はこのキャラで今でこそこの私たちがいるマスコット的存在になってはいるが、初めからそうだった訳ではない。
繭は当初周りの人間からどっちかというと嫌われていた。
このあれこれ構わず限界を知らぬ物言いから、若干周りから引かれていたのだ。
そこで、まあ色々あり、私が繭の誤解を解いてあげ、そこから繭は私と友達に……………っていうか懐いた?
あと小さい。
「もう、花蓮ももう少しこの頭お花畑に抵抗を持つべきだよ」
「ごめんね時雨、やっぱりあなたがいてくれて助かるわ。脳内お花畑の相手は疲れちゃって」
「あれ?私なんか馬鹿にされてない?されてる?されてるよね?ふ~~んあっそう!そういう事言っちゃうんだ………」
繭はにこやかに話している私たちをジト目で腕を組みながら見てきた。
彼女がこういう顔をする時も必ず面倒くさい事が起こる
実は、繭は他にもある一点について周りから恐れられている事がある。
それは情報力。彼女、櫻田繭は大抵何でも知っている。
赤点は取るし、掛け算三桁になると頭がショートする彼女だが、その情報量だけは誰にも負けない。
しかも当人が知らない事実を彼女が知っている事も驚きだ。
そしてお金を払えば、それに見合った情報をくれるらしい。
これを繭セキュリティーと言うらしい。
中には大金をはたいて、繭にテストの範囲を聞いた生徒がいたらしいが繭に「それはお断り!」と言ってその大金を返したらしい。
なんでも「私が教える事は私が許容できる範囲まで!」が彼女の掟だとか?
とにかく簡潔に言えば彼女は、何でも知ってる。そう言う事だ
それゆえ、私達は少々焦った。
「ま、繭。違うよそのお花畑って言うのは……………そう!美しいって意味。穢れを知らない美しい考えの持ち主って意味!ね、時雨!」
「あ、ああそうだな。そうだぞ?穢れを知らない繭の考えは素晴らしいなと褒めていたんだ」
あははーーと乾いた笑みを私と時雨で浮かべていると、さっきまでジト目を向けていた繭の顔がさっきとまるで違う花が周りに咲きそうな無邪気な笑顔を見せた。
その笑顔で一体何人の男が落ちた事やら。
「ま、そういう事ならいいんだけどね!」
「「ほっ………」」
私達は嵐が過ぎ去った事に心から安堵し、お互いの肩に手を乗せて無事を確認し合った。
「私どうしたらお兄ちゃんに酷い事せずに素の自分で接する事ができるかな?」
私はいつも思っている疑問を友人二人に聞いてみる事にした。
「う~~ん、難しいよね。まずそのツンデレ花蓮ちゃんを見た事ないからなぁ」
「実は私もなんだ。小学生の頃一度だけ許しを貰って花蓮の家に遊びに行ったけどその頃はまだツンデレていなかったからな。っていうかお前情報通なのにそこは知らないんだな」
「私は友人のプライベートを覗くほど神経腐っちゃいないよ!これぞ友情だね」
「友人じゃなくても覗いてやるなよ。しかし、じゃあどうすれば………………」
二人は顎に手を当てて、考え込むような形になった。
数秒、数分、その位の時間が経った時、いきなり繭が何かを閃いたようにポン!と手を叩いた。
「そうだ!ならさ花蓮ッチのお家に自宅訪問しちゃえばいいんでない?」
「なるほど、確かにな」
繭と時雨の二人は勝手に納得して決行しようとしてる。
それだけは何とか阻止しないと!
お兄ちゃんの事を好きになるなんて私とあの人ぐらいだと思うけど、一応念のために。
私は色々変な汗をかきながらも、二人の眼を真っすぐ見て
「いや、でもまあそこまでしなくてもいいんじゃないかな?」
「どうしてだ?もしかして今更恥ずかしいとか?」
「そう!そうなの!やっぱり二人に私のその部分を見られるのは、ちょっと恥ずかしくて」
「ええ~~いいじゃんか!本当に今更だよ!」
「まあまあいいじゃないか。花蓮が本当に恥ずかしいと言っているなら、それを黙っておいてあげるのが友達だろう」
流石時雨!
私の意をくんでくれる、いい友達だ。
「分かったよぉ。黙ってて上げる」
「ありがとう二人とも」
私は友達二人に感謝した。
これでなんとか家に上がらせる事は阻止する事が出来た。
私は顔は変えなかったが内心心底ホッとしている。
これは来年気をつけなければないけないな。
「そう言えば花蓮ッチて高校は一体どこ行くの?やっぱり花蓮ッチはあの有名高校?」
「そうだな、花蓮の学力ならここら辺の一番有名な南聡高校に行けるんじゃないか?」
「いや、私は南聡高校には行かないよ?」
二人はその私の発言にキョトンとしてしまった。
そんなに私が南聡高校に行かなかったら不思議だろうか?
「な、なんでだ?だって花蓮その為に猛勉強してるんだろう?」
「そうだよ!じゃあ花蓮ッチ何の為に猛勉強してきたの?」
何を言ってるんだろうこの二人は。
私、別に猛勉強なんてした事ないけどな。
二人の発言にキョトンとしている私を見て、今度は二人の顔がまるで「マジかよ」と言ってるように見えた。
「そんなに私が猛勉強してるように見えた?」
「「うん」」
即答ですか。
「だってそうだろ?中学に入ってから一度も一位以外取った事のないのに。
じゃあ、一体どこの高校受けるんだよ」
「そうだよ花蓮ッチ!教えなさい!」
え~~なにこの空気…………ていうか言わなきゃ駄目かな?いや、言わなくたってしつこく聞いてくるだろうなぁ。
この二人なら。
「……………………癪雁高校」
「「……………マジか」」
なんだその反応は、しかも二人仲良く言っちゃって。
癪雁高校は別に悪の巣窟と言う場所ではない。
しかし癪雁高校はあまりいい噂は流れていないらしい。
なんでも変人がかなり多い高校とかで………。
「花蓮ッチ、あそこは駄目だよ、危険だよ。なぜそこまでの力がありながら地獄へ落ちようとするの」
「今回ばかりは私も繭と同意見だ。何故だ?そこまでの成果がありながらそれは勿体ないどころの話じゃないぞ?」
そこまでかな?そこまで反対されるような学校だっけ?
別にお兄ちゃんから聞いてる分にはそこまで酷い高校とは聞かないけどな。
いつも夕食中楽しそうに話すし。
「花蓮ッチもしかして…………………………お兄ちゃん目当てだったりしないよね?」
「ギクッ!」
私は無意識の内にその言葉が出ていた。
あああ!!!これじゃ私がお兄ちゃん目当てでその学校に行くみたいじゃない!
「時雨ッチ!今花蓮ッチ、ギクッ!って言った!今自分の口からギクッって言ったよ!」
「まさかの図星だったとは…………」
「ちちち!違うよ別にそこを受けるのはお兄ちゃん目当てじゃなくて!そ、そうそう学費!学費が安いからそこにするの!そうよ、そうに決まってるでしょ!おほほほほ!」
なんかもう自分でも何を言ってるのか分からなくなっている。
二人共、これは重傷だ。とでも言いたげな目で私の事を見てくる!もうそんなんじゃないのに!
「でも花蓮ッチをそこまでさせる、そのお兄ちゃんってのを見たくなってきたな!!!やっぱり今度花蓮ッチの家に行っていい?」
「だから違うって言ってるでしょ!」
なんでここで再び試練が舞い降りてくるの!しかしまだここで負ける訳にはいかない!
何としてでもこの場は阻止しなければ、そしてそれには!
「時雨!」
「うん?」
「こんな事を繭が言っているよ!」
時雨頑張って!の、他人任せである。
内心私は泣いていた。
だって私じゃあ繭相手に、心が折れかけてしまうんだものぉ!!!
しかし時雨は動きをみせずただただ口を強く閉ざし黙っているだけだ。
どうしたの時雨!あなたの出番だよ!?
「時雨!」
「ああ、いや。まあいいじゃないか繭、別に家じゃなくてもいつか会えるかもしれないしな」
「そうかなぁ?……………あ、そうか!そうだね!」
「ん?どういう事?」
私はその時雨の物言いに何か引っかかりを感じた。
まるでお兄ちゃんと会えるそんな確信があるかのように。
繭と時雨が何をたくらんでいるのかを考えていたら無粋にも私達のクラスの担任がガラッ!と前の扉を開けいつものように教団の前に立つと
「君達!席に着きたまえ!」
と何故か自分の髪をかき上げながら、爽やかに注意する。
しかしその行動に周りの女子はキャーキャー言っている、あれの何がキャーなのだろうか?まあ、確かにキャーと叫びたくなる位のキモさはあるが。
その行為で私は結局あの二人が考えている事は分からなかった。
「それではHRを始めたいと思う!are you ready?」
その言葉にまたキャーキャー言いだす女子。
ちなみに二人は既に自分の席に座り、片方は机に突っ伏し、もう片方はキチッと背筋を伸ばしてHRが始まるのを待っている。
………………私は何気なく天井を見上げた。
今、お兄ちゃん何してるかな?と、思いながら。
今回新たなキャラクター二人を導入しました。
繭・小さい、八重歯がチャームポイント、情報通、ポジティブ、赤点の常連さん。
雨・強い、お譲、勉強そこそこ、愛読本は少女漫画(家から禁止されているが、隠してある)、実はかなり乙女。
花蓮のツンデレをご所望でしたが殆どツンデレが出せませんでした。
申し訳ない!なので後編を作ります、よろしくね。




