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花が綻ぶように少女は笑う

※三人称


 こんなつもりじゃなかったんだけどなあ、と少女は薄く笑った。

 その笑みはあんまりにも艶めかしかったので少年がしばし見とれてしまったのは仕様がないことだっただろう。







 そも、何ゆえ少年は少女とこうして人の少ない喫茶店で語り合っているのか―――逢引なんて可愛らしいものではなく、かといって仕事や部活の一環といった事務的な風でもない。少年こと鈴谷 功は少女こと澪瀬 花耶を弾劾するために呼び出したのだ。やり方が凝られていたために花耶は功からすればのこのことやってきた。そして出会いがしらに花耶によって一人の少女が壊れたことを責めたて、功の思いの丈とやるせなさをぶちまけ、そうして返ってきたのが言葉と笑み。

 ふう、と溜め息をついて目を伏せた花耶からは匂い立つような色気と思春期の少女特有の潔癖な物憂げな雰囲気が漂い、それらが相俟ってけして悪くはないが良くもない顔立ちからは想像もできないほどの美しさを醸し出している。あるいは、その顔の中にあるぽってりとした唇の桃色がそんな気分を起こさせるのではと功は一時憎悪とはまた別の、いわゆる欲情を抑えることに腐心することになっていた。二、三度瞬きをしてから花耶はその様子に苦笑して紅茶に口をつけてからゆっくりと話し出した。



「―――君は何か勘違いしているようだけれど、私は別に彼女を嵌めようだなんてそんなことは一度たりとも考えたことはないんだよ」



 首を傾げたのにつられて揺れる髪がわざとらしくて功はカッと頭に血が上るの自覚する。



「っ月視が!月視がうそをついたって言うのか!」

「そうは言ってないよ、ただ、誤解があるんじゃあないかなとは思ってる。だって私ほんとになにもしてないし言ってないもの。彼に何かを吹き込んだりなんて・・・そもそも、今回のことで彼と月視さんが幼馴染だって知ったくらいだし」



 ほう、と溜め息をついて花耶は目の前の功を見据える。功は知らないが、仮に、もし仮に真実花耶が月視 卯歌を嵌めたのだとしても真っ先に他校である花耶の名前を挙げたことに何も思わないのだろうか?彼女は実際に何もしていないが、世間一般から見て卯歌に”復讐”するだけの動機はある。別段花耶としては復讐するような過去でもないが、それをちょっとくらいは聞かせてもいいかな、と内心舌なめずりをする。彼女を嵌めた卯歌ほどではないが、花耶もけして善良な人間でもない。今更取り巻きの一人や二人減ったところでたいしたダメージもないだろうし功が信じるかもわからないのだから―――まあいいよね、月視さん?心の中で問いかけて花耶は表情だけは穏やかに取り繕った。



「そうだね、なにから話そうか―――私は何もしていないけれど、そうだ、私と月視さんの因縁からお話しようか。それを聞いてからやったかやってないか、私を責めるかどうか、決めれば良い」



 ふふふ、と控えめに笑って花耶は功の怪訝な顔を無視して語りだした。

名前の読み


澪瀬 花耶 (みおせ かや)

鈴谷 功 (すずや こう)

月視 卯歌 (つきみ うか)

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