若人諸君、ジョン・ウェインは偉大なのだよ。
日本人の第二次世界大戦にまつわる映画というと、だいたい舞台は太平洋だ。
中国を舞台にするものは少ない。
理由は簡単で、中国相手の戦いには日本は勝っているからだ。
観客は日本人がジャングルの洞穴にこもり、火炎放射器で丸焼けになったりする絵を欲しがっている。司令官たちの無能のせいで玉砕を強いられる日本兵の絵を欲しがっている。
だから、日中戦争は映画になれないのだ。勝っているから。
精神論の問題でも蒋介石が勝っている。日本と戦争が始まって負けまくると、蒋介石は自分のヘマであることをすっかり忘れて、『新生活運動』という奇妙なキャンペーンを始める。
戦争に全力を出せ、質素な生活をしろということだが、そのなかに水で顔を洗えというのがある。
日本兵は水で顔を洗うが、中国兵はお湯で顔を洗う。日本兵を見習え!というわけだ。
実は中国でも日中戦争を舞台にした映画には制約がある。
その内容は日本が太平洋戦争を舞台にした映画を好むのと同じで、日本兵にやられるかわいそうだが愛国的な中国兵を描けというもの。
謎の武術や超能力美少女のおかげで日本兵をバッタバッタ薙ぎ倒す映画が出てくると、なんと中国人の口から歴史を捏造するなという非難が出てくる。そして、そんなに中国が勝っているなら、なぜ中国は東京を占領できなかったのかという答えようのない問いが出てくる。素直に中国軍が勝てなかったからですとは口が裂けてもいえない以上、滑稽なまでの勝利映画を安易に流すわけにはいかないのだ。
ちなみにアメリカは流す。
真珠湾攻撃の映画でジョン・ウェインが出たりすると、真珠湾の後、架空の海戦での勝利が描かれる。
まあ、ジョン・ウェインはそれだけ偉大だということだ。彼はアステカの祭壇に生贄を捧げずに太陽と方角を操ることができる。
ベトナム映画『グリーンベレー』ではラスト、ジョン・ウェインは海に沈む夕日を眺める。
ベトナムで海に沈む夕日を眺めるのだ。
『グリーン・ベレー』はインディアンをベトコンに変えただけのアメリカ万歳映画で評価はめちゃくちゃ低いけど、いつどこから敵が襲ってくるかわからない緊張感はすごくあった。




