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クールな白刃さんはデレで殺す  作者: アオカラ
第一章 二人の数奇な出会い
25/81

第25話 母の日


「あっ」

「あら」


 相手の姿を見つけて、つい声が出てしまう。5月の第二日曜日に花屋で何かを探しているということは、それはつまり母親に向けて何かを送ると予測していい。今日は母の日。見かけたのは白刃さんだった。


「これはこれは、あきと君はお花を贈るのでしょうか。美男イケメンですね」

「いやいや、白刃さんの方こそお母さん想いだよね」

「それはまぁ、私はお母さん大好きっ子ですから」

 意外だ……。というか子が子だしお母さんも美人さんなのかな。

「せっかくですし、お花に詳しいあきと君にチョイスして頂くのも良いかもしれませんね」

「責任重大だ……間違っても『カーネーションで良いんじゃない?』とか言えないなぁ……」

「心の声漏れてますよ」

「聞かなかったことにしていただければ」

 軽いやり取りだけで楽しい。休日で知り合いと出会うイベントは、白刃さんだとかなりポイントが高い。

 ショッピングモール内のお花屋さんを一緒に見て回る。今日の白刃さんはブラウスにロングスカートで落ち着きがありながら女性らしい私服姿だった。何でも似合うね、あなた。


「あきと君?」

 やば、今の心は声に出てないよね。

「ど、どうかした?」

「花言葉で選ぶべきなのでしょうか、それとも見た目で選んだ方が良いですか?」

「うーん、ぱっと見でなんの花か分かるようなら良いんだけど、人って色とか形を見るしなぁ」

「なるほど。美しい見た目でもその裏に『あなたを殺す』みたいな花言葉が付いていたら不穏かなと思っていたのですが」

「あはは……まぁ不穏な花言葉はいっぱいあるしね。『病人に植木鉢』みたいなポピュラーなやつでもないなら、見た目の華やかさで選んでいいと思う」

 ちなみになぜダメかと言えば、『根を張る』が『寝付く』や『病気が根付く』を連想させるから。


「じゃあ、やっぱりアマリリスにしましょうか」

「やっぱりってなんですか! 僕を見て連想したからとかですか!?」

「何も言ってないじゃないですか、私はあきと君の手口でお母さんを口説き落そうとしているだけですよ」

「心の声漏れてるー!?」


 どうやら考えが言葉の節々に表れるのは僕だけではないらしい。そして本当に彼女はピンク色のアマリリスを買っていた。色まで合わせてくるところが良い性格してるよ。きっとお母さんにお花を渡す時、僕の話で楽しく盛り上がるんだろうなと考え、恥ずかしくて死にたくなってくる。


「あきと君は何か買うのですか?」

「まぁ、そうだね」

「なんというお花ですか?」

「……無難にスイートピーです。母親の好きな花でもあるから」

「そうですか。何が好きなのかを知っているのは大きいアドバンテージですね」

「はは、父親が告白する時に送ったってエピソードを何回も聞かされてたからねー」

「あらそれは、いいお話じゃないですか」

「それを惚気で言ってくるんだから聞かされる身としては辛いよ……」

「いい家族ですね」

「そうかなぁ?」


 花屋で買い物を済ませたら、それぞれの予定のためにも早めに解散となる。


「じゃあまた学校で」

「はい、また」

 僕らはさらりと挨拶を済ませ、足早に帰路へ向かうのだった。


 *


 小さな額に入れられたその写真に写るのは、歳で見るとおよそ20代後半の女性。仏壇の前に飾られ、佇むその人は小さく微笑んでいる。飾り気のない、自然な微笑。撮った相手に気を許しているからこそ浮かべられる、慈しみのある母の表情。

 その手前に花を飾る。子供が母親の事を想い買ってきた供え物に、喜んでいるようにも見える。

 合掌し、深く追悼する。母の日は元々、故人となった母親へ敬意を送るための日として作られた。ずっと昔に亡くなったその人を忘れることは、無い。


「お母さん。ありがとう」


 発する言葉はそれだけに留まる。

 それ以外は、心の中で思う。

 故人に「いつもありがとう」とは言えない。「いつも助かっている」とも言えない。

 それでも、「心の中に居てくれてありがとう」だけは、言える。

 母親を想う日なら、母の日なら、多少恥ずかしくても包み隠さず言える。

 第二日曜日は花を添えて、静かに流れていった。

こちらにて第一章が終了となります。


ここまで読んでもらえたあなたに、心から感謝します。

是非この続きもお楽しみください。

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