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ギルドは本日も平和なり  作者: ナヤカ
問題だらけのギルド編
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八十二話 新たな問題

ギルドに戻った俺は、すぐさま過去にあった『ランク外侵入』を調べた。その問題の原因を知るため、今までのデータを調べるのは初歩的な事なのに、それすら俺はやっていなかった。


同時に、ランク外侵入をしてしまった冒険者の履歴なども、夢中で調べる。



「…やはりそうだ」


仮説は間違っていなかった。ランク外侵入をしてしまった冒険者は全て、何らかの理由でパーティを解散した直後、または半年以内にランク外侵入をしてしまっていた。

そもそも冒険者が、自分の知らない未知なる階層に、何の考えもなく入るわけがない。入っても生き残る打算があるから、ダメだと分かっていても入ってしまうわけだ。つまり、一度目はパーティを組んでいたためランク外侵入にはならなかったが、二度目はその適正条件を満たせずに入ったためランク外侵入になった。そういうパターンが全てだった。



ランク外侵入は、仲間を見つけられずパーティを組めなかった冒険者の最終的なやり方だったのだ。


そうなると話は随分変わってくる。やらなければいけないことは、システムの改善でも、規制でもなく、冒険者がパーティを組めるように支援することだからだ。


さて、その方法をどうするか……だが。

俺は一旦休憩をしようと思い、冒険者管理部の部屋を出た。扉を開けると、そこには何故か、セリエさんとエルドが立ち話をしていた。


「お!やっと出てきたかこのバカ野郎」

開口一番、エルドから罵声を浴びる。え?なんでだよ。

「いきなり凄い勢いで出ていったと思ったら、また凄いで帰ってきて、今度は夢中で何か調べて……テプトくんは本当に身勝手な人ね?」

セリエさんも言葉尻にトゲを混ぜてくる。なんなんだ!一体!

「しかも、毎回騒ぎを起こしやがって。お前、セリエさんにまだ謝ってないだろ?」



「ーーーあ」


エルドがため息を吐いた。

「その様子じゃ忘れてたみたいだな?お前、ギルド内で冒険者を殴り飛ばしたらしいな?ギルド内ではその話で持ちきりだぞ?」


本当に忘れてた。


「説明してくれる?さっきから、『あのギルド職員はなんだ?』っていう喧嘩腰の問い合わせが冒険者からあるのよ。今はなんとかごまかしてるけど、直に問題になるかも」


「この様子じゃ、遠からずギルドマスターの耳にも入るぞ?まったく、お前は事あるごとに自分の首を締めていく奴だな?敢えて言わせてもらうぞ?おめでとう!これでまた君は一歩、解雇への道が近づいたわけだ」

冗談を言うエルドの目は笑っていなかった。

そこまで大事(おおごと)になってるのか。……これはまずい。

「セリエさん、先程はすいませんでした。冒険者を殴ってしまったのは俺が未熟なせいです。カッとなってしまいました」


「それ、まんま犯罪者の言葉よ?理由は?」

セリエさんは呆れたように言った。


「理由は……すいません。言えません」

言えるわけがない。話すには、カウルとソフィアの個人的な問題に触れなければならない。本人たちの承諾もなしに、そんなこと出来るはずがない。


セリエさんはため息を吐いた。

「そう言うと思ったわ」

「な?やっぱり予想は的中しただろ?」

エルドは俺がそう言うと予想していたらしい。

「えぇ、これで分かったわ。テプトくんは本物の馬鹿だったのね」

うっ……言い返せない。


「まぁ、でも良いわ。殴った冒険者はカウルくんよね?その事はこっちで何とかしておくから、テプトくんは『ランク外侵入』の件にだけ集中して」

諦めたように言い放つセリエさん。

「本当にすいませんでした」

居たたまれなくなり、もう一度頭を下げる。

「別に良いわ。テプトくんが何の理由もなしに、人を殴るような人じゃないことぐらい分かってるもの。それに、こんな時こそ誰かを頼って欲しかったから、内心嬉しくも思ってるの」


「もしもお前の首が繋がったら、それは多分セリエさんの功績によるところが大きいかもな?」

エルドが、からかい混じりに言う。

「まぁ、私の実力を見せるときが来たってことね?」

どや顔で腕を組むセリエさん。その姿が妙におかしくて、思わず笑ってしまった。つられてセリエさんも笑いだした。自分でやってておかしくなったのだろう。エルドも笑いだした。

こんなに窮地に立たされていても、人って笑えるんだな?そんな馬鹿な事を思ってしまった。いや、こんな窮地だからこそ、少しの事がとてもおかしく思えるのかもしれない。


「そうだった。これから、企画部部長の所へ行こうと思ってたんだ。お前も用事があったんだろ?」


エルドに言われて思い出した。

そうだった。ランク外侵入を防ぐ魔法がないかを相談しにいくんだったな。

「もちろん俺も行きます」

「よし、すぐ行こう。ちょっと準備してくるから待ってろ」

「じゃあ、私は仕事に戻るわね?」

セリエさんはそう言って階段を下りていった。エルドは安全対策部の部屋に戻っていった。



その後、エルドは本当にすぐ戻ってきたのだが、その腕には長方形の大きな箱を持っている。

「なんですか?それ」

「開発中の魔武器だ。これの相談に行くんだからな?」

なるほど、そういう事か。

「そういえば、ランク外侵入を防ぐ糸口が掴めましたよ」

「なに?本当か!とりあえず闘技場に向かいながら話そう」


そして俺とエルドはギルドを出た。向かうは町の真ん中に位置する闘技場。なんだかローブ野郎に会うのは、とても久々のような気がする。



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