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境界譫  作者: 紗遮
第二章

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第七話

公園の広場を横切ろうとした時、植え込みの奥にひっそりと佇む古い石造りの碑が目に留まった。


それは背の低い、黒ずんだ石碑だった。表面には何か文字のようなものが彫られているようだったが、長年の風雨に晒されたせいか、あるいは夢特有の曖昧さのせいか、どれだけ目を凝らしてもかすれて読むことはできない。


「こんなところに、石碑なんてあったっけ……」


毎日ではないにしろ、何度も通りかかっている公園だ。しかし、現実のこの場所にこんなものがあったかどうか、記憶を探ってもはっきりとしなかった。慰霊碑か何かのようにも見えるが、特別大きなものでもないし、普段は気に留めていなかっただけかもしれない。


僕は特に深く考えることもなく、その石碑から視線を外し、公園の出口へと歩き出そうとした。


その時だった。


視界の端、公園の入り口にある街灯のふもとに、ぽつんと「人影」が立っているのが見えた。


「え……?」


僕は思わず足を止めた。

この世界に入ってから、初めて目にする自分以外の他者だった。誰もいない孤独感に押し潰されそうになっていたせいか、最初は「誰かいた」という安堵感が胸に広がった。


しかし、その安堵は一瞬で消え去り、代わりに冷たい悪寒が背筋を駆け上がった。


何かが、決定的におかしい。


その人影は、微動だにせずこちらをじっと見つめているように見えた。距離にして数十メートルは離れているはずなのに、なぜかすぐ目の前にいるような、奇妙な距離感の狂いを感じる。

さらに、街灯の光を浴びているはずなのに、その人物の顔の輪郭が陽炎のように歪んでいて、表情がまったく読み取れなかった。


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