第五話
誰もいない商店街を、僕はあてもなく歩き続けた。
閉ざされたシャッター、無人のまま明かりだけがついた自動販売機。歩けば歩くほど、現実の神座市をそのままコピーして作ったレプリカの中に放り込まれたような、奇妙な感覚が強まっていく。
しかし、駅前を抜けて住宅街の方へと向かうにつれ、風景のあちこちに奇妙な「歪み」が混ざり始めていることに気づいた。
「あれ……あそこって、確か先月取り壊されて更地になったはずじゃ……」
角を曲がった先には、去年の夏に閉店し、今はもうこの世に存在しないはずの古い駄菓子屋の店舗がそのままの姿で佇んでいた。かと思えば、そのすぐ隣には、現実世界では来年完成予定であるはずの最新のタワーマンションが、まるで昔からそこにあったかのようにそびえ立っている。
数年前のデザインの古い看板と、まだ誰も住んでいないはずの新しい建物が、何の一脈の脈絡もなく隣り合って並んでいる。
時間がごちゃまぜにかき混ぜられたような、支離滅裂な光景だった。
「まあ、夢なんだからこれくらい普通か。夢の整合性なんてそんなもんだしな」
頭のどこかで奇妙な違和感を覚えながらも、僕は自分にそう言い聞かせて納得した。夢の中で見る景色が多少おかしくなっていたところで、深く気にするようなことではない。
足を進めるうちに、僕は見慣れたエリアへと辿り着いた。昼間、美玖や芽衣先輩とその近くの話題を出していた、ひばりヶ丘公園だ。
中に入ると、やはりここにも人っ子一人いなかった。錆びついたブランコが、風もないのにわずかに揺れているような気がして、僕はそっと目を逸らした。




