第一章 1話 始まり
「何処にあるのかしら?」
とある王国の夜の城下町、一人の少女がフードを被り、辺りを見ながら彷徨っていた。特徴的な金の腕輪が左腕に身に付けられていて、右手の甲には赤い花の紋様が、手のひらに微かな炎を浮かばせ、それを頼りに進んでいる。
背後から足音が聞こえた。しかし、心配する必要は無い。自分を信じ、後ろへ振り向く。
足音の正体は猫だった。黒い体毛の
「にゃぁ」
と可愛らしい声をあげて、こちら側へ近づいてくる。炎を空中に固定し、こちら側も手招きをして猫を誘う。
猫が擦り寄ってきた。頭、顎、首筋、順番に撫ででいくと、どうやらすぐに心を開いてくれたようだ。小さい頃から動物の扱いには手慣れている。この程度は造作もなかった。
「またね」
と声をかけてから同じ道を進んでいく。ところだった。自分の左腕に目をやると、つけていたはずの腕輪が無いことに気付いた。それは、今は亡き母親から貰ったものだ。
無くなった原因はすぐに分かった。猫だ。さっきまで戯れていたあの
すぐに道を引き返す。幸い、そこまで遠くにいなかった。その猫にはさっきまで無かった金色の首輪、いや腕輪がある。だが、すぐに逃げていってしまった。当たり前だ。懐いていたとはいえ、さっき出会ったばかり信頼もクソもない。
もちろんそのまま見送るわけにはいかない。すぐに追いかける。
しかし、厄介だ。思っていた通り猫はすばしっこい。ぴょん ぴょんと軽やかに石の塀を飛び移っていく。追いかけているうちに細い道へ入っていく。進むのが難しい、服も汚れる、最悪だ。
「はぁ はぁ...」
膝に手をつき大きく息を吐く。猫の行方を目で追う。すると、ある店の壁に溶け込んで行った。この表現は間違いではない。建物の影にそのまま溶け込んだのだ。まるで影と一体化するように。
上を見上げる。
「ここは...」
そこには看板があり、もちろん文字も書いてある。
『何でも屋』と
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