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魔術的鍵師物語  作者: mono
第八

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86/119

拠り所‐ななつめ

 早朝、アスカが目を覚ます。外は儚げな明るさをしている。


「おはようございます。」


 アスカは、リビングへと向かう。

 既にヴァーゼがなんてことなと家事をしている。


「おはよう。ごめんなさいね、昨日はいつの間にか寝ちゃってたみたいで、ホント、ありがとうね。」


 アスカは、首を振りながらいえいえと、瞳を閉じる。


「アスカさん朝ごはん?用意するわよ。」


「えっ・・・本当ですか?いいんですか?じゃぁいただきたいかな、なんて・・・へへ」


 そうするとしばらくして、緑と赤の挟まれたパンが出される。そしてコトっと昨日見たコップが置かれる。

 アスカは一口すする。真水それは朝にはありがたかった。

 すっと冷たさが喉を通り、目覚めとは何たるかをアスカに教えていく。

 潤い、際立つ渇きがさらにアスカの口を進ませる。

 パンを噛み、水を通す。噛み、流し込む。

 それを繰り返し、朝食を済ませると、ようやくアキナ達も目覚め、どたどたをリビングへと入り込んでくる。

 ヴァーゼは再び、朝食の準備をし、食卓を彩らせる。 

 皿を置き、片していく。それの繰り返し、そうしてようやく、自分の食事もになると、次には洗濯物を干している。

 服やら布やらを叩き、水分を飛ばしていく。竿にかけ、思わず日差しに目をくらます。

 桶にためておいた水を流し、それも竿に吊るす。


「次は掃除、掃除・・・・」


 ヴァーゼは、頭に頭巾を被せ、埃やら汚れとやらを始末していく。

 雑巾を絞り、手を洗う。

 額を拭い、髪を梳く。

 せわしなく動いていたヴァーゼがようやく椅子に座ると、両腕を枕に机に伏せる。

 そして言う。


「アキナさん。お昼ごろになったら起こしてくれるかしら。少し眠ります。」


 アキナがはいっと答えるがヴァーゼからの返答はなく、すでに夢の世界に入り込んでいる。

 アキナは外をみる。

 無邪気なヴァサーがアスカ達とともにまた遊んでいる。

 木の棒を振り回し、カンカンとそれぞれの持つ木の棒で打ち合っている。

 そんな姿に、周囲の緑も楽しそうにそよいでいる。やけに強い風ととももに、アスカの髪が揺れている。


「綺麗・・・・」


 アキナから思わず言葉が漏れると、その口を塞ぐために片手が勢いよく動く。

 振り返り、ヴァーゼを見る。

 ピクリとも動きはしない。そのまんま机に伏している。浅い呼吸のまま、静かに眠りこくっている。

 昼が過ぎ、夜になる。

 また酒の匂いが残るコップをアキナ達が洗い、片付けを済ませる。

 そうして暫くたってから、ヴァーゼが食後の眠りから目を覚ますと、のそのそと身を動かし、寝る支度をしていく。

 日記をつけ、火照る体を冷ましながら、ぼうっと外に視線をおくる。

 一時間、二時間と、ただただ時間が過ぎていく。

 窓枠に収まる闇の世界にふわふわ、ふわふわと蛍が飛んでいく。

 髪紐をほどき、ヴァーゼの体はベットに沈み込んでいく。するとようやくその瞳が閉じるのだった。

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