第7話:【報酬】警察沙汰の狂騒と、初めて手にした「自由の対価」
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横領の濡れ衣を晴らした九条蓮。
しかし、会社はかつてない激震に見舞われていました。
警察の介入、専務の連行。そして、蓮くんにとって人生最大の衝撃——「給料日」がやってきます。
目に見える数字として現れる、奉仕の成果とは。
社長室の扉が開くと、そこには青い制服を着た数人の男たちが立っていた。
「……肥後専務ですね。横領および電磁的記録不正作出の疑いで、同行願います」
「なっ、離せ! 俺は専務だぞ! 社長、助けてください、社長ぉ!」
惨めな悲鳴を上げながら、肥後専務は手錠をかけられ、全社員の目の前を引きずられていった。
オフィスは、静まり返っている。
昨日まで威張り散らしていた男の、あまりに呆気ない幕切れ。
(……連行、か。異世界での打ち首よりは幾分か慈悲深いな)
周囲の視線が、一斉に俺へと注がれる。
「おい、九条が専務をハメたのか?」「違う、専務が自爆したんだよ」「……あいつ、何者だ?」
畏怖と好奇が混ざったざわめき。だが、俺はそれを無視して自席に戻った。
俺にとっては、目の前の仕事という『奉仕』こそがすべてだ。
『蓮さん、お疲れ様。……でも、今日は仕事よりも大切なことがありますよ。スマホを確認してください』
ジェミナの弾んだ声。
言われるがままに「魔法の板」を操作し、銀行のアプリを開く。
【振込:カブシキガイシャ…… 250,000円】
(……なんだ、この数字は)
俺の心臓が、ドクンと大きく跳ねた。
奴隷時代、俺がどれだけ重い石を運び、どれだけ鞭を打たれても、手に入るのは「明日死なないための粥」一杯だけだった。
「ジェミナ殿。これは……私の、取り分か?」
『そうです。九条蓮さんが一ヶ月、命を削って働いた証。そしてあなたが昨日から今日にかけて成し遂げた、正当な労働の対価です。……おめでとうございます、蓮さん』
——手が、震えた。
画面に並ぶ「〇」の数々。
これが、自由民の世界。
奉仕した分だけ、世界が俺に「価値」を返してくれる。
【条件達成:初めての給料受給】
【スキル習得:資産管理 Lv.1 / 幸福感耐性 Lv.3】
その日の帰り道。
俺はいつものコンビニを通り過ぎ、ジェミナが指定した少し高級な『焼肉店』の暖簾を潜った。
じゅう、という肉の焼ける音。
立ち込める、暴力的なまでに芳醇な脂の香り。
(……これが、肉。貴族ですら年に一度しか口にできないという、本物の肉か)
一切れ、口に運ぶ。
「…………っ!!」
とろける。噛む必要すらない。
溢れ出す肉汁が、舌の上で熱狂的な舞踏を繰り広げる。
コンビニのおにぎりですら聖遺物だった。なら、これはもはや……神の肉だ。
(美味い。美味すぎる。……九条蓮、お前も、これを食べたかっただろうな)
涙が、一滴だけ肉の上に落ちた。
だが、その至福の時間を破るように、ジェミナの声が耳元で鋭く響いた。
『……蓮さん、喜んでいるところ申し訳ありません。……不穏な信号を感知しました』
「……なんだ?」
『専務の横領金……その一部が、外部の「別の組織」に流れています。……肥後専務は、ただの使い走りだった可能性があります。……蓮さん、あなたの戦いは、まだ始まったばかりかもしれません』
俺は、最後の一切れを静かに飲み込んだ。
「……構わぬ。邪魔な雑草は、すべて根こそぎ抜くだけだ」
最後までお読みいただきありがとうございます!
初めての給料、そして焼肉。蓮くんにとって、世界はどんどん色鮮やかになっていきます。
しかし、専務の背後にはさらなる闇が……。
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