第17話:【掌握】絶望のカウントダウンと、代償の署名
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午前10時。納品不可という「物流の死」が営業部を襲いました。
右往左往する石井たちを横目に、九条蓮はただ静かに時計を見つめます。
「システムを無視する」という選択が、どれほど重い罪か。
奴隷の掟は、失敗した者に慈悲を与えません。
しかし、九条には彼らを「生かす」ための次の一手がありました。
九条ぉッ! 何とかしろ! A社との契約が飛んだら、数億円の損失だぞ!」
石井がデスクを叩き、唾を飛ばして叫ぶ。
室長室のモニターには、A社の担当者から入っている無数の着信記録が、ジェミナの手によって赤く点滅していた。
「……数億円、ですか。……奉仕を怠った代償としては、妥当な金額ではないでしょうか」
「貴様……! 今すぐ配車センターに連絡して、トラックを回せ!」
「……。昨日、私が『全車両のGPS連携』を提案した際、貴殿は「現場のプライバシーを侵害するな」と突っぱねました。……現在、どのトラックがどこで空いているか、私は把握しておりません」
石井の顔が、怒りから急速に「恐怖」へと塗り替えられていく。
彼が守りたかった「現場の聖域」が、今、彼自身の首を絞めていた。
『……蓮さん、A社の検収期限まで残り12分。……石井の呼吸が浅くなっています。……パニックによる過呼吸の予兆です』
(……ふむ。潮時か)
俺は、一枚の電子契約書をタブレットに表示させ、石井の前に滑らせた。
「……条件があります。……今後、DX戦略推進室の指示は、社長命令と同等の『絶対遵守』とすること。……そして、各部署の全権限を、システム改修のために一時的に私へ委譲する一筆を。……ここに、署名を」
「……っ、そんな無茶な……!」
「……。残り、10分。……契約が飛べば、あなたは『無能な敗将』として、成瀬と同じ道を辿ることになる」
石井の手が、震えながらペンを握った。
奴隷時代、主人が変わる際の「契約書の更新」を思い出す。
今、俺はこの会社の支配構造を、物理的な暴力なしに、ただ『論理』だけで書き換えていた。
署名が完了した瞬間。
俺はキーボードを一打、叩いた。
「……ジェミナ殿。……『予備』を動かせ」
『……了解。……今朝、渋滞予測を考慮して、A社近くのパーキングで待機させていた「協力会社の緊急車両」に、積載指示を送りました。……到着まで、あと4分。……ギリギリセーフですね』
「な……予備だと!? 貴様、最初から……!」
「……。奉仕とは、常に最悪を想定するものです。……石井部長、次は『入力忘れ』のないよう、お願いいたいますよ」
【条件達成:全社権限の掌握】
【スキル:組織統制 Lv.1 を獲得】
石井は、精魂尽き果てたようにその場にへたり込んだ。
営業部、そして各部署の部長たちは、この日を境に悟った。
九条蓮という男は、単なる新人ではない。
彼の手のひらの上で、自分たちは生かされているのだと。
最後までお読みいただきありがとうございます!
圧倒的な「準備」と「予測」で、反乱を一瞬で鎮圧した九条。
石井部長、もう彼には逆らえませんね……。
ついに全権を手に入れた蓮くん、次はいよいよ「社内大改革」の仕上げに入ります!
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