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8 バッグをハックしてバグをバルク生産するぞ(ハッカー視点)

これはあくまでフィクション上の某ハッカー視点の話であって、筆者の思想信条とは一切関係ありません。また、筆者はIT機器の苦手なプログラミング初心者プラス程度であり、某ハッカーの話を正確には理解しておらず、記述に間違いもあると思います。その辺りもご容赦ください。


結局、前話並みの長さになってしまいました。

僕がプログラムを覚えたのは小学校1年の夏休み(補足1)。使ったOSはLinuxで、他のソフトが何も入ってなかったので(補足2)、僕は遊び感覚でプログラムを覚えていった(補足3)。


中学になって、システムに穴があると、善良な利用者が割を食い、システムを作った会社に実害が無いことを知った(補足4)。だから、中学3年時には、色々な企業や官公庁のシステムの穴に対して、それを警告する匿名の善意集団に参加するようになった(補足5、補足6)。


時折、お祭りとか称して、評判の悪いIT会社の製品の穴や、不正会計の噂のある会社の不正の証拠を、誰が一番早く見つけるかの競争もしていた(補足7)。そんな競争で、今回こそ一番乗りだと、最後のコマンド実行のキーを押そうとした時、突然ブラックアウトを起こした(補足8)。辺りは真っ暗。僕が高校2年の頃だ。


永遠に感ずる闇が明けると、僕は妙な場所で縁台らしいところに腰掛けていた。手許には今まで使っていたキーボードがあるが、スクリーンやパソコン本体はない(補足9)。隣には、ジャージ姿の20歳代半ばと思しき女性がいる(補足10)。そして、目の前には着流し装でひれ伏した人々がいる(補足11)。


平伏した人々の代表と思われる老人が、

「いきなりお呼び立てて申し訳ございません。天気の神様のお告げにより、神様に危難が近いとのことで、お呼び致しました」

と少しアクセントのある日本語(補足12)で語りかけた。


訳の分からない僕たちの質問に丁寧に答えた彼らの言い分は、ここが異世界だという荒唐無稽な話だ(補足13)。要領を得ないまま夜となり、就寝後にいきなり見た明晰夢で魔神様と話をしたのがファーストコンタクトだった。


その後も村人たちにかしずかれ、魔神様が毎晩夢枕に立って魔法その他について色々話をする日々が続いた(補足14)。詐欺かもしれないし、拉致を行なう者特有の泣き落とし懐柔かも知れない。しかし、天気予報が確かにかなり信頼できることと、それによって漁民達が助かっている様子をみて、次第に魔神様を信用するようになった。そして、魔法の原理が意外にシンプルで、その応用が面白いと実感するに至って(補足15)、魔神様と同盟を結ぶことにした。拉致から2カ月後のことだ。


もちろん、そこには拉致されたしまった諦めもあったかもしれない。しかし、僕たちは自身で未だに魔法を発動できず、話の裏が取れないにもかかわらず魔神様と同盟することにした最大の理由は「魔法をハックする」という依頼の面白さと、それが実行可能だと言う直感にあった(補足16)。この時以来、僕の中では拉致時の邪神(仮)から魔神様に昇格した(補足17)。


その後の開発は(補足18)、村人が大いに協力してくれた(補足19)。試行錯誤の末に出来た初の試作品が魔法バッグだ(補足20)。開発から4カ月、拉致から半年経っていた。


ハックの原理は簡単だ。呪文の4音に1音の割合で、呪文が短い場合は何処かの1音が、「似ている範囲」かつ「意味の通る範囲」で書き変わるバグになるというものだ(補足21)。駄洒落バグとも誤植バグとも、人によっては「口噛ンジャッタ」「ネタのタネ」とも言う。複数の魔法を同時に発生させる呪文の場合は、使われてる要素の複数が誤植を起こす(補足22)。


試作品ができてすぐ、魔神様と僕たちは、逃走という名の観光旅行に出立した(補足23)。もちろん隠密行動、特に大都市で僕たちが異世界人だとバレないように細心の注意を払った。


しかし、不運が重なって、魔神様は封印されてしまった。魔法の師匠を失った僕たちは呆然とした。しかも、封印に至った理由の一つがゴキブリなのだ。ゴキブリはIT機器の敵でもある(補足24)。それは魔法の師匠を失う以上に深刻な問題だった。


封印には事前情報通りに日本人が2人参加しているが(補足25)、ゴキブリ同伴では近づくべからず(補足26)。さっさと宿を引き上げて、さらに西に向かった。


僕たちのやることは簡単だ。旅行を楽みつつ、魔神様の依頼を120%完成させること(補足27)。魔神様は、60年しないうちに封印から解けるだろうから(補足28)、それまでに完遂させる。それが善意のハッカーというものだろう?


ついでだか、次のシンクロ時に帰還すべく、拉致魔法の修正を行なっている(補足29)。だって可能だし、魔神様がシンクロ魔法を丁寧に教えてくれたのも、それを見越してだろうから。


以下の補足は補足6を除いて某ハッカーによるものを筆者が分かりやすいように添削したもので、その内容に関知しないだけでなく、添削の正確性も保証できません。


(ハッカーによる補足1)

3つ上の兄の10歳の誕生日祝いのパソコンを兄が使わなかったから、いつの間にか僕が独占していた。


(ハッカーによる補足2)

父が初期設定したら、こうなっていた。立ち上げて現れるのはコンソールモード。1980年代までの標準だったんだって。これが、兄がパソコンに見向きもしなかった理由だよ。


ちなみに父はPC98シリーズを未だに走らせていて、その父が初めてパソコンを触ったのが12歳の時だったので、繰り上げて10歳で兄に『類似の』パソコンを与えたんだって。だめだよ、それじゃ。今はタブレット・スマフォ隆興期のゲーム全盛時代で、自転車での行動範囲の広い兄が友達の所に逃げるのは当然じゃないの。


(ハッカーによる補足3)

自作のプログラムで、文字が出て来たり、計算が出来たり、幾何の問題が解けたり、テレビのリモコンの代わりをしたり、接続した線量計の値をリアルタイムでネットにあげたり出来るようになるのが楽しくてのめり込んでいったんだ。小学校の時の自慢は、アメダスのデータを読み込んで、雨域や低温域の移動を計算して、それが単純に同じ速度で動くと仮定して、我が家での天気がどうなるかを予想した奴で、夏休みの自由研究で褒められた。


ゲーム? プログラムは出来るだろうけど、シナリオ作るのが面倒だから、始めから手を付けていない。


(ハッカーによる補足4)

父が使っていたソフトが誤動作をして総てのインプットが消されたり、ソフトの穴のせいで企業から漏れ出した顧客情報に母の名前があって詐欺まがいの勧誘電話が増えたりと、色々被害があったけど、そういうのって、補償はほとんど無いんだね。あったとしても、両親が費やした無駄な時間と、精神的な疲れに全然見合わないって両親が言っていた。


(ハッカーによる補足5)

要するにシステムに侵入して「warning: system allows me to enter」と表示する活動だ。メンバーの中には、タックスヘブンで税金逃れしているような会社や、ブラックと呼ばれる企業に対して、「より強い警告と制裁を」と唱え、警告以上の行動にでる人々もいるらしいけど(後から知った)、それを知った頃の僕は、校則違反すら極度に恐れる真面目な高校生だったので、そこまで「正義」には踏み切れなかったんだ。


(筆者による補足6)

上記の補足5や下記の補足7,8のような行為は、そこにどんな善意であろうとも、たとい公共の福祉と会社の両方に利益をもたらす行為であっても、日本では違法行為となっております。読者の皆様は真似しないことをお勧めします。


異世界や、規制法の無い国やにおいては、実害を与えない限り、善意の警告として歓迎される場合もありますが、日本では、情状酌量どころか、見せしめとして罰される可能性がり、何よりも、自己承認欲求の強い方々や「大樹の陰」マンセーの方々に「これこそ(オレの)正義の鉄槌を下すべき害虫だ」とばかりに、私刑的に罵詈ばり罵倒されて、深刻な精神的なダメージを受けかねません。


(ハッカーによる補足7)

もちろん警告表示だけの無害なやつ。でも、これが大変な技量を要求するんだ。警告ってのは、システムの中の何処かのプログラムを、誰にも見つからないように書き換える行為だから。スリリング満点の遊びだね。


(ハッカーによる補足8)

逆探知されて、逆にこちらがハックされたのでは、というのが瞬間的の襲った恐怖だったな。これが単なる停電だったとしても、痕跡を消す前に回線が切れてしまっては対処無し。こっちの痕跡が見つかったら、善意集団から半年間の資格停止のペナルティーを受けるんだよ。怖かったねえ。だから、次の瞬間に頭に浮かんだのは、電気の回復次第、いかにして、総ての踏み台で痕跡を消して撤退するかだった。異世界転移のラノベでハードディスクの中身を消して欲しいって主人公が願うのってこういうことあなのか……。


そういう不安は、直ぐに、より大きな恐怖で上書きされけどね。…なんだ、目の前の光景は?


(ハッカーによる補足9)

足がつくのを恐れて、昔ながらに自分で組み立てている。材料は廃棄品の寄せ集め。仲間に、そういうのが得意なのがいるんだ。


(ハッカーによる補足10)

彼女も匿名善意集団のメンバーであることは、その日のうちに分かったよ。メンバーとしての経歴は僕より2年しか違わないのと、行動原理が興味本位で単純そうなところから、僕は「先輩」と呼ぶことにした。


(ハッカーによる補足11)

時代劇のような羽織袴でなく、70-80年前の子供が着ているような簡易で涼しそうな和服だった。お祖父ちゃんがみたら喜ぶかな?


(ハッカーによる補足12)

その後の会話は、まるで祖父たちの会話のような言葉や言い回しの羅列だった。聞けば、ここは異世界の中でも日本語を学ぶ者が一番多い国なんだって。


(ハッカーによる補足13)

どうやら地球に似た異世界(翻訳者注:第6話の補足6参照)の、日本に当たる場所みたい。理科で習ったゴンドワナ大陸。そこから分かれた各大陸の移動は地球よりもかなり遅いけど、日本列島の発達は地球並みらしい。ということは、僕の持っている日本列島の形とあまり変わらないかな? こういうのって空から見ないと分からないよね。


(ハッカーによる補足14)

この世界の概要、この世界の有力な言語、生活の仕方、勇者達の存在の話を夢を通して習いました。なにより、魔法の原理が素晴らしいかったなあ。あと、封印される為だけに存在する辛さも時々聞いたけど、こっちはどうでも良いや。


後から知ったけど、勇者達が受けた説明よりも、より本質的なところから魔法を解説してくれたみたい。中でもシンクロ方式の拉致魔法を、その発動原理から丁寧に教えてくれたのは、素晴らしかった。もちろん、魔神を信用するようになった理由の一つだね。


(ハッカーによる補足15)

例えば一番威力のある爆発魔法だけど、これって分解魔法と分別魔法、結合魔法、風魔法の組み合わせが主で(翻訳者注:第7話の補足14参照)、最後に加熱魔法をぶつけることで出来ているらしい。実際に使ったあとを見ると、火薬のような臭いがしたので、土の中に僅かに含まれている老廃物や微生物から、火薬に必要な元素を分離・分別し、それを火薬と硫黄と炭に再合成結合して、それを風魔法で圧縮して、そこに火をつけるのだろう。なるほど、火薬や炭をつくる段階で、相当なエネルギーが必要だから、爆破後に体力が尽きる筈だ。


水の上での爆発というのもあるけど、呪文が少し違い、発動しないことも多い。きっと水を分解するのだろうな。だって風魔法と分別魔法で、しっかりと水素と酸素だけを、その精製中にコンパクトに閉じ込め続けなければ、連鎖反応を起こせるだけの密度を純度を確保できないからね。爆発で一番難しいのは、連鎖反応を維持すること。


爆発には念入りな準備がいるんだよ。単に燃やすのは爆発とは言わない。


(ハッカーによる補足16)

魔法は使えないけど、魔法発動とスムーズにする触媒を通して、他人の魔法の発動をハックでできることが分かったのが協力を決めた一番の理由だね。開発に役立つようにと、僕と先輩がそれぞれ持っていたキーボードに魔法的なインターフェースをつけてくれて、魔道具(というか触媒)の魔法性質を書き換えられるようにしてくれたのも大きいけど。


(ハッカーによる補足17)

千一夜物語アラビアンナイトに出て来る魔神様。善悪どちらもいて、人間にはその善悪を判断できないんだって。


そっか、魔神様が善悪かは僕たちにはどうでも良いことだったんだ。僕たちに快適な環境を与えてくれる魔神様なら歓迎、それで良いんだって悟ってしまった。うう、僕の純粋さが汚れて行くぅ。


(ハッカーによる補足18)

既存の魔法や魔法触媒の解析こそ、先輩と手分けして行なったけど、開発自体はそれぞれ独立に行なって、時々意見交換をした。大型プロジェクトならともかく、数万文字程度のソースコードは一人で開発したほうが良いからね。後で比較して、お互いの良い所を取り入れる。そして、出来た部分の隠密性や安定性のチェックは、お互いに相手のものを調べることで、万全を期すんだよ。


(ハッカーによる補足19)

具体的には、僕たちの代わりに魔法を発動してもらって、ハックの試行錯誤を繰り返しました。


(ハッカーによる補足20)

バッグ魔法を使用するのに使う『触媒を兼ねた魔道具』(翻訳者注:第7話の補足29参照)で、僕たちの作ったのは、中に入れた他の触媒・魔道具、例えば杖やローブに同様のウイルスをコピーして、3度目の使用からバグを実行させるというもの。


現バージョンは風系と加熱系の魔法しか影響を受けないけど、ゆくゆくは、総ての魔法もバグるようにして、最後は、その集大成らしいシンクロ魔法や封印魔法などの特殊魔法にも広げつもり。特殊魔法の発動には特別なネックレスや腕バンドを使うらしく、紛失防止に水浴びとかの時は魔法バッグに入れるんだって。そこがチャンス。


(ハッカーによる補足21)

たとえば、魔法バッグを使う「バッグ」という呪文だと、触媒側が「バグ」として認識する、という具合だ。実際には言語依存で、バッグの場合は、英語で認識するとバグ(bug)になるけど、日本語で魔法袋と認識すると魔お袋となって、中に入れたものが全部母親に取り上げられるという、別の意味で危険な魔法になる。幸い、バッグ魔法だけは、この世界のどの言語でもバッグで(偶然の一致なのか、昔の勇者の開発の結果なのか分からない)、バグに変換されるけど。


どの言語で魔法を認識するかで、バグの中身も変わる。例えば英語方式だと、ファイア(fire)がファイン(fineには罰金という意味がある)になって請求書の吹雪が発動者に降り、ウインド(wind)がワイルド(wild)になって発動者の服がワイルドに変化するという具合にね。


異世界語による発動で、どのようなバグになるかは、開発者の僕たちにも予想がつかない。たのしみだ。


(ハッカーによる補足22)

例えば日本語の爆発魔法だと、分解が不快、分別が侮蔑、結合が毛・業(禿げやすくなる)、風圧が不圧(圧縮できない)、加熱が気化熱になって、気化熱を与えられた体が加齢臭が発生させ、それが不圧効果で臭いが拡散して、回りに人間から侮蔑された結果、禿げやすくなるという、日本的に悲しい結果となる。うん、爆発魔法で僕たちを狙うような連中なんて、男も女も、みんな禿になってしまえばよい。


そもそも、爆発魔法はネタも多い。一番有名なネタ魔法に粉塵爆発魔法ってのがあるんだけど、これが本当に酷い。小麦粉とか炭の粉とかをバラまいておいて、風魔法と加熱魔法だけの略式で起動させるという奴で、小麦粉の場合は1万回に1回、炭粉ですら1000回に1回ぐらいしか成功しないんだ。


当たり前だよね。地球でも、炭坑で起こった例は地下の高圧乾燥下の特殊環境のときだけだったし、小麦粉に至っては、高気圧に被われた乾燥期に、ほんの稀に起こる現象だったし。そもそも、人工的に粉塵爆発が起こせるなら、小麦粉エンジンとか炭エンジンとか、とうの昔に開発されているわけで、それが出来ずに必ず気化させているってことは、粉塵爆発は人為的には起こせないってことなんだよ。


だからだか、こっちに一緒にきた先輩なんか

「どんなに面白いマンガやラノベでも、粉塵爆発が『知識の勝利』として出て来る話は、途端に白けて読むのを止める」

って言ってた。わかる、その気持ち。


(ハッカーによる補足23)

国の役人に、僕たちの存在がバレて、不審を抱かれたらしいから。その結果、試作品のver3.1が出来た直後に、村人が数人引き立てられた。きっと拷問だろうから「拷問される前に話して良いよ」という意味で、僕たちは、その日のうちに逃げ出したんだ。今まで良くしてくれた村人たちが秘密を守らなくてもよいようにね。こういう日が来ることは前もって分かっていたので、準備にぬかりはない。


(ハッカーによる補足24)

ゴキブリはIT機器でも平気で食べるし、勝手に感電して配電をショートさせたりする。それが勇者達と一緒に現れたんだ。最悪の一言。8年前の召喚のあと撲滅作戦が行なわれて、実際勇者達が出立した後に、その街にゴキブリは現れていないという話を邪神様から聞いていたから、撲滅されたのだろうと思っていたけど、なんと勇者の近くにいたとは。現実は非常だ。


(ハッカーによる補足25)

始めの予定では、たとい魔神様が封印されたとしても「同郷で保護されるべき存在」として情に訴えて、勇者様達の保護下に入るつもりだったんだ。封印という行為の是非についても、彼らが聞く耳を持つようだったら議論するつもりだったけどけど……、ゴキブリがいるんじゃ、近づきたくない。キーボードはいまや異世界仕様の特別品で、齧られたら万事休すだ。


(ハッカーによる補足26)

あのゴキブリ、恐らくは勇者達に隠れるように同行してきたに違いない。食べ物なのか? 勇者に出される食べ物の残飯が、あのゴキブリの好物なのか?


(ハッカーによる補足27)

手始めは魔法バッグの完成が目標。中に入れる触媒・魔道具へのバグ付与を、総ての種類の魔法に対応させるって奴。次に、接触させただけで同じ効果を与えるような布や手袋を作る。


ここまでが当初の予定だったけど、だんだん面白くなって、僕たちの仕事はエスカレートしていった。才能ある人間なら、誰だってそうなると思わない?


例えば、その触媒・魔道具で魔法を一度でも発動させると、術者本人にバグがコピーして、その後、常にバグるようにするとか。例えば、バグった魔法が発動されたら、その魔法の発動者から10メートル以内の距離にいる者も、同じバグに感染するようにするとか。


そうだ、潜伏期間として2〜3回だけは正常に発動して、その潜伏期間の発動でも、感染が起こる、という仕様もつけよう。


(ハッカーによる補足28)

封印の瞬間を遠目から少しだけ見たけど、5X2X3X2ではなく3X20という数字が一瞬だけ見えた(翻訳者注:第7話の補足33参照)。ゴキブリの登場で両手が使えず、もう一人が倍がけの代わりに、辻褄あわせに20倍に引き延ばした? とすれば同じ60年の封印でも、強度は10分の1の筈だよね。60年も封印は持つはずがない。


こんなことが分かるのも、魔神様の魔法講座が丁寧だったから。おそらく、封印に関わった連中には分かるまい。


(ハッカーによる補足29)

魔法も面白いけど、魔法に頼ったこの世界は、生産力も貿易能力も地球の数百年前のレベルで、物質文明の飽食の時代に育った僕にとっては、一生いる所ではない。7年というのは青春体験として良い期間だけどね。14年ではなく7年。就職は一緒に来た先輩(いまや同士というべきか)のコネがあるから中卒でも困らない。あの天才将棋差しだって中卒の肩書きを選んでいるじゃん。なら、ここは地球に戻るべきでしょ? 


日本での失踪は2年なら挽回できるよね? 16歳の風貌から僅か2年で23歳の風貌になったら家族はビックリするだろうけど、拉致された2年間で老けたと言えば納得してくれるだろうし。これが倍だとちょっと厳しいから、やっぱり次のシンクロ期に帰還すべきだな。


ちなみに、帰還の為の逆シンクロ魔法も3〜4回目で自動的にバグるように、発動用の触媒(杖)を設定している。僕たちが使って、あと1〜2回だけ使えるというわけ。勇者達にもチャンスをあげる僕たちは、優しい優しい匿名善意集団なのだ!

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