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異世界×やきう×セイバー  作者: レッサー・フォン・ゴールデンバナナ
第2章 陸にあがる海賊達(パイレーツ)
22/23

コラム1 MLB移籍ルールとレギュレーション

少し長めでコラムを書きました。間違いがあれば修正します。

MLB編成あれこれ


アメリカでも日本と同じくシーズンオフには選手の移籍があります。ただ日本の場合はアメリカの制度を取り柄れきたので、基本的には整合性のとれた制度でありわかりやすくなっています。


アメリカの場合は19世紀後半からですので、制度もいろいろとありました。新しい制度を取り柄れて古い制度を消したり、または古い制度も残ったままであったりと、様々な制度が入り乱れてとても複雑な形になっています。


ここからは編成を中心に話していきます。勝利を目指す球団と再建を選ぶ球団という形で説明します。


目次

①ドラフト

②FA

③トレード

④レギュラーシーズンとプレーオフ


①ドラフト


アメリカでのドラフトは完全ウェーバー制と呼ばれています。日本と違いドラフト1位の競合はありません。なので基本的には弱い球団から順番にくるくると回って指名します。

30球団ありますので、基本的にはドラフト1位は全体1から30位までになります。


ただ例外事項もたくさんあります。ドラフト順位の譲渡もありますので必ずしも30位までとは限りません。また球団1位指名といっても複数ある場合もあります。



またFA保障の対象がドラフト指名権になりますので、さらに指名の順番が入れ替わります。また指名された選手が入団を拒否した場合もその保障として、翌年のドラフト指名権が動きます。


例えば2018年のロイヤルズでは球団1位指名で4人獲得しました。



ドラフトでは契約金もあります。MLBでは契約プール金と呼ばれるシステムになっています。


仕組みはまずは全体の金額が与えられます。その金額の中でドラフト順位10位までの契約金を決めます。11位以降は日本で言えば育成選手みたいなものなので特に決まりはありません。期待値は一発屋でも当たればラッキーという程度です。


例えば契約プール金が1000万ドルとしましょう。ドラフト1位の相場はだいたい300万ドルから700万ドルほどです。

1位に700万ドルの契約金を与えた場合は、残り300万ドル以内で2以下の順位の選手との契約になります。


1位の指名選手との契約金を下げることができれば2位以下の契約金を上げることができます。


2013年のアストロズは1位指名のカルロス・コレアと約300万ドルの契約金で締結しました。これにより2位以下のドラフトを優位に進めることができたと言われています。


ただし契約金をケチった場合は指名選手から蹴られるリスクを負います。2019年にソフトバンク・ホークスに入ったスチュワートは怪我を理由に200万ドルほどの契約金でした。これに不服であったスチュワートは契約を蹴って来日しました。



球団ごとの契約金プール金の金額はチームの勝率によります。弱かった球団は多く貰え、強かった球団は少なくされます。


またドラフトではありませんが、海外選手、主に中南米のドミニカ共和国やベネズエラなどの若手選手との契約も同じような仕組みです。各球団ごとに契約金プール金の割り当てがあります。



要点をまとめると

弱いチームは高い指名権、複数の上位指名権、高い契約プール金の割り当てから、より質の高い若手有望株を手に入れられ、将来的に強くなる可能性が高くなる。





②FA


MLBではメジャーデビュー後はだいたい6年でFAとなります。日本とは違い、FAは権利としてではなく自動的にFAとなります。


だいたいと言ったのは日本と同じく1年とされる計算されるには一定期間はロースター(メジャー登録枠)に登録されている必要があるので、メジャーデビューがシーズンの途中の場合などは延びることになります。


シカゴ・カブスでは2015年にクリス・ブライアントがシーズン前からメジャーデビューが予定されていましたが、FA期間の問題でメジャーデビューは少し遅れることになりました。

これにはブライアント側も憤慨したとも言われていましたし、ファンも憤慨する方が多かったようです。



FA保障について。


10年ほど前ではランク制でした。移籍する選手にはAランクBランクと分けられていました。しかしこのランク制ではリリーフ投手が高いランクに入ることが多かったようで、それには選手側からの反対があったそうです。

球団から高い保障を嫌われて契約がなされないことが多かったようです。


現在ではクオリファイリング・オファー(略称QA制)と呼ばれます。

球団上位125人の平均年俸の1年契約を提示します。選手はこれを受けるか、またはそれを蹴ってFAとなります。


球団側からするとこの年俸の1年契約に値しない選手にはオファーは出しません。自然と保障なしのFAとなります。

逆にこの1年契約以上に価値のある選手にはQAを出します。



そしてQAを蹴ってFAとなった選手と契約した球団は流出した球団にFA保障としてドラフト順位の譲渡が発生します。


昔はどの球団も保障内容は一律でしたが、QAによる1年契約の価値が球団によって変わることから、修正されることになりました。

資金力のない球団はオファーを出しにくく、逆に金持ち球団はオファーを乱立したからです。


金持ち球団からすればこの1年契約で流出を阻止できればラッキー、流出してもドラフト順位を貰えるからです。逆に貧乏球団はたった1年でも約1500万ドルの契約は重いものでしたので、QA申請はためらいがちでした。


このQA制に修正が加わりました。ドラフト指名順位の譲渡が球団の資金力によって変動することになりました。

例えば貧乏球団から金持ち球団に移籍の場合は高い指名順位が譲渡の対象になりますが、逆の場合は低い指名順位になります。


これにより、金持ち球団がQAオファーを出しても低いドラフト指名権利しか得られません。オファーを出すのを躊躇わせることができました。


③トレード


日本と同じくアメリカでもトレードはあります。日本ではスター選手がトレードされることはほとんどなく、またトレードされる選手のほとんどはあまり有名でもない選手であることがほとんどです。


アメリカでは逆です。もちろん無名選手のトレードはありますが、スター選手が移籍するビッグトレードもMLBの醍醐味となります。


少し制度を補足すると、トレードでは選手だけではありません。ドラフト指名権や契約プール金の譲渡もあります。



さてMLBでのトレードでは勝利を目指す球団と再建に入る球団のトレードが多いです。例を見てみましょう。


例えば2016年オフシーズンのトレードです。

レッドソックスとホワイトソックスがビッグトレードで関係者を驚かせました。


レッドソックス獲得

クリス・セール(27歳) 先発投手

試合32 防3.34 17勝10敗 226.2回 233奪三振


ホワイトソックス獲得

Y・モンカダ(20歳) MLB

M・コーペック(20歳) 1A+

L・バサベ 1A+

v・ディアズ 1A



セールは成績、ホワイトソックス獲得の選手は年齢とマイナーリーグでの階層になります。この当時のマイナーリーグの階層は下からR,SS,1A,1A+,2A,3Aとなります。

モンカダはメジャーデビューしていましたが、試合数はまだ8試合しか出ていませんでした。



このトレードでは3つのポイントがあります。


(1)なぜレッドソックスはセールを獲得したのか

(2)なぜホワイトソックスはセールを放出したのか

(3)ホワイトソックスが獲得したのは何故この4人だったのか


これらについて一つずつ説明します。


(1)このトレードではレッドソックスの目的はエースの獲得です。2016年シーズンのア・リーグの最も良い投手を選ぶサイ・ヤング賞投票では5位に入りました。実績をも踏まえるとア・リーグでは当時最高のサウスポーでした。


(2)ホワイトソックスは16年は78勝84敗でシーズンを終えました。ロースターは未成熟な若手といまいちなベテランという構成であり、翌年以降の勝利の道筋は確立していませんでした。


セールの契約はオプション込みで最長2019年まで、しかも実力を考慮すれば格安の契約でした。なのに何故放出したのか。


それはその間に勝利、つまりはプレーオフ進出を望めないからと言えます。3位に入ればプレーオフに出られる日本とは違い、リーグで15球団中5球団しかプレーオフには行けません。しかも地区優勝か2位以下で2球団。だいたいですが、90勝以上でないとプレーオフには入れません。


GMはこの間にプレーオフは無理と考えて、どうせ無理ならばプレーオフ進出が可能な時期の勝利する体制を整えようと考えました。



(3)そして(2)で説明した勝利する体制に必要な存在がこのメンバーでした。

まずはモンカダ。この選手はキューバ出身の選手です。そしてモンカダがまだ10代であった頃にレッドソックスは3150万ドルの大金をかけて獲得した選手になります。


ドラフトでの契約金を考えれば数人分に当たります。さらにこの獲得ではメジャーリーグでの海外選手獲得のルールを違反したとしてさらに罰金が課されました。レッドソックスはその違反を厭わずに金を出したほどの金の卵でした。


MLBにおいてもまだ10代の選手に大金を出すのは異例です。ドラフトでもスター候補であると前評判が高くても、期待通りに成長するとは限りません。そのリスクを背負ってでも大金を出したということでしょう。日本であれば高校時代の大谷翔平並みの評価が一番近いでしょう。


もう一人はマイケル・コーペック。彼はマイナーリーグで105マイル(約168km/h)を記録した豪腕投手です。課題も多いですが、この速球には大変な魅力があります。またこの選手はレッドソックスの2014年ドラフト1位(全体33位)で指名された選手です。



このトレードから数年たった2020年と2021年、ホワイトソックスはプレーオフに進出しました。


ホワイトソックスがドラフトや中南米から集めた若手に加えて、トレードで他球団から獲得した若手有望株たちが、ホワイトソックスをプレーオフ進出に貢献しました。


2016年オフのGMの目論見は見事に当たりました。





④レギュラーシーズンとプレーオフ


最後にレギュレーションの説明になります。



アメリカでは10月になればプレーオフの時期になります。MLBでは30球団あり、現在15球団ずつの2つのリーグに別れています。

アメリカン・リーグとナショナル・リーグになります。


そして1リーグに3つの地区に別れています。5球団ごとに東中西の3つになります。


レギュラーシーズンは162試合になります。その内の76試合は同じ地区、それ以外に他の地区と別リーグとの交流戦になります。




例として2019年のニューヨーク・ヤンキースを見ましょう。ヤンキースはアメリカン・リーグの東地区に在籍しており、他にオリオールズ、レッドソックス、レイズ、ブルージェイズが在籍しています。


同じ地区とは76試合、中地区と西地区とはそれぞれ33試合、ナショナル・リーグとは20試合を対戦しました。


そしてプレーオフに出られる球団は5球団になります。それぞれの地区の首位の球団と2位以下で勝率の高かった球団がワイルドカードでプレーオフに参加します。


2019年のアメリカン・リーグでは東地区優勝のヤンキース(103勝59敗)、中地区優勝のツインズ(101勝61敗)、西地区優勝のアストロズ(107勝55敗)


ワイルドカードとして東地区2位のレイズ(96勝66敗)、西地区2位のアスレチックス(97勝65敗)


上記の球団がプレーオフに入りました。そしてインディアンスは中地区2位であり93勝69敗という好成績を残しましたが、地区優勝は出来ずワイルドカードにも入れなかったのでプレーオフには参加できませんでした。


ワイルドカードは同じ地区から2球団出ることもあります。2015年のナ・リーグ中地区では100勝のカージナルスが地区優勝、2位は98勝のパイレーツ、3位は97勝のカブスがプレーオフに進出しました。





MLBでは如何にプレーオフに出られるかが問題になります。シーズンを勝ち越してもプレーオフに出られなかった場合はいい結果とは言えません。どの球団もプレーオフを目指して選手を編成します。


別の見方をすればインディアンスのようにシーズンで勝ち越せる成績を残そうが、プレーオフに出られなかった場合にはある意味で失敗になります。




例えばある球団が85勝77敗したとしましょう。この結果にどういう価値を見いだすか。


この結果を受けて補強すれば95勝、つまりはプレーオフ圏内を目指せるチームになるか。


勝ち越しにも関わらず2018のマリナーズのようにチーム得失点差がマイナス、ファームの若手有望株の育成状態、球団のロースターの年齢構成などを理由に勝ち越しでも再建に走るのか。




さて、MLBにおける移籍についてまとめました。アメリカは良くも悪くも合理的です。選手編成の思考には、


「今勝てないなら将来勝てる布石を打つ」


ということもあります。チーム再建は今は勝てないチームを作るという、ファンからすればたまったものではないかも知れません。


しかし見方を変えれば、現在弱いチームも動き次第では勝てるチームになれるということです。


2011年から3年連続でアストロズは100敗以上しましたが、その間に他球団から若手有望株をかき集めて、得られたドラフト上位指名権で将来のスター選手候補を指名しました。

集めた若手有望株が狙い通りに育った結果、2017年の球団創設初のワールドチャンピオンになり、その年から5年連続でプレーオフに進出しました。





今勝てない球団には再建という選択肢があります。将来勝てるような布石を打つこともできます。


ドラフトで優位に立つためにより高い指名権を得る、より多くの指名権を得る、そして契約プール金をたくさん得る。


トレードで才能ある若手をより多くかき集める。外れの選手もいるかも知れない。でも数多く集めれば当たる可能性もより高くなる。


アメリカではこういった方法でチームを再建させます。そしてこれ以外の選択を取る球団もあります。抜本的再建を取る球団もあれば、工夫を凝らしてより良いチーム編成を取る球団もあるのもMLBの魅力の一つです。

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