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クロエ武芸帖 ~豪傑SE外伝~  作者: 8D
朱雀国編
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二十四話 李宝

 短かった……。

 戦況が落ち着き始めた頃、私は王宮へ呼び出された。


「聞いておるぞ。大層な活躍であったとか」


 玉座の間にて、漢麗様は上機嫌に声をかけてくれた。


「流石はクロエじゃ。朕も鼻が高いぞ」

「ありがとうございます」


 私は平伏してその言葉を受ける。


 視線を感じた。

 この場には、私と漢麗様以外にも官が揃っている。

 視線は、数人の武官から発せられている。


 戦いに参加したのは私だけではない。

 この場にいる武官はその殆どが参加しており、一時的に帰還した者たちである。

 私だけが賞賛を受ける事に不満があるのだろう。


「して、何やら拐わかされた者を助け出したと聞いたが」


 漢宝の事である。


「はい。敵本拠に囚われていた所を助け出しました」

「それは大変な目にあったの。その者はどうしておるのじゃ?」

「行き場がないというので、今は軍の宿舎を借り受けております。おいおい、都で住む場所を探すつもりです」


 私が答えると、漢麗様はうーむと唸った。


「……うむ。決めたぞ。その者も後宮に入れようではないか」

「え、何故ですか?」

「行き場がないのであろう? 酷い目にあったなら、助けてやりたいではないか」


 後宮に入るという事は、漢麗様と漢宝を会わせる事である。


 大丈夫なんだろうか?

 何かあった時、私では漢宝を止められる自信がない。


 アードラーと二人なら、なんとかなるだろうか?


 できるとしても五分五分ぐらいか。


「この乱で不幸になった者は、その者だけではございません。彼女だけに手を差し伸べるというのは公平ではないかと思います」

「そのような事を言うていては、あの時そなたらを助ける事もできなかったぞ」


 特大ブーメランでした……。


 上手く断る方便が思いつかない。

 この場で駄々でもこねてみるか?


 失うものの方が多い上に、何も得られない気がするな……。


「漢麗様の寛大さに縋らせていただきます」

「うむ」


 内心渋い気持ちの私に対して、漢麗様は無邪気な笑顔で頷いた。




 後宮に帰ると、私はアードラーの所へ赴いた。


「アードラー」


 部屋に入るなり彼女を呼ぶ、そこにはアードラーを始めとしてすずめちゃんとイェラもいた。


「おかえり」

「おかえりークロエママー」

「ただいま」


 子供二人に挨拶を返す。


「何かあった?」


 アードラーに問われ、事の仕儀を話した。


「クロエとしては、その漢宝という人があまり信用できないの?」

「信用できる気がする。でも、私は人を見る目がないから」


 後宮に入った途端、この瞬間を待っていたんだ! と漢麗様に襲い掛かられる可能性はある。


「漢麗様が決めたなら、従うほかにないわ。私達にできるのは、もしもの時に対処する事だけよ。それがどれだけ困難な事だろうと、ね」


 やっぱり、それしかないか。


「幼いから仕方のない事だろうけど、漢麗様は視野が狭いわね」


 個人に対して贔屓しすぎる事を言っているのだろう。


「そのおかげで、私達は助かったわけだけれど」

「それはそう。でも、漢麗様の事を大事に思うなら、これは改善するべきよ。個人ならば漢麗様の気質は美徳。けれど、王としてその考え方は許されないものよ」


 改善、か……。


 愚かな王が長く王冠を頂く事はできない。

 将来を考えれば、漢麗様に名君となってもらわなくてはならないか……。


 僭越ながら、教育を……。


 自分の娘すら、まともに育てられない身の上のくせに……。


 考えの途中で、そう自嘲してへこむ。


「それはそうと……」


 言って、アードラーは表情を綻ばせた。


「おかえりなさい」

「ただいま」




 私に案内され、漢宝が後宮へ足を踏み入れる。


「わかっていると思うけれど、変な真似はしないでね」

「わかっている」


 念のために釘を刺しておく。


 そうして庭まで歩いていくと、そこにはすずめちゃんと遊んでいる漢麗様の姿があった。

 そばで高呂が様子を見守っている。


 近づいていくと、漢麗様が私達に気付く。

 視線が漢宝に向く。


「そなたが、クロエの助けた娘じゃな」

「はい。李宝(りほう)と申します」


 もちろん李宝は偽名である。


 李宝はその場で跪く。


「天子様。温情ある配慮、有難く思います」

「うむ。気にせずともよいぞ」


 少しの緊張を経て、何事もない事に安心する。


「これから、よろしく頼むの」

「はい」


 ほどなくして劉の乱は鎮圧されていき、完全に終わった。

 とりあえず、ここで一区切りさせていただきます。

 続きは気長にお待ちください。

 次に更新がある時は、朱雀国編の最後まで更新したいと思います。

 と、見せかけて話の区切り区切りに投稿する事で、更新速度を上げるかもしれません。

 どうしようかは、執筆状況で決めさせていただきます。

 では、また会いましょう。

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