第100話
転移で一瞬で移動できるのはわかっていたが、今日はゲイルの背中に乗せてもらって移動している。
「ふぅ〜。たまにはこういうのもいいもんだね。」
「落ちないわよね?大丈夫よね?」
「ハルは心配症だな〜ゲイルに任せておけば問題ないって!」
「ハル〜!風が気持ちいいよ。学校から空の旅なんてすっごい素敵なのに。怖がるなんて勿体ないわよ。」
退寮してそのまま飛び立つのに学校へゲイルを呼び寄せた。元のサイズに戻った途端に大騒ぎになってしまった。
いきなり現れた巨大な龍を見て学校の危機だ!とか学校ダンジョンから出てきただとか先生方がゾロゾロでてきて警戒している。
「あ!先生方。俺の仲間だから心配しないで。危害は加えないからさ。今までありがとうございましたー!!そんじゃ!」
そうやって飛び立って今に至る。
視界にはもう西大陸が見えてきている。
「ほら!もう少しで着くよ。」
「そ、そうね。もう少しで着くのね。はぁ〜よかった。」
「ハルは高い所が苦手?それともこのスピードがダメなの?」
「たぶん、高い所を飛んでいるのがだめなんだと思う。お城とかの高いのは大丈夫なんだけど、地に足の付いてない感じがなんだか怖く感じちゃうのよ。」
「こんなにいい風吹いてるのにもったいないね。何回か乗れば慣れるよ。たぶん。」
「えぇ。そうね。慣れるようにがんばるわ。」
目的地は獣人自治区だが、せっかく西大陸に来たので今日は卒業報告を兼ねてイメリアで1泊することとなった。
お城に着くと早々にジャンヌ様に呼び出された。
「まずは卒業おめでとう。がんばったわね。…で、どうにかなったのかしら?」
「つなぎの話題なくまっすぐ来ましたね…2人には指輪を渡して正式に婚約という形をとらせてもらいました。」
「どうやって渡したの?なんて言ったの?気になるわ〜」
「それは…ちょっと…」
「まぁあなたの口からちゃんと婚約したというのだからあとは時間の問題ね。期待してるわよ。じゃああとは女子会するから2人と代わってくれるかしら?」
聞きたいことを聞いたらさっさと放り出された。
廊下で2人とすれ違った。
「どうだった?」
「婚約したって話をしたら放り出された。」
「それだけ?」
「うん。あとは女子会するから2人と交代だってさ。明日の朝には出発するから楽しんでおいで。」
「ありがとう。行ってくるわね。」
翌朝支度を終えて城の中庭からゲイルの背中に乗って出発した。
獣人自治区はその人種ごとに住み分けされている。
森林には狼人族、兎人族、猫人族、平原には馬人族、羊人族、河川には魚人族…多種多様な人種がある。
今回の目的地のなんとなくの地点はわかるものの、正確な入口までは把握できていない。
目的地と推定されるエリアに降りる。そこは森林エリア、特に鬱蒼としていてゲイルも地面まで降りられず木々を伝って地上まで降りることとなった。
「さぁ〜て、ここからどうしようか…」
「マァ君どこに向かうの?」
「わからない。地図でわかるのはこの辺りってことだけで、細かい入口はね。」
「手当たり次第歩いたって無駄になるだろうからここらへんの獣人を探して聞き込むのが早そうね。」
「そうだね。でもどうやって獣人を探せばいいんだ?」
「マァトがいれば一発よ!」
「俺?」
「そう!アイテムボックスから何か匂いの強い温かい料理出してもらっていいかしら?」
「そんな簡単に…」
料理をだして2分もせずに囲まれた。
「おい!そこのニンゲン!その手にあるメシをよこせ!ニンゲンがこの森に入るのはリーダーと交渉する時だけだ。それ以外はオレたちのルールに従ってもらう。」
「嫌だね!お願いするならこっちだって対価を要求すべきだろ?こっちの話も聞いてもらいたい。」
「ニンゲンが調子にのって!」
木陰から出てきたのは狼人族だった。
いきなり飛びかかってきたが、俺にとっては子どもと遊ぶようなもんだから避けるのも鼻歌まじりにできるほどだ。だがなぜだろう…痩せこけている。体も傷だらけだ。攻撃しないで制圧できないもんかな…
「このニンゲン強い!話聞いてやるからそのメシをくれ!最近食料が少ない。狩りも一苦労なんだ。」
思ったより力量差をわかってるんだな。
「くれじゃない。交渉だと言うなら俺に勝てないお前がその言い方をするのはおかしいぞ。」
「くぅぅぅ。オレが弱いのは確かに認める。でも食べたい気持ちが止められない。みんな腹が減ってるんだ。頼む。」
「わかった。まずは腹膨らしてから話をしよう。」
アイテムボックスから先ほどだしたシチューを人数分振る舞った。
「これはウマい!こんなにいっぱい持ってるのスゴイな!」
「そうだろ!ディケとハルが作ってくれたんだ。美味いに決まってるだろ!」
お腹が膨れたのか獣人達はようやくこちらの話を聞く姿勢を見せた。
「お前達は何をしにここへ来たんだ?」
「俺達はとあるダンジョンを探している。この辺りにあるだろうか?」
「ダンジョン?迷いの森のことか?」
「迷いの森?」
「そう。迷いの森。森の中にあるんだが、そこの入口から入ると出口がわからなくて元に戻るのも大変な場所なんだ。間違ってそこに入った者が何人も戻らない。だから俺達は近付かない。それのせいで狩りに行ける者が減ってしまった。」
「おおっ!冒険の匂いがする!」
「マァト変なとこで興奮しないでよ!入ったら戻れないかもしれないのよ!ちゃんと聞いて!」
「あ、ゴメン。それでそこまでの案内を頼めるか?」
「俺達は入らないぞ。帰れなくても知らないぞ!それでもいいなら。」
「もちろんだ!俺たちが迷いの森を踏破してくるよ!」




