届かぬ想い
観客のざわめきが簡易アリーナを包み込む。
「ガラクタのECOじゃん(笑)」
「また負けるんじゃねぇの?」
「今度負ければ95敗目だろ」
冷たい声の飛び交う中、シンは拳を強く握りしめた。
「……マスター」
ECOが振り返る。
「相手の装備から推測すると、長距離攻撃が主体。合理的に考えれば、勝ち目はほぼありません」
「おう。ってか、今まで試合の適性距離で相性とか気にしたこと無いしな!……だが、諦める気はねぇ。ECO、俺たちはまだはじまってねぇし、終わってもねぇ!」
「……了解しました、マスター」
開始の合図。
相手の御子が一斉に光弾を放つ。
――ドドドドッ!
眩しい閃光がフィールドを覆い尽くした。
「ECO、下がるな!踏み込めぇっ!気合だッ!!」
「はい。」
弾丸の雨をかいくぐり、ECOは低く沈んで突進する。
肩をかすめ、脚を撃たれ、装甲が火花を散らす。
観客から「おおっ!」と驚きの声が漏れた。
「そうだ、そのまま一歩でも近づけ……右からビット接近!!」
「……了解。回避後に詰め寄ります」
接近武器を構え、相手の目前まで踏み込む。
振り下ろした瞬間――。
――バチィッ!
至近距離でエネルギー弾が炸裂。
ECOの身体が弾き飛ばされ、アリーナの床に叩きつけられた。
「……っ」
画面に「機能停止」の赤い文字が点滅する。
95連敗目。
観客席から失笑が広がる。
「やっぱ無理だな」
「旧型にしては頑張ったかな?」
だがその中に、ほんのわずかだが拍手を送る観客もいた。
その中に__白髪の小柄な老人の姿があった。
誰も気に留めないほど静かな拍手。
だが、ECOのセンサーはその音をはっきりと拾っていた。
「この反応、どこかで……」
ECOが一瞬だけ、立ち上がる老人を見つめた。
だが彼の姿は人混みに消えていた。
シンは駆け寄り、倒れたECOを抱き起こす。
「ECO! おい、大丈夫か!」
「…問題ありません。…すみません、間に合いませんでした」
短い沈黙のあと、ECOは小さく呟く。
「……マスター。敗北ですが……以前より改善しています」
その声には、冷徹さの奥に、かすかな温度が宿っているように感じた。
シンは歯を食いしばり、空を仰ぐ。
あと一歩だ。あと一歩が……届かねぇ……!




