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居酒屋流の修行 ①

翌朝――。


居酒屋『深夜の世界』。


その奥にある畳の間で、俺とECOは正座していた。


「…………」


『…………』


目の前には、ちゃぶ台。


その上には、徳利とお猪口。


さらに、木刀、竹刀、古びたグローブ。


壁際には、使い古しのサンドバッグや、どこから持ってきたのか分からないマネキンまで並んでいた。


「…………」


……なんだ、これ。


どう見ても修行場じゃねぇ。


酔っ払いの秘密基地じゃねぇか。


「……なぁ、仁さん」


「ん?」


「これ、全部使うのか?」


「おう!」


「……マジで?」


「マジだ!」


仁さんは、胸を張って頷いた。


……大丈夫か、これ。


昨日は、あんなにかっこよかったのに。


「よーし!」


仁さんが、ぱんっと手を叩いた。


「それじゃあ、シンさんとECOちゃんの特訓を始めるぞ!」


「「「おおおおお!!!」」」


集まった常連たちが、一斉に声を上げた。


「……よろしくお願いします!!」


俺も勢いよく頭を下げる。


『……よろしくお願いいたします』


ECOも、小さく頭を下げた。


……よし。


どんな厳しい修行でも、やってやるぜ!


そう意気込んでいた、そのとき。


「……ほっほっほ」


福ちゃんが、ゆっくりと口を開いた。


「まずは、わしからじゃな」


「……福ちゃん!」


俺は背筋を伸ばした。


「お願いします!!」


「ほっほっほ。そんなに力まんでもええ」


福ちゃんは、のんびりとお茶をすすった。


「……まず、大切なのはのぅ」


「……はい!」


「待つことじゃ」


「…………」


……ん?


「……待つ?」


「そうじゃ」


福ちゃんは、ゆっくりと頷いた。


「例えば、店に客が来んとき」


「……はい」


「まだか、まだかと入り口ばかり気にしとったら、落ち着かんじゃろ?」


「……まぁ、そうだな」


「じゃが、静かに待っとると、不思議なもんでのぅ」


福ちゃんは、目を閉じた。


「外を歩く人の足音。遠くで開く扉の音。誰かが立ち止まる気配……」


「…………」


「そういうもんが、少しずつ聞こえてくる」


俺は、思わず耳を澄ませた。


店の外から、車の走る音。


遠くを歩く人の足音。


厨房でシュウが何かを片付ける音。


……あ。


本当だ。


いつもは気にも留めてなかったな。


「焦って動くばかりが、能じゃなか」


福ちゃんが、にっこり笑う。


「待つことも、立派な力じゃよ」


「……なるほど!!」


俺は慌ててメモ帳を取り出した。


カリカリカリッ!


「待つこと……忍耐力……っと!」


『…………』


ECOが、俺の手元を見つめている。


『……マスター』


「ん?」


『メモを取るほどの内容でしょうか?』


「なんだと!?」


『それと、待機行動と戦闘能力の向上に、直接的な相関性はあるのでしょうか?』


「…………」


……た、確かに。


俺は福ちゃんを見た。


「……福ちゃん?」


「……ほっほっほ!」


「…………」


福ちゃんは、ただ笑っていた。


「……答えねぇの!?」


「ほっほっほっほ!」


……くそっ。


分かってて笑ってるだろ、このじいさん。


「よぉぉぉし!!」


突然、腹の底に響く声がした。


「次は俺だァァァ!!」


「うおっ!?」


思わず飛び上がる。


声の主は、マサさん。


この店でも一、二を争う大声の持ち主だ。


「シン!!」


「は、はい!!」


「戦いに必要なもんは何だと思う!?」


「……えっと、技術?」


「違ぁぁぁう!!」


「ひぃっ!?」


マサさんが、大きく息を吸い込んだ。


そして――


「ハァァァァッ!! オラァァァァァ!!」


「うおおおお!?」


畳の間に、凄まじい雄叫びが響いた。


徳利が、かたかたと揺れる。


「……ど、どうだ!」


マサさんが胸を張る。


「声だ!! 声がデケぇやつが勝つ!!」


「……お、おお」


俺は、思わず頷いた。


「なんか、すげぇ説得力あるな……!」


『……ありません』


「……え?」


ECOが、淡々と告げる。


『音量、約77デシベル。戦闘能力への有益な効果は確認できません』


「なぁにぃ!?」


マサさんが、ECOを指さした。


「違うんだよ、ECOちゃん!」


『……何がでしょうか?』


「大声を出せば、気合いが入る!!」


『……はい』


「気合いが入れば、力が湧く!!」


『……はい』


「そして、必殺技は叫んだ方がかっこいい!!」


「……おおおお!!」


俺は、思わず身を乗り出した。


「それだァァァ!!」


『……マスター?』


「そうだよな! 必殺技は叫ばねぇとな!!」


『……なぜですか?』


「かっこいいからだよ!!」


『……単純に嫌です』


「えぇぇぇぇ!?」


『さらに、技名を発声することに戦術的な利点は確認できません』


「……夢がねぇなぁ」


『現実的な見解です』


「……叫ぼうぜ!」


『お断りします』


……くそぉ。


絶対かっこいいと思うんだけどなぁ。


「もぉ〜♡」


みっちゃんが、両手を広げた。


「男の人って、すぐ力とか気合いとか言うんだからぁ♡」


「……ん?」


「大切なのは、もっと別のことよ♡」


みっちゃんは、ぱちんとウインクした。


「愛よ、愛♡」


「…………」


……出た。


「すべてを受け入れて、すべてを愛するの♡」


「……お、おう」


「そうすれば、相手のことが自然と分かるようになるわ♡」


「……なるほど?」


「相手が何を考えてるのか、何をしてほしいのか……♡」


みっちゃんが、うっとりと頬に手を当てた。


「愛があれば、全部分かっちゃうのよぉ♡」


『……非科学的です』


ECOが、即答した。


「……あら?」


『愛情と相手の行動予測を直接結びつける根拠が不明です』


「もぉ〜♡ ECOちゃんったら、冷たいんだからぁ♡」


『事実を述べたまでです』


「でも、そのツンツンしたところも可愛いわぁ♡」


みっちゃんが、ECOを抱きしめようとする。


『……接近を確認』


ECOが、すっと後ろへ下がった。


「やぁん♡ 逃げないでぇ♡」


『回避行動です』


「……あれ?」


俺は、思わず呟いた。


「今の動き、神楽でも使えんじゃね?」


『……マスター』


「ん?」


『この方から逃げることと、神楽での回避行動を同一視しないでください』


「……すまん」


「シンちゃぁん♡ あとで覚えてなさぁい♡」


「なんで俺!?」


「がっはっはっは!!」


今度は、カズさんが豪快に笑い出した。


「お前ら、まだまだ甘いな!」


「……ん?」


「いいか、シン!」


カズさんが、どんっと胸を叩いた。


「戦いってのは、経験だ!!」


「……経験!」


俺は、再びメモ帳を構えた。


「若い頃の俺はなぁ……」


カズさんが、遠い目をした。


「たった一人で、百人もの相手に囲まれたことがある!」


「……ひゃ、百人!?」


「そうだ!!」


「すっげぇぇぇ!!」


俺は、思わず身を乗り出した。


「それで!? どうしたんだ!?」


カズさんが、にやりと笑う。


「……逃げた!」


「…………」


……え?


「……逃げた?」


「おう!! 全力でな!!」


「「逃げたんかい!!」」


俺とマサさんの声が重なった。


「がっはっはっは!!」


カズさんは、腹を抱えて笑っている。


「いやぁ、あのときは死ぬかと思ったぜ!」


『……合理的な判断です』


「……え?」


ECOが、静かに頷いた。


『百人を相手にした場合、交戦を避ける判断は妥当です』


「……おお!」


カズさんが、嬉しそうにECOを指さした。


「ほら見ろ! ECOちゃんは分かってるじゃねぇか!」


「……いや、そういう話だったのか!?」


『少なくとも、生存を優先する判断としては正しいかと』


「…………」


……なんか。


この話だけ、妙に納得できちまったな。


「よし! 次は俺だ!」


資さんが、腕を組んで立ち上がった。


「シンさん!」


「……はい!」


「人生ってのはな……」


資さんは、ゆっくりと頷いた。


「うどんと同じなんだよ」


「…………」


……うどん?


「細く、長く!」


「……はい」


「しっかりこねて!」


「……はい?」


「相手を思って作れば、必ず美味くなる!!」


「…………」


……ん?


「つまり!」


資さんが、びしっと指を立てた。


「大切なのは、相手を思う気持ちだ!!」


「……お?お?お?」


……なんか。


いいこと言ってる気はする。


……気はするんだけど。


「……資さん」


「ん?」


「それ、神楽と関係ある?」


「…………」


資さんは、にっこり笑った。


「うどんは美味いぞ!」


「答えになってねぇぇぇ!!」


「分かるわぁ〜♡」


みっちゃんが、うっとりと頷く。


「料理って、愛情を込めれば込めるほど美味しくなるのよねぇ♡」


「そうそう!」


「うふふ♡」


「がっはっは!」


『……非合理的です』


ECOは、淡々と記録を続けていた。


……おい。


もう修行じゃなくて、料理談義になってんぞ。


「……さて」


そのとき。


仁さんが、ゆっくりと立ち上がった。


手には、一本の竹刀。


「……シンさん」


「……はい!」


俺は、慌てて姿勢を正した。


仁さんは、畳の中央へ歩み出る。


「戦いで大切なのはな……」


すっと、竹刀を構えた。


「集中することだ」


「……集中」


「相手をよく見ろ」


「……はい」


「動きを見ろ。呼吸を見ろ。足の運びを見ろ」


仁さんの声が、静かに響く。


「焦って動けば、見えるもんも見えなくなる」


「…………」


「決して目を逸らすな。慢心するな」


仁さんは、竹刀をゆっくりと持ち上げた。


「……そして」


――ヒュンッ。


「……っ!?」


次の瞬間。


竹刀が、俺の目の前で止まっていた。


「…………」


……え?


いつ、振った?


全然、見えなかったぞ。


「……す、すげぇ」


思わず、背筋が伸びる。


仁さんは、にやりと笑った。


「集中すれば、剣は銃よりも強し……ってな」


「……おおおお!」


俺は、目を輝かせた。


「かっけぇぇぇ!!」


『……少なくとも、集中力の重要性には合理性があります』


「……おっ!」


仁さんが、ECOを見た。


『相手の動作を観察し、適切な判断を行うことは、戦闘において有効です』


「……そうだろ?」


『本日、最も有用な意見と判断します』


「おおおお!!」


俺は、思わず拳を握った。


「さすが仁さん!!」


すると、仁さんが竹刀を肩に担いだ。


「……ただし」


「……ん?」


「考えるのは、あとだ」


仁さんは、にっと笑った。


「まずは、動け」


「……はい!!」


……よっしゃ。


ようやく、まともな修行が始まる!!


そう思った。


……のだが。


こうして。


俺とECOの、居酒屋流特訓が始まった。


福ちゃんの――


じっと待つ修行。


「……まだ動くでないぞ」


「……はい」


「……まだじゃ」


「……はい」


「……まだまだ」


「……いつまで!?」


「ほっほっほ!」


……終わりが見えねぇ。


仁さんの――


集中力を研ぎ澄ます竹刀稽古。


「シンさん! 目を逸らすな!」


「はい!!」


――ヒュンッ!


「うおっ!?」


「逸らしたぞ!」


「怖ぇんだよ!!」


マサさんの――


大声を張り上げる発声訓練。


「腹から声を出せェェェ!!」


「うおおおおお!!」


「まだまだァァァ!!」


「うおおおおおおお!!」


『……騒音レベルが上昇しています』


みっちゃんの――


愛を叫ぶ練習。


「愛してるわぁぁぁ♡」


「愛してるぞォォォ!!」


「もっと心を込めてぇ♡」


「愛してるぞォォォォ!!」


『……何をしているのでしょうか』


カズさんの――


武勇伝作り。


「いいか! 伝説ってのはな!」


「……はい!」


「生き残ったヤツが語るもんだ!」


「……なるほど!」


「だから、まずは逃げろ!」


「……また逃げるの!?」


そして資さんの――


うどん作り。


「シンさん! もっと腰を入れろ!」


「はい!!」


「そうだ! もっとこねろ!」


「うおおおお!!」


『……マスター』


「……ん!?」


『我々は何の特訓をしているのでしょうか』


「……俺にも分かんねぇ!!」


……おかしい。


絶対、おかしい。


でも。


なんだろうな。


妙に楽しいぞ、これ。


そんな中。


「よぉぉぉし!!」


マサさんが、突然ちゃぶ台を叩いた。


――バンッ!!


「うおっ!?」


「最後は、必殺技だ!!」


「……ひ、必殺技!?」


俺は、思わず身を乗り出した。


「おおおお!!」


「全員で必殺技を叫ぶぞ!!」


「「「おおおおお!!!」」」


……なんか。


急に盛り上がってきたな。


「まずはシン!!」


「……え?」


マサさんが、俺を指さした。


「お前からだ!!」


「えぇぇぇ!?」


「迷うな!! 技名は勢いで決めろ!!」


「……い、いきなり!?」


「早くしろ!!」


「……えっと……!」


俺は、拳を握りしめた。


……技名。


技名かぁ。


かっこいいやつ。


なんか、すげぇやつ。


……ええい!


もう、どうにでもなれ!!


「うおおおおお!!」


俺は、拳を突き出した。


「スーパー居酒屋パァァァンチ!!」


「「「おおおおお!!!」」」


「いいぞ、シン!!」


「最高だ!!」


「やるじゃねぇか!!」


……おお!


なんか、褒められた!!


『……総合評価、一点です』


「低っっっ!?」


ECOが、無表情でこちらを見ていた。


『技名と動作に独自性がありません』


「うるせぇ!! こういうのは勢いなんだよ!!」


『……勢いですか』


「そうだ!!」


『……理解できません』


「……くそぉ」


すると。


「次はアタシねぇ♡」


みっちゃんが、すっと立ち上がった。


「……おっ!」


「いくわよぉ♡」


みっちゃんは、両手で大きなハートを作った。


そして――


「ラブリィィィ♡ ハートアタァァァック♡♡」


「「「うおおおお!!!」」」


「……すげぇ!」


俺は、思わず拍手した。


『……技名と動作が一致していません』


「名前は飾りよぉ♡」


みっちゃんが、ぱちんとウインクした。


「大切なのは、愛よ♡」


『……また愛ですか』


「うふふ♡」


続いて。


「よぉし! 次は俺だ!」


資さんが、腕をまくった。


「……おっ!」


「見てろよ、シンさん!」


資さんは、大きく拳を振りかぶる。


「秘伝!! うどんスパイラルゥゥゥ!!」


「「「おおおおお!!!」」」


『……マスターのパンチと酷似しています』


「せからしかァァァ!!」


「ぶはははは!!」


俺は、腹を抱えて笑った。


……いや。


なんだよ、うどんスパイラルって。


「最後は俺だァァァ!!」


マサさんが、立ち上がった。


「……おおっ!」


「耳、塞いどけよ!!」


「……え?」


マサさんが、大きく息を吸い込む。


そして――


「大居酒屋ァァァ!! ソニックブゥゥゥム!!」


「うおおおおお!?」


畳の間が、びりびりと震えた。


徳利が、かたかたと揺れる。


「うるせぇぇぇぇ!!」


「がっはっはっは!!」


「最高だろ!?」


「最高にうるせぇよ!!」


……ったく。


どいつもこいつも。


俺は、思わず笑ってしまった。


そして。


隣に立つECOへ向き直った。


「……なぁ、ECO」


『……はい?』


俺は、にっと笑った。


「どうだ!!」


両手を広げる。


「これが、俺たちの居酒屋流だ!!」


『…………』


ECOは、しばらく黙っていた。


そして。


『……非合理的です』


「……おう」


『戦闘能力の向上につながる根拠も乏しいと判断します』


「……お、おう」


『ですが……』


「……ん?」


ECOは、店内を見渡した。


笑う常連たち。


得意げなマサさん。


楽しそうなみっちゃん。


うどんの話を続ける資さん。


その中心で、笑っている俺。


『……どうにかしようとしてくださっていることは、理解しました』


「…………」


……お?


『……少しだけですが』


「…………」


一瞬の沈黙。


そして――


「「「うおおおおおお!!!」」」


「デレたァァァ!!」


「ECOちゃんがデレたぞォォォ!!」


「やぁぁん♡ 可愛いぃぃ♡」


『……訂正します』


「「「えぇぇぇぇ!?」」」


……あっははは!


最高だな、こいつら。


それからも、特訓は続いた。


……いや。


特訓と呼んでいいのかは、分からねぇけど。


とにかく。


俺たちは、ひたすら動いた。


声を出して。


竹刀を振って。


うどんをこねて。


愛を叫んで。


……そして。


気がつけば――


五時間後。


「…………」


俺は、畳の上に大の字で倒れていた。


「……し、死ぬ……」


汗だく。


全身、筋肉痛。


喉もガラガラだ。


「……もう、動けねぇ……」


『……マスター』


「……ん?」


ECOが、俺を見下ろしていた。


相変わらず、無表情だ。


『一つ、確認してもよろしいでしょうか』


「……おう」


『本日の活動についてですが』


「……ん?」


『これは特訓ではなく、単なる宴会ではありませんか?』


「…………」


……え?


俺は、ゆっくりと顔を上げた。


常連たちを見る。


すると。


「「「そうだよ?」」」


「…………」


……え?


『…………』


ECOも、固まった。


『……はい?』


「……いやいやいや!!」


俺は、慌てて起き上がった。


「お前ら!! 何言ってんだよ!?」


「だって、楽しかっただろ?」


「そりゃそうだけど!!」


「酒も美味かったしな!」


「飲んでたのかよ!?」


「うどんも美味かったぞ!」


「食ってたのかよ!?」


『……では』


ECOが、静かに口を開いた。


『本日の修行には、どのような目的があったのでしょうか?』


「…………」


常連たちが、顔を見合わせる。


そして。


「「「さぁ?」」」


「…………」


……おい。


『……非合理的です』


ECOが、小さく呟いた。


俺は、しばらく天井を見つめていた。


……なんだよ。


結局、ただの宴会かよ。


……でも。


不思議と、嫌な気分じゃなかった。


昨日まで、あんなに悔しかったのに。


今日は、ずっと笑ってたな。


……そういや。


ECOも、みんなの話を最後まで聞いてたっけ。


俺は、ゆっくりと起き上がった。


「……まぁ、いいじゃねぇか」


『……マスター?』


「気にすんな!」


俺は、拳を握りしめた。


「これでいいんだよ!」


『……何がでしょうか?』


「俺たちは、絶対に強くなってる!!」


『……根拠がありません』


「そんなもんなくても、俺が保証する!!」


『……保証人としての信用度は低いですが』


「なんでだよォォォ!!」


すると。


常連たちが、一斉に頷いた。


「「「それはそう」」」


「お前らまでェェェ!!」


畳の間に、大きな笑い声が響いた。


……まったく。


どうしようもねぇ連中だ。


でも。


俺は、こういう連中が大好きだ。


そして。


そんな連中が、俺たちのために集まってくれた。


……それだけで。


なんだか、昨日より少しだけ、前へ進めた気がした。


ECOは、そんな俺をじっと見つめていた。


『…………』


……非合理的。


理解不能。


戦闘能力の向上も、確認できない。


それなのに。


どうして、この人たちは笑っているのだろう。


ECOは、静かに視線を落とした。


……そして。


ほんのわずかに、首を傾げた。


『……不思議な方々ですね』


「……ん?」


俺は、ECOを見た。


「……そうだろ?」


にっと笑う。


「でも、いいヤツらなんだぜ!」


『…………』


ECOは、もう一度みんなを見渡した。


そして。


『……その点については、否定しません』


「…………」


……おっ?


「おい! みんな!!」


「……ん?」


「ECOが、またデレたぞォォォ!!」


「「「うおおおおお!!!」」」


『……訂正します』


「「「えぇぇぇぇぇ!?」」」


居酒屋『深夜の世界』。


正月休みの畳の間には、今日も笑い声が響いていた。


俺たちの修行は、まだ始まったばかりだ。


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