ノンストップガール 後編
◆ショッピングモールの簡易アリーナ
「閉店ギリギリにお邪魔してすみません、押しかけてしまって。――ありがとうございます、古舘さん」
白い蛍光灯の下、モールの簡易アリーナは静まり返っていた。
ハルカは両手を腰に当て、満面の笑み。
「サンキューねMr.古舘!ECOと手合わせ! これが“アメリカン・スタイル”ネ!実戦こそ"リアル"ネ!」
古舘は笑顔でまるで子供のようにワクワクしていた。
「いえいえ、わたくしも一度"第四世代"の御子が気になっておりまして、逆に光栄であります!」
相変わらず、御子に関しては目のない人だ…
ECOは静かに髪を結び直す。
「実戦形式ですね。」
メリーが心配そうに口を開く。
「ハルカ様、今回は模擬戦。勝敗にこだわりすぎませんように。挑戦は誇りですが、慢心は怪我のもとです」
「OKネ!アタシのハートは無敵ネ!」
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◆模擬戦開始
シンは勢い良く叫ぶ。
「【制限解除――《Quick Sync》起動だ!!」
『……マスター。そのようなスキルは、登録されていません。』
「え、ただ突っ込むより、叫んだ方が強そうじゃん!」
『ハァ……とりあえず攻撃に移ります。』
ECOは槍を構える、青白い光が脚部を走る。
その瞬間、ハルカも笑って叫ぶ。
「《American Breaker Mode》起動ネ!」
背中のメリーが呆れたように呟く。
『……ハルカ様、そんなモードは存在しませんわ。回避、と言う事でしょうか?』
メリーは地面を蹴り、バックステップをはじめた。
ECOはメリーに向かい、一直線に突っ込む――!
軽く肩を傾けただけでECOの弾丸のような突進を避けた。
メリーの帽子が宙を舞う。
「Wow!? 速いネ!?」
『速いだけではありません。的確に狙ってきてます。』
ハルカは回転して、リボルバーを抜く。
「ならば回るネ! 《Spin☆Shot》!!」
『ハルカ様、どのようにですか?』
「とりあえず撃つネッ?!」
『了解しました。』
ECOは表情ひとつ変えず、片腕のシールドに変換し、全弾を弾く。
反撃――踏み込みからの一突き。
『キャッ!!』
ドンッ!!
メリーの身体が宙を舞い、軽やかに三回転してドサリ。
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「メリーッ!?」
ハルカが慌てて駆け寄る。
ECOは冷静に腕を下ろし、息ひとつ乱していない。
『戦闘終了。……お疲れさまでした』
「え、終わった!? いや、一瞬すぎない!?」
興奮した古舘さんは早口で解説をしてくれた。
「はい、そのようですね! “第四世代”とは性能が高い反面、命令に忠実すぎる設計なんです――だから細かな指示が必要! まさに玄人向けの機体! 現在扱える人がほとんど居ないんですよ! あぁ……コレほどまでに忠実な機体だったとは……感激です!」
「……あぁ…はい?」
半分ほど聞き取れなかった。
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ハルカは、キラキラした目でECOを眺めた。
「すごいネ……今の動き、ぜんぶ見えなかったネ!」
「いえ、あなた達の動きは素直すぎます。」
「う~ん、どうすれば良いネ?」
「経験を積み、動きを覚える事です。性能はメリーさんの方が上みたいです。最初の一突き、直撃したと思いましたが、交わされてしまいました。いつか私達は負けてしまうでしょう。」
「……わかったネ! アタシ達、シンの店に弟子入りするネ!!」
「……は?弟子?いや、バイトは雇ってないから、そんな余裕無いから!!」
「ノープロブレム!アタシ、止まれない女ネ! ノンストップ・ガールだから、進むしかないネ!」
ECOは眉をひそめ、メリーに助けを求めるような目を向けた。
メリーは苦笑して首を横に振る。
「ハルカ様がこう言い出したら、誰も止められませんの……」
メリーは小さく肩をすくめ、優雅にため息をついた。
「……うわぁ、めんどくせぇ新キャラ来たなぁ」
ハルカはECOの両手をがっちり握り、満面の笑顔。
「だからお願いネ! 一緒に修行してほしいネ! ECOとなら、アタシきっと最強になれるネ!!」
ECOはしばらく考え、静かに言葉を返した。
「……あなたの“勢い”と、合理的でない部分。
それは、私のマスターとよく似ています。
ですが――その“非合理さ”が、いつか何かを開花させるかもしれません。」
「やったネぇぇぇっ!!!」
ハルカは飛び上がって喜び、メリーはそっとため息をついた。
シンは頭を掻きながら、ぽつり。
「嘘だろ……ECO、お前、弟子を持つタイプじゃねぇと思ってたけどな」
ECOは静かに答えた。
「弟子というより……“ノンストップ・サンプル”です。」
「……なにその言葉のチョイス!?」
「じゃあ明日から一緒に修行ネ! お昼から、お店に向かうネ!!」
「は? マジで言ってるの?!」
「もちろんネ! “神楽は日常にあり”ネ!」
「……合理的ではありませんが、承諾します。」
「しょうがないですね……シン様、ECO様、不束者ですがよろしくお願いします。」
「嘘だろ!!!!」
シンの叫びが夜に響いた。
その横で、ECOはほんの一瞬だけ――口元を緩めた。




