シュレディンガーの鍋 後編
誰もがお祈りをし、静かに針の動きを見守る。
……この瞬間だけ、世界が止まった気がした。
ルーレットの針は徐々に速度を落とし、焦らすように止まった。。
「決まりました。出汁は……塩、あご出汁」
資さんは思わず空に拳を突き上げる。
「……勝った…これはうどんの神さまがくれたチャンスだ…!」
仁も納得したかのように頷く。
「悪くない、日本酒が合う。」
「あ~ら♡決まりね♡それじゃ一人一品、買い出しよ♡」
「はい。最低限の具材は準備済みです。ネギ、人参、椎茸、豆腐。制限時間は40分です。」
鍋奉行・ECOの指示に従い、全員が食材を買い揃える。
因みに、誰かと被ったら罰ゲームもあるのだ。
---
30分後、各々が戻り、鍋奉行ECOのもとに食材を渡し、カットして鍋へ投入。
最後に戻ったのはシン。袋から食材を取り出す。
「あの……マスター……これは……」
ECOは目を細める。
「いや~一目惚れ!!どうしても食べたくてさぁ」
シンはにっこり笑う。
「非合理的です…が……よろしいのですね?」
ECOは困惑しているが、シンは笑顔で答えた。
「おうよ!」
こうして始まった『第1回深夜の世界の闇鍋』。
鍋が煮える音がテーブルに響き、湯気と共に匂いが広がる。
---
「では、食べる順を決めます。」
ECOがルーレットを回し、順番が決まった。
『仁さん→みっちゃん→資さん→シュウ→シン』
部屋を薄暗くして蓋を開ける。
匂いは悪くない。案外まともな具材も揃っているようだ。
---
仁さんが鍋からお玉ですくう。蓋を閉じ、口へ運ぶ。
「……ん?…これは……うどんか?」
灯りをつけると、テーブルが照らされ、全員の視線が資さんへ集中する。
「うちの店の自慢の麺だ!堪能してくれぃ!!」
仁さんはルール通り感謝を述べ、口に運ぶ。
「悪くない。いや…むしろあご出汁の香ばしさが広がり、美味い……が……コレは…〆だろ。酒が進まねぇ…」
---
次はみっちゃんの番だ。
「いただきます♡………あら?……あらあら??コレは……ごはん??かしら??」
「またしても〆?! 二者連続で〆だと?!」
「……うん、でも美味しいわよ……雑炊 でもこれ…お酒がすすまないわ…」
---
3番手、資さん。
「こうなりゃヤケだ!!」
勢いよく鍋から取り出し口へ。
「こ、こりゃ?!蟹ぃぃぃ?!………美味い!あご出汁と共存、まさに海の恵み!! きっと、うどんにも合うぞ?! 仁さん、うどんを少し分けてくれ!?半分やるから!!」
「そりゃどうも…俺が持ち寄った蟹だ。気に入ってくれて嬉しいよ」
「あら~♡私にも分けて♡せめてカニ雑炊にしたいわ♡」
三人は分け合い、初めて酒も進む。
---
「次はシュウ君よ♡」
恐る恐る口へと運ぶ
「……あれ?普通の魚だ…」
灯りをつけると、シュウの器には、色とりどりの海鮮が。
「あら~♡当たりぽいわねぇ♡良いセンスよ♡誰かしら?」
シンがコッソリ手をあげる。
「意外だなぁ、まともな物を入れるなんて…唐揚げとかかと思ったぜ」
褒められているのになぜか視線を合わせないシン。
シュウは器の中をよく見ると…
「兄、コレは……玉子?にキュウリにイクラ…そしてガリ…まさか……」
「あなた?!まさかの“寿司”を入れたの?! じゃぁ私のはシャリだったの……?」
「てへへへ、少しちがうかなぁ……答えは海鮮丼でした!」
シンは笑う。
「この子ったら……呆れたわ」
「お前…正気か!?」
「せめて刺身にしろ…」
「さすが兄…」
「やはり非合理的ですね。」
罵詈雑言を浴びせられるも、
さて、シンの出番がやってきた。
まだ出てないのはシュウとみっちゃん、 少なくともシュウの食材は安牌だとして…みっちゃんの食材が予想つかない。
つまり1/2でシュウの食材を当たる!!
お玉を入れる、集中しろ…お玉に当たる感触でイメージするんだ
コレだ!!
器には移し箸で掴む、丸く小さい。少しぶよぶよしている。
つみれ?いや、違う。この箸から伝わる感触、少し滑る感覚……もしや!
口に運ぶ。
「アッツ?!……フッフッ…アッツ?!」
溢れる熱々な果肉、サッパリとした甘さ、間違いないミニトマトだ!
「美味い!」
灯りがテーブル照らす。
「あら~♡私が育てたミニトマトね♡」
「へぇ~みっちゃんが育てたんだ!意外と甘くて鍋に合う!!」
「よかった♡さぁさぁ、皆で食べましょう♡ところでシュウ君は?何を持ってきたの?」
「僕は手羽元です。」
「あら~♡酒と合いそうね~♡」
鍋を開け、みんなに均等に振り分け、「「いただきます!」」
「ほぅ、たしかにトマトが出汁に染みて美味いな」
「うん。意外な組み合わせだけど美味しい!!」
「よかった~♡私が朝からお休みのキスまできちんと面倒みた甲斐があったわ♡」
全員の動きが止まる。箸の先の汁がポタリと落ちた。
その一言に、一同は箸を止めた。
「すまん、何言った?」
「朝からお休みのキスまで毎日欠かさずに面倒を見たのよ♡」
一同は青ざめた
つまりこのミニトマトはみっちゃんとの間接キスとゆう事になる。
「ECO奉行!!コレは衛生面的にアウトでは?!」
ECOは「投入前にキチンと洗ったので問題ない」と述べた。
お…御奉行様…
そんな皆を他所に資さんは一人考え込んでいた。
「なぁシンさん。この鍋のアイデアを俺にくれねぇか?いや、売れる気がすんだよ?」
流石プロの商売人である。
後日、資さんは『海鮮トマトうどん』を販売し、テレビ取材をうけるほどに話題となった。




