不合理こそ人生♡
ある昼下がり。
シンが仕込み鍛錬で忙しく、シュウが買い出しに行っている間__。
「……退屈なものですね」
ECOは店の椅子に座り、カウンターをじっと見つめていた。
その隣に現れるのは……どこからともなく舞い降りた蝶のように、いや、乱入してきた…嵐のように。
「ECOちゃぁぁん♡今日は一緒にお出かけしましょ♡」
両手を広げてやってくるのは、もちろんみっちゃんである。
「……そうですね、手伝う事もないようなので」
「よし♡きまりー♡シンちゃんECOちゃんと女子旅に行ってくるわね♡」
「女子…旅……?」
こうして、理不尽にも二人の珍道中が始まった。
◆ショッピングモールにて
「ECOちゃん♡あのワンピース似合うと思うのよ♡」
「合理的ではありません。無駄に布地が多く、戦闘に不向きです。」
「動きやすさとか求めてないの! 可愛さよ、可愛さ!」
試着室から出てきたECOは、フリフリのドレス姿。
店員が「お似合いです~!」と拍手するが、本人は微動だにせず、無表情。
「……布の無駄遣いです。」
「キャー♡最高にクールビューティ♡」
「……褒め言葉でしょうか?脳の構造が理解できません。」
みっちゃんのはしゃぐ姿に店内がざわつく。
◆ゲーセンにて
「ECOちゃん♡クレーンゲームやってみなさいよ♡」
「何のためにですか?購入された方が合理的です。」
「それはナンセンスよ♡コレは娯楽、楽しむ為のお金よ♡」
みっちゃんは100円を投入
「じゃぁ訓練だと思ってみて♡正確な動作を求められるわよ♡」
「わかりました。訓練ですね。」
ガシャン!
ECOの操作は精密そのもの。景品を正確に掴み取り、
「……取得完了」
「わ~♡ECOちゃん♡このぬいぐるみ欲しかったの♡ありがとう♡」
「…当然です」
「あっちの色も取れるかしら♡」
「……了解」
「ECOちゃんは何か欲しいものはないの?」
「特には……いえ、アレを取りましょう。」
店から出るときには、両手いっぱいのぬいぐるみを抱え、通行人に見られまくる二人。
「ママ!あのぬいぐるみ!!欲し____やっぱいらない」
「かわいい……」
「いや、怖い……」と噂される。
「ECOちゃん♡次はUFOキャッチャー全部制覇しましょ♡」
「……この国は平和ですね。」
◆カフェにて
「ECOちゃん♡ケーキ食べよ♡」
「不要です」
「じゃあ私が食べるから♡ECOちゃんは隣で見守って♡」
みっちゃんが苺のショートケーキを頬張る。
その横でECOが冷静に観察を始めた。
「砂糖、乳脂肪、グルテン……これは人体に有害です」
「もう♡ 美味しく食べてる最中に健康の話するのはナンセンスよ」
周囲の客も吹き出す中、ECOは一言。
「……不合理な食事をする時、人間は笑顔を浮かべる。」
ECOは一瞬、カップの中の反射を見つめた。
「……人間は、不思議です。」
「やだぁ♡ECOちゃん今ちょっと哲学だったわよ!?」
◆帰り道
夕陽に照らされながら、大量のぬいぐるみを抱えるECOと、袋いっぱいに買い物したみっちゃん。
すれ違う人々が、振り返っては二度見する。
「……マスターに怒られます」
「大丈夫よ♡“息抜き”って言えば全部チャラ♡」
「合理的ではありません」
「いいの! 不合理こそ人生よ♡人間ってね、不合理に全力で楽しむのよ♡意味はない。けど、生きる楽しみになるのよ♡」
「……よくわかりません。ただ、なんとなくマスターをみてればわかります。」
二人の会話は噛み合わない。
だが、不思議と楽しげに並んで歩いていた。
◆夜、居酒屋「深夜の世界」。
山積みになったぬいぐるみと、フリフリドレスの袋を前に、シンが叫ぶ。
「なんじゃこりゃぁぁぁあッ!?」
「……価値のある1日でした」
「最高に楽しかったわ♡コレお土産♡」
ハート柄のバンダナをプレゼントされた。
ECOも渡す
「コレは、私からです。」
招き猫を渡された。
「非科学的ですが、縁起が良いとされています」
大爆笑する常連たちを背に、ECOとみっちゃんの珍道中はこうして幕を下ろした。




