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レイドボスAIは恋をした ~孤高の最強プレイヤーと、VRMMO生存戦争を駆け抜けた剣姫の物語~  作者: YY
第3章

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エピローグ 兄さん

 侵攻時間が終了してかなりの時間が経ったが、BKOは激しく動揺していた。

 と言うのも、コースケが脱落したことが知れ渡ったからだ。

 ただし、真実とは違う形で。


「あの鳥小僧! CBOの雪夜に脱落させられたですって!? これからが大事だと言うのに、ふざけるんじゃないですわ!」


 洞窟内でヒステリックに叫ぶナーガ。

 彼女の言うように、BKOプレイヤーにはコースケを脱落させたのは、雪夜だと伝えられている。

 しかも、撤退中の彼に背後から奇襲を掛けると言う、卑怯な手を使って。

 そして何を隠そう、この情報をBKOプレイヤーに与えたのは、本当の犯人であるEvol。

 彼はコースケを始末したあとに安全エリアに急ぎ、残っていたBKOプレイヤーに嘘の説明をしたのだ。

 そうして、コースケ脱落の事実はBKOを揺るがせ、ナーガを激怒させている。

 白太は神妙な顔付きで壁に背を預け、ミントは能面のような無表情で項垂れていた。

 そこに、恐る恐ると言った感じの、女性の声が聞こえる。


『ナ、ナーガ様、落ち着いて下さい。 コースケさんの脱落は残念ですが……』

「黙りなさい、郡山! わたくしに、指図するつもりなんですの!?」

『ひ!? そ、そんな、滅相もありません!』

「だったら、余計なことを言うんじゃありません! 貴女は、わたしの言われた通りにだけ動けば良いんです!」

『か、かしこまりました……』


 ウィンドウの中で縮こまる、BKO運営である郡山菊子。

 30歳前後の女性で、若干化粧が濃く、髪型はウェーブヘアー。

 押しに弱い彼女は半ば強引に、プレイヤーとの橋渡し役に任命された。

 だが、文字通り桁違いの課金額を誇るナーガに頭が上がらず、常に機嫌を窺っている。

 苛立ちが頂点にあるナーガは、そんな彼女に更なる罵詈雑言を浴びせていたが、急に静かになった。

 ビクビクしていた郡山だけではなく、白太も微かに反応していたが、ミントは微動だにしない。

 そのようなことに構うことなく、ナーガはウィンドウを眺めたかと思うと、不機嫌そうに吐き捨てる。


「また、Zenithからの提案ですわ。 今、最も勢いがあるのはCBOなので、総攻撃しないか……とのことです」

「ふむ……。 どうするつもりだ?」

「癪ではありますが、乗ってやりますわ、白太。 認めたくないですけど、CBOが危険なのは事実のようですし」

「俺も連中の脅威は、ずっと感じている。 だが、下手に手を出すのは――」

「やりましょう、白太さん」

「ミント……?」

「CBOの雪夜さん……いえ、雪夜は、コースケさんの仇です。 絶対に許せません」


 それまで人形のように固まっていたミントが、瞳に暗い炎を灯して宣言した。

 今の彼女を突き動かしているのは、恩人であるコースケを奪われた憎悪のみ。

 ナーガであっても不気味に思うほどで、白太は心配になっている。

 そもそも白太は、本当にコースケを脱落させたのが雪夜なのか、疑いを持っていた。

 しかし、コースケはSNSなどをしない主義だった為、連絡を取る術もなく、事情を聞くことも出来ない。

 結局、釈然としないまま白太は、現状を受け入れることにする。


「……わかった。 俺も出来る限りのことはしよう」

「ふん、当然ですわ。 わたくしがやると言った以上、従ってもらいますわよ。 それから……郡山」

『は、はい!?』

「貴女にも、動いてもらいますわよ。 異存はありませんね?」

『も、勿論です、ナーガ様! な、何なりとお申し付け下さい!』


 揉み手をしながら媚びへつらう郡山に、ナーガは嘲笑を浮かべる。

 そんな2人を冷めた目で見ていた白太だが、次いでミントに意識を向けた。

 彼女は相変わらず憎しみに囚われているようで、怪しげな雰囲気を醸し出している。

 改めて自分では、コースケの代わりは務まらないと実感した白太は――


「腹を括った方が良いかもしれないな……」


 静かに覚悟を決める。

 こうして異様な雰囲気の中、1人が欠けた四獣王の会議は終わりを告げた。











 暗い室内に4つのモニター。

 椅子に座っているのは、相変わらず代表のみ。

 今日も、GENESISの定例会議が行われていた。

 基本的な確認事項から始まり、次のGENESISクエストの打ち合わせも行う。

 続いて話題は、直近の情勢へと移って行った。


『この間の侵攻は、かなり大規模でしたね。 4大タイトル全てが関わったのは、初めてではないですか?』

『そうね、四。 意外だったのは、BKOとTHOが手を組んだことね』

『しかし二、状況を考えれば当然の成り行きだとも言えないか?』

『僕も一と同じ考えだよ。 SCOとCBOが手を組んだとなれば、いくら4大タイトルでも単独では厳しいかもしれないからね』

『確かに、一と三の言う通りね。 しかもどうやら、CBOはMLOとも同盟を結んだようだし、BKOとTHOは本格的に協力するでしょう』

『二の見解が正しいとすると、次はCBO、SCO、MLOの3タイトル同盟と、BKO、THOの同盟がぶつかるのでしょうか』

『充分にあり得るね、四。 戦力的に言えば、ほぼ互角かなって思うけど……どうなることやら』

『三、相性の問題もあるから、一概には言えんぞ。 どちらにせよ、計画の実行までもう間もなくだ』


 一の声は静かで厳かだったが、そこには隠しようのない熱が込められている。

 そしてそれは、他の幹部たちも同様だった。

 仲間たちの会話を黙って聞いていた代表は、ゆっくりと口を開く。


「ケーキのデータ収集に関してはどうだ、四?」

『協力者から、逐一情報を送ってもらっています。 調べれば調べるほど、人間と何ら遜色ありませんね』

「そうか。 実力面はどうだ?」

『初見の相手であってもジャストガードを決められるほどの、応用力を身に付けています。 また、戦闘AIだからか、GENESISクエストのボスだった人形の、聴覚への攻撃を無視していました』

「なるほど。 こちらでも解析を進めているが、剣姫の性能はやはり凄まじい。 それでいて勝ち筋は残しているのだから、見事な設計だと言える」

『代表、まさかとは思うけれど、目的を忘れていないわよね?』

「愚問だぞ、二。 わたしたちが目指す場所は、何があっても変わらない」

『そうね……ごめんなさい』

「謝る必要はない。 さぁ、最後まで突き進むぞ。 全員、気を引き締め直せ」


 代表の言葉に返事はなかったが、強烈な意志だけは届いている。

 モニターの電源が落ち、室内には代表だけが残された。

 椅子に深く座り直した代表は大きく息を吐き出し、懐から1枚の古びた写真を取り出す。

 それをジッと見つめた代表は、しばししてから囁くように言葉を漏らした。


「兄さん、もうすぐだ」


 その声は平坦で、熱くも冷たくもない。

 しかしながら、凄まじい激情が渦巻いている。

 こうして生存戦争は次なるステージに向かい、終わりへと近付いて行った。

ここまで読んで頂き、誠に有難うございます。

これにて第3章は完結です。

よろしければ、評価や感想を頂けると嬉しいです。

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