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レイドボスAIは恋をした ~孤高の最強プレイヤーと、VRMMO生存戦争を駆け抜けた剣姫の物語~  作者: YY
第3章

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第28話 組まないか

 MLOに攻め込んだBKOプレイヤーとTHOプレイヤーの数は、合計するとかなりの数だった。

 ただし、初めての合同作戦と言うこともあり、連携らしい連携は取れていない。

 もっとも、それぞれが充分に強力ではある。

 コースケの配下である鳥族を中心とする獣人たちは、その圧倒的な身体能力を駆使して、肉弾戦を仕掛けていた。

 それに比してEvol率いるTHOプレイヤーたちは、実弾銃や光線銃などを用いて、射撃攻撃をメインに行っている。

 示し合わせるでもなく、前衛と後衛がはっきりしており、無駄にぶつかり合うことはない。

 対するMLOプレイヤーたちも負けておらず、様々な魔法によって、必死に防衛していた。

 その中でも特に目立っていたのは――


「MLOはやらせない!」

「あたしたちだって!」

「皆! 頑張って!」

「負けないんだから!」


 モエモエを筆頭に置いた、プラーミャ。

 3人の少女がモエモエを守るように展開し、【インフェルノ】で一掃する。

 単純ながらかなり強力な戦法で、BKOプレイヤーもTHOプレイヤーも、関係なく蒸発させていた。

 そんな彼女たちに力付けられるように、他のMLOプレイヤーも奮起しており、僅かながら侵攻の勢いを上回っている。

 だがそれも、2人のプレイヤーの参戦によって崩れ去った。


「はは、元気な嬢ちゃんたちだな」

「舐めない方が良いよ」


 背中にユニットを装着したEvolと、鳥族の長であるコースケ。

 さほど高度は高くないが、空からやって来た2人の強力プレイヤーを前に、プラーミャが緊張した面持ちになる。

 尚、THOは機械人のタイトルではあるが、飛行性能は基本的に持っていない。

 Evolが可能としているのは、彼の持つ『God Weapon』、『Fluegel』の能力だ。

 そこから付けられた彼の異名は、The Sky。

 THOで唯一、上空からの攻撃を可能としているプレイヤーと言う意味。

 一方のコースケは鳥族の特性として飛べるので、奇しくも両者は似たスタイルと言える。

 その反面で火力自体はさほど高くないので、実力だけで言えばプラーミャなら渡り合えたかもしれないが、大きな誤算があった。

 Evolとコースケが危険だと判断したモエモエは、速攻で終わらせるべく、上空に向かって【インフェルノ】を放つ。

 空が燃えるかのように、獄炎が2人を飲み込んだかに思われたが――


「な!?」

『ごめんね、僕にそれは効かないよ』


 驚愕するモエモエと、絶句する仲間たち。

 炎の中から現れたのは、巨大な炎鳥。

 コースケの超獣化、【フェニックス】。

 その特性の1つは、炎属性の無効化。

 彼がモエモエの残るMLO侵攻を買って出た、理由でもあった。

 【インフェルノ】が無効化されたことで、漠然とその事実を悟ったモエモエは、唇を噛み締める。

 いくら彼女が強力なプレイヤーとは言え、極めているのは炎属性のみ。

 コースケはまさに、天敵のような存在だ。

 MLO最高戦力である、モエモエの古代魔法が通用しないことに、他のMLOプレイヤーは衝撃を受けて、動きが鈍っている。

 そしてEvolは、そのような隙を逃すほど優しくない。


「流石だぜ、不死王」


 楽しそうな声を発したEvolが高速で宙を駆けながら、両手に握った銃を乱れ撃った。

 幾条ものレーザーがMLOプレイヤーを捉え、次々と脱落させて行く。

 それを見たモエモエの仲間たちはハッとして、なんとか妨害するべく魔法を繰り出した。

 炎の矢、炎の槍、局地的な爆発。

 どれも文句の付けようもないほど、見事だったが――


「遅い遅い、当たらねぇよ」


 Evolには掠りもしない。

 公平性を保つ為か、高度が出せない代わりに、『Fluegel』の機動力は凄まじかった。

 それでも少女たちが諦めることはなく、必死に魔法を繰り出し続け、それはモエモエも同様。

 再び【インフェルノ】を放った彼女は、せめてEvolだけでも落とそうと考えたが、その思惑は筒抜けだった。


『そうは行かないよ』

「く!」


 Evolとモエモエの間に飛び込んだコースケが、炎鳥と化した体で獄炎を受け止める。

 更に彼は翼をはためかせ、地上に炎の雨を降らせた。

 モエモエとプラーミャは回避に成功したが、多数のMLOプレイヤーが燃え尽きる。

 このままでは万事休すだと思ったモエモエの顔に、色濃い焦りが浮かんだ。

 そこに付け込んだEvolは、コースケの陰から身を乗り出して、モエモエを狙い撃つ。

 反応が遅れたモエモエの腕にレーザーが被弾し、HPゲージを削られた上に体勢を崩された。

 勝負どころだと考えたEvolは左右の銃を連射して、モエモエを本気で仕留めに掛かる。

 回避が間に合わないと察したモエモエは、悔しそうに歯噛みし、仲間たちは悲痛な叫びを上げそうになり――


「間に合ったか」


 黒い斬閃が、レーザーをことごとく打ち払った。

 何が起こったのかわからないモエモエはポカンとしており、それはEvolやコースケを含めた他のプレイヤーも同様。

 そんな中で1人冷静だった乱入者――雪夜は、コースケに向かって【天衝】を放った。


『う!』


 飛翔した斬撃を受けたコースケのHPゲージが、ゴッソリと削られる。

 『【葬衣】影桜』の進化能力は未だ有効で、今の雪夜の火力は通常時とは比べ物にならない。

 Evolも声に出来ないほど驚いていたが、雪夜は手を緩めなかった。

 一直線にコースケに向かって跳躍し、すれ違い様に【閃裂】で斬り裂く。

 それによってコースケのHPゲージがゼロになり、脱落するかに思われたが、【フェニックス】の名は伊達じゃない。


『まだ……終われないんだ!』


 炎の体が弾け飛び、至近距離にいた雪夜を飲み込む。

 地上にいたモエモエは息を飲んだが、すぐそこに着地した彼は平然としていた。

 ただし、HPゲージは半分を切っている。

 そしてコースケは復活しており、HPゲージも完全回復していた。

 まさか文字通り不死なのかと疑ったモエモエやプラーミャ、他のMLOプレイヤーは戦慄していたが、雪夜は淡々と言い放つ。


「これで、【フェニックス】の復活能力は使わせた。 拠点に戻らない限り、次はないはず」

『……驚いたね。 どうしてキミが、それを知っているんだい?』

「俺も昔、BKOをプレイしていた時期がある。 それだけだ。 ついでに言うなら、THOも経験があるぞ。 『Fluegel』の連続稼働時間も、そろそろ限界じゃないか?」

「マジかよ……。 お前が強いのは知ってたが、知識面でもバケモンだったとはな」


 あっさりと自分たちの弱点を指摘されたコースケとEvolは、まさしく化物を見るような目で雪夜を見つめた。

 モエモエたちも似たような気持ちだったが、何も言うことが出来ない。

 しかし、雪夜は知ったことかとばかりに、言葉の刃で斬り掛かる。


「それで、どうする? ここで退くなら、俺は手を出さない。 だが、続けると言うなら、2人とも覚悟してもらう」


 鋭い声を発した雪夜は、その言葉が嘘ではないと示すかのように、回復薬を口にした。

 本気で彼はやる気であり、いつでも抜刀出来るように構える。

 それに呼応するかのように、プラーミャやMLOプレイヤーたちも戦意を燃え上がらせ、Evolとコースケを始めとした侵攻軍と相対した。

 その場に沈黙が落ち、BKOプレイヤーとTHOプレイヤーたちは、どう動けば良いか迷っているらしい。

 しばしそのまま時間が経ったが、盛大に嘆息したEvolが告げる。


「俺たちは帰る。 不死王はどうする?」

『……僕らも、ここまでかな。 皆、退こう』


 敢えて雪夜やモエモエたちに聞こえるように言ったEvolとコースケが、ゆっくりと後退して行く。

 それに続く形で他のプレイヤーたちも撤退し、なんとかMLOは生き残った。

 あちらこちらから安堵の息が聞こえ、やるべきことを終えたと思った雪夜は、自らも戻ろうとしたが――


「あ、あの」


 意を決したかのようなモエモエに声を掛けられて、咄嗟に刀に手を掛ける。

 雪夜の反応に目を丸くしたモエモエは、慌てて両手を体の前で振って、口を開いた。


「ち、違います! 戦う気はありません! ただ、聞きたいことがあるだけです!」

「……何だ?」

「その……ダリアさんはどうしたんですか?」


 雪夜がここにいる時点で、モエモエも答えはわかっていた。

 周囲で様子を窺っているMLOプレイヤーも同様で、緊張した面持ちをしている。

 一瞬誤魔化そうかと思った雪夜だが、最終的には正直に話すことにした。


「落とした」

「……! そうですか……」

「どうする? 仇を取りたいか?」

「……いえ、今日はやめておきます。 いろいろあり過ぎて、疲れちゃいました」

「そうか」


 無理もないと思った雪夜は、完全には警戒を解かないまま、あからさまな戦闘態勢はやめる。

 そして、今度こそCBOに帰ろうとしたが、モエモエにはまだ疑問があるようだ。


「雪夜さん……と呼んで良いですか?」

「あぁ、好きに呼んでくれ」

「あ、有難うございます。 雪夜さんは、どうしてわたしたちを助けてくれたんですか? ダリアさんと敵対したってことは、完全にMLOに味方してる訳じゃないですよね?」

「当然だろう。 最終的には1つのタイトルしか残れない以上、どこまで行っても競争相手なことに違いはない」

「だったら……」

「だが、このタイミングでMLOに脱落されると、都合が悪かった。 BKOとTHOが組んでいるなら、尚のことな。 もう暫くは、今のバランスを保ちたい」

「……つまり、あたしたちを利用しようって言うんですか?」

「どう解釈するかは、任せる。 ただ……」


 そこで言葉を切った雪夜は、他のプラーミャたちを見やる。

 心配そうに彼とモエモエを見ており、最悪の場合は助けに入ろうとしていた。

 そのことを察した雪夜はモエモエに視線を戻し、少し言い難そうに声を落とす。


「仲間と離れるのが辛いのは、俺も知っている」

「え……?」

「いずれは決着を付けるが、今はまだその子たちとの時間を大事にしろ」

「……意外と甘いんですね」

「放っておいてくれ」


 苦笑を漏らしたモエモエから、視線を逸らす雪夜。

 そんな彼の仕草に、モエモエはより一層苦笑を深める。

 すると――


「モエモエ!」

「雪夜くん!」


 ネーヴェとAliceが駆け寄って来た。

 ネーヴェはともかくAliceは意外だった雪夜は、微かに目を丸くしたが、彼が何かと言う前にモエモエが口を開く。


「ネーヴェさん! 無事だったんですね!」

「それはこちらのセリフよ。 いったい、何があったの?」


 雪夜に鋭い目を向けながら、モエモエに尋ねるネーヴェ。

 彼女が雪夜に敵意を持っていることに気付いたモエモエは、焦って事の成り行きを説明した。

 話を聞くにつれてネーヴェの刺々しさは収まって行ったが、非常に複雑そうな顔で言葉を紡ぐ。


「そう、ダリアが脱落したのね……」

「はい……。 ノイさんとエリスさんもってことは、ペンタゴンはあたしたちだけになりました……」

「今回助かっただけでも儲けものかもしれないけれど、今後は厳しい戦いを強いられそうね……」

「そうですね……。 もう1度、攻められたら持ち堪えられるかどうか……」


 深刻そうな顔で話し込むネーヴェとモエモエを、Aliceは不安そうに見つめていた。

 彼女とてMLOはいつか倒すべき相手だとわかっているものの、どうしても情を捨て切れない。

 だからと言う訳ではないが、雪夜は考えていた案を提示する。


「ネーヴェ、モエモエ、良かったら俺たちと組まないか?」

「何ですって……?」

「せ、雪夜さん、本気なの?」

「まだ確定とは言えない。 他のCBOプレイヤーの意見を聞く必要があるし、何よりSCO側がどう答えるかわからないからな。 だが、状況を考えれば悪くない話だろう」

「あたしは賛成だよ、雪夜くん! ネーヴェちゃん、モエモエちゃん、一緒に頑張ろうよ!」

「……モエモエ、どう思う?」

「あたしは……受けたいです。 今のMLOに余裕はないですし、雪夜さんは信用出来ますから」

「なるほどね。 確認しておくけれど、貴方たちと組んだ場合、有事の際は可能な範囲で助け合うって認識で良いのかしら?」

「その通りだ、ネーヴェ。 あくまでも優先するのは自分たちのタイトルで、余裕があれば手を貸す形だな。 今回の俺たちのように」

「……良いわ。 こちらも話し合いをする必要があるから即答は出来ないけれど、前向きに考えてあげる」

「わ~い! やった~! また仲間が増えたね! 皆、よろしく!」

「ま、まだ決定ではないと言っているでしょう」


 気の早いAliceが周囲のMLOプレイヤーに手を振り、ネーヴェが恥ずかしそうに釘を刺す。

 雪夜とモエモエは、苦笑を交換していた。

 その後、雪夜たちは互いのSNSアカウントを教え合い、連絡手段を確保してから別れる。

 こうしてCBOとSCOに加えて、MLOも同盟に参加が内定していた一方で――事件が起きようとしていた。

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