第4話 正体
THOやBKOで動きがあったのに比して、CBOとSCO、MLOは平穏だった。
と言うのも、各タイトルが同盟を結んだことを、雪夜たちがSNSを通じて発信したからだ。
この3タイトルに挑むのはリスクが高いことが、抑止力になっている。
その間に、大きな被害が出たMLOは立て直しを図り、それはSCOも同様。
一方で、人口が圧倒的に少ないCBOは、1人1人の戦力を高めようとしていた。
その成果の1つとして、ケーキの『プリンセス・フルール』が『【華剣】プリンセス・フルール』に進化したことが挙げられる。
これにより、EGOISTSは全員がLR装備を持つことになった。
そうして現状を振り返りながら、雪夜は朱里とともに朝食を摂っている。
今日は2人で協力して作ったもので、朱里は非常に楽しそうにしていた。
出来栄えに関しては、雪夜が1人で作った方が美味しかっただろうが、互いに充分満足出来るクオリティ。
まだ料理を始めて間もないとは思えないほど、朱里は腕を上げている。
雪夜はそのことを認めつつ、敢えて過度には褒めないようにしていた。
負けん気の強い朱里は、その方が伸びると考えたからだ。
もっとも、厳しいだけでもない。
「この卵焼きは、かなり美味しい」
「ホント!?」
「あぁ。焼き加減も味付けも、見事だ。見た目も綺麗だしな」
「やったー!セツ兄はお世辞を言わないから、自信になるよ!」
「自信を持つのは良いが、驕るなよ?味噌汁や他の料理は、まだ改善の余地がある」
「むー。わかってるよ。でも、絶対美味しいって言わせてやるんだから!」
胸の前で拳を握って、やる気を滾らせる朱里。
そんな幼馴染に苦笑しつつ、雪夜は食事を進める。
ゲームとは言え戦争中とは思えないほど、和やかな時間。
それは彼らが、オンとオフの切り替えが出来ている証左。
とは言え、生存戦争が完全に思考外になることはない。
ほとんどBGM代わりにしていたテレビから、まさにその話題が流れて来た。
『続いてのコーナーです。ゲーム界隈を騒がせている、生存戦争。先日との変化をお届けします。まず、4大タイトルの1つである、THOが――』
ニュースキャスターが、昨日の侵攻によって脱落したタイトルの情報などを、天気予報や為替相場のように解説する。
雪夜と朱里は既に知っていることばかりだが、真剣な表情で聞いていた。
これは朝の習慣に近いが、改めて2人は残りのタイトルが少ないことを実感している。
もっと言えば、生き残っているだけで、戦う力を有しているところは更に少ない。
いよいよ終わりが近付いており、それは雪夜と朱里が対峙する未来が、現実味を帯びて来たことも意味していた。
それでも2人は、いつも通りを貫いている。
内心で覚悟を固めながら、テレビを眺めていた雪夜だが、今日も求めている情報はなかった。
「未だに謎のまま、か……」
「うん?何の話?」
「GENESISの正体だ。これだけ大規模な事件を起こしておいて、全く目的がないとは考え難い。何を狙っているのか、ずっと気になっている」
「言われてみれば……。生き残るのに必死だったけど、確かに良くわかんないね」
「残ったタイトルに援助するような話もあったが、詳細は不明だしな。この戦いの先に何が待っているのか、正直想像出来ない」
「うーん。でも、考えても仕方なくない?あたしたちに出来るのは、頑張って戦い抜くことだよ。あとのことは、残ってから考えようよ」
「……それもそうだな」
難しい顔で考え込んでいた雪夜だが、あっけらかんとした朱里の意見を聞いて、考えを改めた。
GENESISの思惑がどうであれ、自分たちに出来るのは戦うこと。
頭を切り替えた雪夜は、席を立ちながら告げる。
「そろそろ行こう。宗隆たちと、生徒会の話もしておきたい」
「はーい。あんなに嫌がってたのに、急にやる気になったよね」
「引き受けたからには、全力を尽くす。それだけだ」
「あはは、相変わらず真面目だねー。でも、それでこそセツ兄って感じ!あたしも、出来る限り頑張るね!」
「実際に代替わりするのは、まだ先だけどな。頼りにしている」
そう言って雪夜は微笑み、朱里の頭を撫でた。
突然のことに朱里は驚いていたが、すぐに花のような笑みを咲かせる。
テレビの中では、番組が次のコーナーへ移行していた。




