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100年後の君へ
昴は、画面の前で呆然としていた。
星也。
幼くして母を失い、父親は長いあいだ現実から目を逸らしていた。
家庭らしい家庭とは言えなかった。
それでも星也は、真理の遺した論文を読み続けた。
研究を続け、
やがてその分野の第一人者になった。
強い息子だった。
誇らしかった。
真理の叶えられなかった夢を、星也が実現するのだと信じていた。
昴は机の引き出しを開けた。
そこには、一通の封筒がある。
『100年後の君へ』
真理が残した手紙。
星也に、いつか渡そうと思っていたものだった。
――君の生きる100年後の未来は、
エネルギーが潤沢な、平和な世界になっていますか。
――資源が循環して、世界のみんなが手を取り合って生きる、
そんな未来になっていますか。
昴は知っていた。
星也がもう、それを読んでいること。
それでも、世界を許さなかったこと。
昴はゆっくり立ち上がり、屋上へ向かった。
遠くの空が赤く光っている。
またどこかの発電所が爆発したのだろう。
柵に手をかける。
「……ごめん、真理」
俺が、星也から目を逸らしたからだ。
もっと向き合っていれば。
あの狂気に、気づいてやれたかもしれない。
真理の言葉が頭に浮かぶ。
「星也が引き継いでくれたら嬉しいな」
願いは、呪いになった。
昴は柵を越えた。
そして、そのまま空へ身を投げた。




