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会見場の照明は白く強く、
フラッシュが絶え間なく瞬いている。
記者たちの視線が一斉にこちらへ向けられていた。
「責任はどう取るつもりですか」
「安全性の検証はされていたんですか」
「なぜ二つの発電所が同時に爆発したんですか」
質問は重なり、やがて怒号のようになった。
今や日本中の発電所のほとんどに組み込まれているエネルギーチップ。
そのうち二つが、ほぼ同時期に爆発した。
原因は――俺の研究だ。
母の研究を継ぎ、エネルギーチップ開発の第一人者と呼ばれるようになった俺は、
今、この会見の場に立っている。
マイクの前で、俺は静かに口を開いた。
「僕の母親の名前を覚えていますか」
会場がわずかにざわめく。
「真理。
世論が殺した研究者の名前です。」
最初は、怒りだと思っていた。
母が死んで、世論が掌を返して、母の名前が教科書に載って、胸像が建てられた。俺はその胸像を見るたびに、石を投げたくなった。生きているうちに守れなかった人間が、死んでから石膏で固めて何になるんだと思った。
でも研究を続けるうちに、それが怒りじゃないと気づいた。
母の論文を読んだ。何度も読んだ。母が本当にやりたかったのは、復讐でも名誉でもなかった。エネルギーが循環して、資源を奪い合わなくて済む世界を、本気で信じていた。その信念が、技術に変わった。技術が、武器に変わった。武器が、人を殺した。
俺がやろうとしていることは、母の意志とは正反対だ。それは分かっている。
でも世界は、優しい言葉で動かなかった。母がそれを証明した。
父はずっと、母の夢の続きを信じていた。俺も信じていた。でも父は現実から目を逸らしたまま、俺のことを見ていなかった。俺も父のことを見ていなかった。
怒りでも、愛でも、絶望でもない。
俺は続けた。
「エネルギーチップの発電量は、本来こんなものじゃありません」
会場は静まり返っていた。
「発電に使われているのは、生成されたエネルギーのほんの一部です。
残りのエネルギーは、本来なら安全装置によって外部へ逃がされます」
そこで俺は、少しだけ笑った。
「私は、その装置を外しました」
どよめきが起きる。
「逃げ場を失ったエネルギーは、チップの内部に蓄積され続けます。
やがて臨界点に達したとき、耐えきれなくなったチップは爆発する」
会場は凍りついたように静かだった。
「日本中の発電所が、同じ構造です」
一人の記者が震える声で言った。
「つまり……これは事故ではなく」
俺はゆっくり頷いた。
「あえて名前をつけるなら」
一瞬だけ目を伏せる。
「復讐です」
それから一週間。
一つ目の発電所が停止した。
二つ目は爆発した。
三つ目は都市全体を停電させた。
高層ビルの窓が一斉に暗くなり、
いつも光で満ちていた東京の夜が、初めて広い闇に沈んだ。
エネルギーチップは電力網の奥深くに組み込まれている。
取り外そうとすれば、その瞬間に爆発する可能性がある。
誰も手を出せない。
日本中の電力網が、巨大な時限爆弾になった。




