34話 複雑
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ついこの間1万アクセス達成したと思ったらもう2万アクセス達成しました。ありがとうございます!
書きにくい区間は抜けたのでストックを貯めたいと思います(`・ω・´)v
ぬいぐるみぃ・・・いや、めるとのマネージャーの鏑木よつはさんから簡単な流れの説明を受け。後日、台本をディスコで送ってくれるとの事で今回の会議はお開きとなった。
コンコン───。
「はーい」
ガチャ───。
「どした?」
「今、良い?」
「良いけど?入る?」
「うん」
母親の仕事部屋へとやって来た。
「進捗は?」
「壁紙?」
「あー、うん」
「壁紙はまだ手つかず」
「そうなの?」
「今、ちょうど仕事が立て込んでるからねー」
「そうなんだ?」
「それなのに、配信で直ぐ出来るみたいな事言ってくれるからさー」
「ごめんって」
「で?」
「ん?」
「本題は?」
「あー、めるとの事はいつから知ってたの?」
「最初から」
「え?」
「まぁ、最初の最初は知らないけど」
「うん?」
「ぬいぐるみぃからは知ってる」
「めるとが言ったの?」
「オーディションに受かってから言われた」
「あー・・・未成年だから?」
「そそ、契約云々で親の承諾が要ったからねー」
「なるほどね・・・」
「ホントに子供ってのは突拍子も無い事ばっかりするから驚かされてばっかりだよ」
「僕は親にドッキリかけられっぱなしだけどね・・・」
「ん?お父さんに?」
「お母さんにだよっ!」
「ま、お相子って事だねー」
「お相子・・・」
納得はいかない・・・。
いかないけど・・・この母親には一生勝てない気がするから折れておいた方が得か・・・。
「まぁ・・・そうなのかな・・・?」
「それにしても」
「うん?」
「私の知名度を使ってまで登録者増やしたくないって言ってたのに」
「あー」
「めるとのはよく受けたね。どういう心境の変化?」
「なんだろ・・・まだ、ぬいぐるみぃ=めるとってのが・・・頭では理解してるつもりだけど信じ切れてないって言うか・・・」
「知らないおじさんだからokって事?」
「穿った言い方をするとそうなるのかもしれない」
「男の子は複雑怪奇だねー」
僕と妹はきっとこの母親に振り回され続けるんだろう。
そして、振り回された結果・・・悪い方向に進まないのがまたイラっとする。
この話を貰ってから、知ってはいたけどそこまで詳しい訳じゃなかったのでぬいぐるみぃのアーカイブをチェックしたり情報収集に奔走していた。
「それぬいぐるみぃ?」
「えっ!?」
振り返るとそこには伊達さんが居た。
「うん・・・」
「石神君もVtuber好きだったんだ?」
「うん、まぁ、好きかな」
「ぬいぐるみぃが推し?」
「いや、推しでは無いかな・・・」
「そうなの?学校で見るくらいなのに?」
そう。時間が無くて休み時間にもアーカイブを観たりしていたけど失敗だった。
「伊達さんの推しって誰なの?」
「え!私?」
「うん。前に買ってたじゃん」
「私の推しは春夏冬中くん」
「えっ、マジ!?」
「え?知ってるの!?」
「あー、いや、うん、名前くらいは・・・」
「じゃあ、もしかして配信は見てないの?」
「配信は観てないかな」
アーカイブはチェックするけど、生配信は観た事は無い。当たり前だけど。
「見た方が良いよっ!」
「え、あ、うん・・・」
「最近のだとねっ?腹筋森カーがすっごい良くてねっ!!」
ガラガラ───。
「授業始めるぞー。席に着けー」
テンパっていてチャイムが聞こえていなかったが、気付けば既に先生が教室にいた。
「あ、えっと、また後でっ!」
「え、あ、うん」
まだ続くの・・・?
そう思っていた時がありました。
何故か放課後、伊達さんに連れられてワクドナルドで春夏冬中の熱心な布教を受けている。
そして、今も思う。
まだ続くの・・・?
「ねぇ、石神くん。ちゃんと見てる?」
「え、あ、ごめん。見てる見てる」
傍から見れば高校生カップルが青春してるって感じなのかもしれない。
斯くしてその実態は・・・ある種の宗教勧誘をしている女の子とただただ地獄を味わっている悲惨な僕・・・。
そんな構図だったりする。
「あ、あの、伊達さんっ」
「ん?」
「僕、そろそろバイトが・・・」
「あ、うん・・・そっか・・・」
そして、ずっと聞くべきか悩んでいた事を別れ際にぶっ込んでみた。
「伊達さんっていつもこの・・・春夏冬中の配信観てるんだよね?」
「うん!」
「コメントもしてる?」
「してるよー」
「名前は・・・?」
「DTick。伊達でDT。下の名前が依知子だからickでDTick」
マジか・・・。
まさかのクラスメイトが視聴者だった・・・。
「そ、そうなんだ・・・ディーティックさんね・・・」
「え?」
「え?」
「ディーティーアイシーケーって言ったのに・・・なんでその呼び方知ってるの?」
「え、いや、あの、その・・・配信中に春夏冬中がそう呼んでたからっ!」
「あ、それもそっか」
「う、うん。それじゃ、僕はこれでっ」
「うん、また明日ー」
危ない・・・知れて良かった様な、知りたくなかった様な・・・。
そんな複雑な気持ちで頭の中がグチャグチャだった所為かバイト中の記憶は一切無かった。