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お世話係の憂鬱  作者: バネ屋
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#05 不満、苦悩、謝罪




 小学校に入学してからも、僕たち二人は相変わらずだった。


 学校でも登下校でも、二人だけの時間を過ごした。

 周りもソレが当たり前だと思うようになっていて、僕はソレがストレスに感じる様になってきていた。 



 小学2年生の時だった。

 教室では来週行われる校外学習について、担任の先生から説明を受けていた。


 説明もあらかた終わり、次に班分けに移った時だった。

 担任の何気ない一言に僕の心がかき乱された。


「石黒さんは、()()()()のジンくんと一緒に」


 幼稚園のころから解っていた。

 玲は僕が居ないとダメなこと。

 僕以外の人だと玲が動揺して、泣き出したら結局僕が慰めて落ち着かせることになること。

 玲がパニックになるくらいなら、僕が面倒みるから他の人は手を出さないで欲しいと思っていたし。


 でも、実際に大人の口から”お世話係”と呼ばれ

(僕だってやりたくて玲のお世話をしている訳じゃないんだ。他の友達とも遊んだりしたいんだ。でも玲ママにお願いされてるし、玲のことほったらかしにすると母さんから怒られるし、なのにどうして・・・)

 と負の感情が(あふ)れてきた。




 その日の帰り道、気分は最悪だった。


 玲も何かを察したのか、オドオドしながら右手で僕のシャツを掴み、僕の後ろを歩いていた。


 負の感情にかき乱されていた僕の気配に耐えられなくなったのか、玲が無言でポロポロ泣き出した。


 いつもならハグして落ち着くまで背中をポンポンして慰めるのだけど、この時はハグしなかった。


 玲に冷たくするのは八つ当たりだと思ったけど、いつものようにはハグする気になれなかった。


 これ以上一緒に居ると言葉でも八つ当たりしてしまいそうに思えて、泣く玲をその場に置いて一人歩き出した。



 でも直ぐに限界が来た。

 結局僕は玲の事を見捨てられないのだ。


 数十歩歩いたところで振り返った。


 玲は、まるでこの世の終わりかの様な真っ青な顔、絶望した表情で立ち尽くしていた。


 先ほどまでの負の感情が吹き飛び、今度は罪悪感が溢れだした。


 直ぐに駆け寄り玲を抱きしめ

『ごめん、冷たくしてごめん。帰ろう』と(あやま)った。



 この日、玲は僕から離れようとしなかった。

 玲ママが迎えに来ても首を横に振って帰ろうとしない玲を見て、母さんから今日は玲の家に泊まるように言い渡された。

 お風呂の時間になっても僕から離れようとしないので、仕方無く二人で一緒に入った。

 寝る時も僕に抱き着いて離れようとしなかった。


 そんな二人を見て、玲ママは「ジンくんごめんね」と何度も僕に謝っていた。

 僕は自分が悪かったことなので、何も返事が出来なかった。




 この日以降、”お世話係”と呼ばれても、心を無にして、怒ったりいじけたりすることは無くなった。







毎日2話 7時と17時に更新予定です。

既に完結まで書き終えている話を、修正や加筆をしながら投稿しています。

引き続きよろしくお願いします。

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