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お世話係の憂鬱  作者: バネ屋
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#36 20年後にお迎えに上がります


 昼食のあと、ミサキちゃんを囲んで3人でお喋りを続けた。


 玲は、しきりに渚先生の結婚や旦那さんのことを聞いていた。

 どうやら結婚に憧れを持っているようだ。


 渚先生の旦那さんは、高校時代の同級生らしく、長い交際を経て結婚したとのことだった。

 渚先生も旦那さんもご実家が同じ市内で、結婚と同時に今の家を購入して住み始めたらしい。


 玲が結婚に憧れているのが渚先生にも解ったのか、

「ジンくん、幸せものだなー」とか「ジンくんもがんばらいとねー?」とか言ってきて、正直ウザかった。


 とりあえず、その場のノリに合わせようと、

『僕はミサキちゃんと結婚するので、ご期待には応えられそうもありません』と真面目ぶった顔で切返しておいた。


 先生は「エエエェェ!?」と大げさに驚いてノリに合わせてくれていたけど、玲には冗談が通じなかったみたいでミサキちゃんに向かって何かブツブツ言ってた。




 そんな雑談をしていると、不意に先生が話してくれた。


「それにしても玲ちゃんだけじゃなくて、仁くんも随分変わったんだねぇ」


『え?僕がですか?』


「ええ、仁くんも」


『自分ではあまり自覚出来ていないようですが』


「昔の仁くんって、子供なのに楽しいことなんて何も無いっていうか、子供のクセに人生諦めちゃってるというか、異常に礼儀正しいものだから達観しちゃってるのが際立ってて、ふとした時とか大人よりも大人っぽかったよ」


『はぁ、そうでしたか。確かに今でも自分のことは気難しくてジジ臭いとは自覚しているつもりですが、幼稚園のころからそう見えてましたか』


「ああ、今は違うのよ。どちらかというと今のが子供らしいの。確かに小5の割にはしっかりしてて礼儀正しいけど、でも子供らしいの。しっかりした子供なの。幼稚園のころは子供の姿をした大人に見えちゃってたの」

 って、難しいかったかな?と先生はミサキちゃんをあやしながら話してくれた。



 ふ~む、と考えさせられる話だった。


 普段から自分の思考パターンや思い至った理由などを自己分析することはよくあるが、他人から自分がどう見えているのか、自分はどういう人間だと思われているかというのは、あまり考えたことは無かったように思う。


 中々興味深い話だった。

 流石、渚先生と言わざるを得ない。




 随分長居してしまったので、そろそろお(いとま)をすることにした。


 玲は

「またお手紙書きます。また遊びに来てもいいですか?」と今後も先生との交流を続けるべく、約束を取り付けていた。

 僕からは

『20年後にミサキちゃんをお迎えに上がります』と脅しておいた。

「そういうトコだよ!」と先生は嬉しそうだった。


 先生は

「また遊びにおいで、ミサキも喜ぶからね」と言って僕たちを送り出してくれた。





 帰りのバスでは玲は珍しく饒舌だった。


 ミサキちゃんのこと、次に書く手紙のこと、先生の旦那さんのこと、結婚のこと、次から次へと話題は尽きない様で、バスを降りて歩く帰り道でも楽しそうに話をしてくれた。



 そんな玲に笑顔を向けながら、僕は「次は自分だ」と心のなかで呟いた。







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