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お世話係の憂鬱  作者: バネ屋
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閑話 元保育士の本懐


 郵便受けに届いた封筒にとても懐かしい名前を見た。


 ”石黒 玲”




 保育士を退職して2年程経つが、彼女のことは良く覚えている。


 いつも”奥田 仁”くんという男の子にくっついて、彼以外には誰にも懐かないとても人見知りをする女の子だった。


 なんとか心を開いてもらおうと、怖がられない様に慎重に話しかけたりしてみたが、結局最後まで心を開いてはもらえなかった、 と思っていた。



 しかし、今日届いた手紙を読んでみると、本当はとても思いやりのある心優しい女の子だったことが分かった。


 あの頃、何も出来なかったと後悔の気持ちがあったが、彼女はそんな私へ感謝の気持ちを(つづ)ってくれている。



 そういえば、短い幼稚園勤務だったとは言え、数多くの子供を見てきたが、教え子から手紙を貰ったのは何気(なにげ)に初めてだ。

 幼少期のことなんて、忘れ去られて当たり前なのに、わたしのことを覚えてくれていてこうやって手紙を貰えるのは、とても嬉しく有難いことだと気が付いた。




 久しぶりに会ってみたいと思った。


 今は小学5年生だそうだが、手紙を読む限り、とても素敵な女の子になっているだろうことが想像出来る。


「お友達は作ること出来たかな」

「仁くんとは今も仲良しなのかな」

「先生もおかあさんになったんだよ」


 今の玲ちゃんと色んなお話しをしてみたくなった。


 よし、すぐに返事を書こう。

 玲ちゃんと会って、一杯お喋りしよう。


 そう決意し、あの頃のペコリと頭を下げて恥ずかしそうに挨拶をする石黒玲ちゃんの姿を思い出しながら、筆をとるのだった。






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