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選管長ヤマト

 こんな面白いことを多感な中学生たちがほうっておくわけが無い。昼休みになると、それまで毎日のように流れていただんご3兄弟に代わって生徒の投稿による謎のインド人特集が放送された。


「特定候補への優遇だ。」

 そう叫ぶ連中も現れたが、だんご3兄弟の件を問い詰められるとぐうの音もでなかった。

「明日香令じゃなく明日カレーだもんな。」

 教師も授業中にアスカとか、レイワなど同じような発音が出た時のことを考えると、むやみに選挙違反と認定することはできなかった。


 サイゾウはカズとハブを生徒会室に呼びつけると、怒鳴った。

「何のために、お前たちを立候補させたと思っている。やつらに票を渡さないためだろが。万一のことがあれば、即廃部にしてやるからな。」

 サイゾウの怒りは収まらなかった。

「こうなったら討論会で決着をつけてやる。」


 選管の裁量で選挙中に立候補者同士の討論会を実施することができる。ターバン運動をやめさせるためという名目で教師を取り込んだかれらの圧力に、ヤマトも受けざるをえなかった。

「五十六じいちゃん。おれに勇気を。」

 正義感の強いヤマトは苦悩していた。


 ヤマトは一年の時から選管に所属していた。最初は、まわりからの推薦ではあった。今年は三年、最後の年である。1年のときからずっと不正のうわさはあった。しかし、平の彼には何もできなかった。選管長となったいま、公正な選挙を実現することが彼の悲願となった。

 そんな彼だからこそ、世の中の不正を同年代の目線で語るマリの熱烈なユーザーとなったのだろう。アンケートも生徒のためと思ってマリの提案に乗ったまでである。本人は気づいていないが、団子坂の不正と、エレンの機転のおかげで、結果的にマリの策略に手を貸すことにならずにすんだ。現実主義的なマリとちがって、不正をただすために不正で対抗するということは彼の美学に反していた。ただ、時代は個人の価値観ではなく、AIアポロンが全てにおいて判断した。だから、配信映像の取り直しも、全員平等に行なわれた。配信内容もチェックされ、ヘイトスピーチなどにはペナルティが課された。

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