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21.聖子 石の上にも3年2ヶ月

 テーブルの上にはカレーが2つ並んでいる。

「なんか懐かしいなー」

 兄は私の作ったカレーを懐かしみながら頬張っている。

 小学生の頃からきっと味は変わっていないと思う。

「だねー」

「やっぱり聖子のカレーが一番落ち着くよ」

 兄はカレーと水を交互に口に含くむ。

 私は中々本題を切り出せずにいた。

 他愛のない世間話ばかりだ。

「それで……? 聖子今日は何か言いたいことがあるんだろ?」

 先に話題を振ってくれたのは兄の方だった。

「えーとね……」

 私は言い淀んだ。言わなければいけないのに上手く言葉に出来ない。

「なんか言いにくいことがあるんだろ? 怒ったりしないから言ってみ?」

 兄はそう言うと穏やかな微笑みを浮かべた。

 やはり兄には敵わない。

 昔から兄に隠し事は出来ないのだ。

「実はね……」

 私は兄にヒカリ君の話をした。

 被害者の話から始めてから、彼に身寄りが無いことまで。

 兄は肯きながら私の話を聞いてくれた。

 肯定も否定もしない。

「……という訳なんだよ……。少しの間だけで良いんだ。ヒカリ君預かってほしんだよ」

「話は分かったよ……。俺としては構わないよ……。でもなー……」

 兄としてはヒカリ君を預かることにあまり抵抗はないらしい」

「あーね。親父か……」

「そうなんだよなー……。1週間とかなら親父も何も言わねーと思うんだけどさ」

「そうだよねー……」

 兄の言うことは最もだと思う。

 無期限で身寄りの無い子供を預かるのはさすがにきついと思う。

 もし、私がヒカリ君の面倒を見られれば問題ない。

 残念なことに私には子供1人の面倒を見る余裕なんて無かった。

 経済的にも時間的にも無理だ。

「俺的には預かってもいいよ。でもいつまでもって訳にはいかねーなー……。それに親父を説得するのは難しいと思う……」

「だーよーねー。だろうと思ったよ」

 大体予想通りだ。

 兄は話が分かる人だし親父は頭が堅い。

「とりあえず、親父にはそれとなく聞いてみるよ……。それよか、その子の身内に聞いてみた方が良いと思う」

 身内……。

 私が知る限りヒカリ君の身内は葛原みのりの叔父伯母夫妻とルナちゃんだけだ。

「わかった……。ありがとうね。少しの間だけでも預かって貰えれば助かるからよろしくね!」

 肝心の本題を伝え終わると気持ちが少し楽になった。

 思ったことを言えないというのは本当にしんどい。

「カレーご馳走様! んじゃとりあえず……。もし預かるんなら玩具でも用意しねーとなー」

 兄はご飯皿を片付けらながら呟く。

「ハハハ、もし預かれることになったらよろしくねー」

 後は親父次第か……。

 そんなことを考えながら私は洗い物を始めた。

「なー聖子……。仕方ねーんだけどあんまり面倒ごと背負い込むなよな?」

「そだね……。これからは気をつけるよ」

 兄は伊瀬さんと同じような口調でそう言うと苦笑いを浮かべた。

 面倒事か……。

 でも私はこの性分を変えられそうにない――。

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