おしまい!(おまけの二人)
「うっそだぁ!」
「本当だ」
力いっぱい否定したら、即座に返された。
ベッドサイドで何やらゴソゴソしている直と、着付けが出来ないので着替えをするためゴソゴソしている珠稀はお互いに背を向けている。
成人式の会場から移動して、直のベッドの上で目を覚ますまでの自分とのやり取りを聞いた珠稀はのたうち回りたい気持ちを抑える。
のたうち回ったところで、どうしようもないことぐらい、通常運転に戻った珠稀にはよくわかっていたからだ。
「もう、ビールなんて飲まない!」
まさか、ビールコップ一杯どころか半分で酔った挙げ句、そんな欲望のまま行動していたなんて…ある意味、オトナらしい姿ではある。
ただし、“新成人らしい”とは付くが。
「それは恥ずかしいままか?」
「着替えは別物!」
背後からのからかう口調に、真っ赤になって返す。
ところで、この置いた覚えのない着替えはどうしたのだろうか。
自分の着替えが増えていることに首を傾げながら、珠稀はブラウスのボタンを留めた。
珠稀は直がいうことが本当であれば、満面の笑みで『大好き!』宣言をした後、見事寝落ちしたらしい。
しばらくして、暑いといって振袖を脱ぎ捨ててまた眠り出したのを確認してから、直は珠稀の幼馴染みたちを迎えに行ってくれたらしい。
「それに関しては、本当に申し訳ないです…」
着替えが終わり、素直に頭を下げる。
「いや、今度からは気を付ければいいさ」
直自身だって、酔っ払って寝落ちして、ついでに記憶をなくしたことがあるので、あまり強くはいえない。
直は確認を終えた引き出しを閉じ、苦笑しながら立ち上がる。
「じゃあ、ひとまずはコンビニまで」
立ち上がった直が差し出す手を見て、それから彼の顔を珠稀は見上げる。
「…慣らすため?」
「そう」
頬を染める珠稀は、照れ隠しで本当はどうでもいいことを聞く。
所謂、時間稼ぎのつもりだ。
「ところで、何買いに行くの?」
「ご」
珠稀は悲鳴を上げる。
言葉を遮られる形になった直には、それが『ぶみゃあぁぁっ!?』としか聞こえなかった。
「…はんだって」
「ウソだっ!この後、居酒屋で少しお酒飲んでから、うちで夕飯食べるって話しでしょ!」
悲鳴の切れ間にそう付け加えても、涙目の珠稀はまったく信じはしない。
さっき、背後でゴソゴソした後に舌打ちしてたから。
「まあ、それはいいけど。今度は、ちゃんと腹に何か入れてから酒は飲むんだぞ?」
「わかったよ。…もう、記憶なくすの、イヤだし」
緊張の面持ちで手を伸ばす珠稀と、おすおずと伸ばされる手を急かすことなく待つ直は、それから五分ぐらいしてから宣言通り出掛けるのだった。




