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『最弱魔術師、神の文字を刻む』 ――最弱魔術師。その正体は、千年前の大罪人。  作者: 雨宮ぐみ


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第1話 最弱魔術師


『最弱魔術師、神の文字を刻む』

――最弱魔術師。その正体は、千年前の大罪人。

まえがき


この世界には、炎や水、風などを操る「魔法」が存在する。


しかし、かつて神々が世界に刻んだ、もう一つの特別な魔術があった。


――ルーン魔術。


古代の文字一つ一つに力が宿り、刻まれたルーンは現実そのものを変える。


けれど、ルーン魔術は長い年月の中で失われ、今では伝説となっていた。


そんな世界で、「最弱魔術師」と呼ばれる少年がいた。


彼の名は、アルト・レイン。


魔力はほとんどなく、普通の魔法さえ満足に使えない。


だが、アルトには誰にも見えないものが見えていた。


――神々が残した、古代の文字。


ある日、アルトがその文字に触れた瞬間、眠っていたルーンが光を放つ。


そして少年は知る。


自分の中に眠っていた力が、世界の運命を変えるほどのものだということを。


これは、最弱と呼ばれた少年が、神の文字を刻みながら成長していく物語である。

第1話 最弱魔術師


エルディア大陸の東端。


険しい山々に囲まれた、小さな村があった。


村の名は、リーネ村。


魔法が当たり前に存在するこの世界で、魔力の強さはその人間の価値さえ決めていた。


そして、この村には――誰よりも魔力の弱い少年がいた。


「アルト。また失敗したのか?」


「……うん」


アルト・レインは、地面に描いた魔法陣を見つめていた。


何度試しても、火はつかない。


「最弱魔術師」


誰かが笑う。


「魔法の一つも使えないなんて、本当に才能ないよな」


アルトは何も言い返さなかった。


悔しさを胸に押し込み、村の外へ歩き出す。


向かった先は、村人が誰一人として近づかない森だった。


森の奥には、古い遺跡がある。


――いや。


村人たちは、そこを遺跡とは呼ばなかった。


「死者の宮殿」


そう呼んでいた。


なぜそう呼ばれているのか、知る者はいない。


ただ、昔から一つだけ言い伝えがあった。


「日が沈んでから、あの場所へ行ってはいけない」


理由を尋ねても、老人たちは決まって口を閉ざした。


アルトも怖かった。


それでも、なぜかあの遺跡だけが気になって仕方がなかった。


森へ入る。


一歩。


また一歩。


鳥の声が消える。


風の音も消える。


木々のざわめきすら、いつの間にか聞こえなくなっていた。


「……静かすぎる」


まるで森そのものが、何かを恐れて息を潜めているようだった。


しばらく進むと、木々の隙間から巨大な石造りの建物が見えた。


遺跡だった。


黒ずんだ石壁。


崩れ落ちた柱。


苔に覆われた階段。


入口には扉がない。


それなのに――


中から、冷たい風が吹いてくる。


「……誰か、いるのか?」


返事はない。


アルトが一歩踏み込む。


ギィ……。


どこにも触れていないのに、背後で石が軋んだ。


アルトは振り返った。


入口は、何も変わっていない。


「……気のせいか」


そう呟いた瞬間。


――コツ。


奥から、何かを叩くような音がした。


アルトの背筋が凍る。


――コツ。


また聞こえた。


一定の間隔で。


まるで誰かが、暗闇の奥からこちらへ合図を送っているようだった。


「……帰ろう」


そう思った。


だが、足が動かなかった。


暗闇の奥。


そこにある何かが、アルトを呼んでいる。


そんな気がした。


ゆっくりと奥へ進む。


壁には奇妙な文字が無数に刻まれていた。


どれも見たことのない文字。


けれど――。


一つだけ。


アルトには読める文字があった。


「……これ……」


石壁に刻まれた、一つの紋様。


見つめていると、頭の中に知らない言葉が浮かんだ。


『守護』


その瞬間。


――ドクン。


心臓が大きく跳ねた。


「……っ!」


遺跡の奥で、何かが目を覚ました。


壁の文字が、一つ、また一つと青白く輝いていく。


暗闇の中に浮かび上がる無数の文字。


まるで、何千年もの間眠っていた誰かが、アルトの存在に気づいたかのように。


そして――。


『……見つけた』


声がした。


アルトは息を止めた。


「誰だ……?」


返事はない。


ただ、暗闇の奥から。


ズ……ズ……


何かを引きずる音が近づいてくる。


「……誰かいるのか?」


恐怖で足が震える。


それでも、目を逸らせなかった。


やがて暗闇の中に――


二つの赤い光が浮かび上がった。


「――っ!」


それが何なのか、アルトにはわからない。


ただ一つだけ確かなことがあった。


ここには、自分以外の「何か」がいる。


そして、その何かが呟いた。


『千年……長かった……』


「……千年?」


『ようやく……』


赤い光が、ゆっくりとアルトを見つめる。


『神の文字を読む者が、現れた』


その瞬間。


アルトの目の前で、石壁に刻まれたルーンが一斉に光を放った。


そして――。


遺跡全体が、まるで巨大な生き物のように脈動した。


ドクン。


ドクン。


ドクン。


アルトは知らなかった。


ここがただの古代遺跡ではないことを。


そして、この場所が千年前からずっと――


「誰かが来るのを待っていた」ことを。



あとがき


ここまで『最弱魔術師、神の文字を刻む』を読んでくださり、ありがとうございました。


最弱と呼ばれたアルトが、古代のルーン魔術と出会い、どんな運命を歩んでいくのか。


まだまだ彼の旅は始まったばかりです。


神々が残したルーンには、まだ多くの謎が隠されています。


アルトを待ち受ける新たな仲間、強敵、そして世界を揺るがす大きな秘密――。


物語は、ここからさらに動き始めます。


それでは、また次の物語でお会いしましょう。

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